「交通事故の過失割合はどうやって決まる?」
「納得のいく過失割合になるようにしたい」
「過失割合に納得できないときどう対処すれば良いの?」
交通事故の過失割合は、加害者と被害者の主張や事故の状況などをもとに基準を参考にしながら適正に決定しなければなりません。
より納得のいく形でスムーズに示談を進めるためにも、過失割合の知識を得ておくことが重要です。
今回は交通事故の過失割合について、その詳細や具体的な流れ、トラブルが起きたときの対処法などについて詳しく解説します。
Contents
交通事故の過失割合とは
交通事故では、加害者と被害者の双方においてどれくらいの交通違反があったのか、また不注意の内容などを調べ、事故の責任の重さを判断します。
この責任の重さを示したものが過失割合であり、割合は数値で表されます。
交通事故の責任がすべて加害者にあるのではなく、被害者にも過失がつくことがあり、損害を公平に分担するという役割があります。
過失割合は9対1や7対3などといった数値で表され、この数値は基本の過失割合をもとに事故ごとの要素(修正要素)を加えながら決定します。
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過失割合を決めるのは誰?
過失割合は事故後の処理を行なう警察が決めるものと思われがちですが、実際は事故の当事者同士により決定されるものです。
事故の被害者と加害者の両方が任意保険に加入している際は、加害者と被害者の過失割合が100:0である場合を除き、お互いの保険会社による事故状況の調査や協議から当事者の意向も含めて決定するのが一般的です。
過去の判例を基準にしながら、事故の状態と照らし合わせて過失割合を決めていきます。
加害者と被害者のどちらにも責任がある事故で、当事者の双方または一方が任意保険に加入していないときは、当事者間で話し合いを行なって保険会社と協議を重ねることになります。
交通事故の過失割合に関して被害者自身で挑むには不安を感じるというときは、弁護士に依頼して交渉を任せることも可能です。
自動車保険の中に弁護士費用特約が含まれていれば、弁護士費用に関しても補償を受けることができるため安心です。
当事者間で言い分が違う、話し合いで過失割合を決めるのが難しい場合は、調停や裁判によって決めることになります。
過失割合の基準
過失割合は過去の裁判で認められた基準を参考にしたり、交通事故の状況に応じて目安が把握できるような基準が設けられています。
裁判所の裁判官を中心にまとめられた基準をもとに作成された書籍があり、裁判所や弁護士、保険会社などで参照されています。
自動車対自動車のケースだけでなく、自動車対自転車、自動車対歩行者など、交通事故の種類ごとに過失割合の目安が記載されているのが特徴です。
事故の現場の状況ごとにも目安が設定されているので、事故の状況を踏まえながら照らし合わせていくことで標準的な過失割合を把握することができます。
過失割合と過失相殺
過失割合は交通事故の当事者間や現場の状況などを踏まえて、お互いにどれくらいの責任が生じるかを数値で表したものです。
この過失割合について考えるとき、過失相殺という言葉に注目しておく必要があります。
被害者にも過失があると判断された際、割合分が損害額から控除されることが過失相殺です。
損害を公平に分担するという役割をもっています。
加害者が被害者から損害賠償請求を受けた際に、こちらが全部負担するのはおかしいという主張がされることが多く、この内容が過失相殺にあたります。
過失相殺に関しては民法722条2項にて、以下のように決められています。
「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」
交通事故の状況によっては、被害者にも原因があるケースがあります。
そのようなとき、被害者に生じた損害を加害者にすべて負担させるのは妥当ではないという考え方に基づいて制定されました。
過失割合決定までの流れ
過失割合には決定するまでの流れがあります。
最初に「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」を参考に決定していきます。
当事者間の話し合いで過失割合を決定することができなかったときは裁判になりますが、裁判所でも参考にされるのが上記に記した書籍です。
過失割合決定までは、以下のような流れで進みます。
- 事故態様を確定
- 「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」の中のどの事故類型に該当するか確定
- 修正要素による過失割合の修正
- 過失割合の決定
各項目詳しく、それぞれの状況について確認しておきましょう。
事故態様を確定
過失割合を決めていくとき、最初にどのような事故であったのかを詳しく調べる必要があります。
事故の種類、どのような流れで事故が発生したのかを保険会社と話し合いを進めながら確定していきます。
事故態様をより細かく確認しておくことで、正当な過失割合を決定できるため重要なポイントです。
「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」の中のどの事故類型に該当するか確定
事故態様が確定した次に、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」の中のどの事故類型に該当するのかを調べます。
該当する事故類型が決まると、基本の過失割合が決定します。
修正要素による過失割合の修正
事故類型が決定した後、そのままの過失割合で解決するというわけではありません。
事故は、一つずつ状況や事情が異なります。
細かい事情などを踏まえて、先に算定した基本の過失割合を修正していきます。
過失割合の決定
事故態様や修正要素などに関して保険会社との交渉が進んだら、最終的な過失割合を決定することができます。
裁判になった場合についても上記と同じような流れで過失割合について決めていくことになります。
過失割合の具体例
ここでは過失割合の具体例について、事故の状況ごとにまとめていきます。
一点、過失割合は修正要素がある場合は最終的に割合が変わってくることを念頭に置いておきましょう。
車対車
車同士の交通事故は、「加害者:被害者」で「10対0」や「9対1」などと決定されます。
過失割合ごとに、事故の例を見てみましょう。
「10対0」の事故の場合
- 被害者が信号待ちをしているとき、後ろから加害者が衝突した
- 交差点で青信号で直進していた被害者のところに、赤信号で加害者が進入してきて衝突した
「9対1」の事故の場合
- 交差点で優先道路を直進していた被害者のところに、非優先道路から優先道路に加害者が進入して衝突した
- 被害者が直進しているときに、道路外に出ようと対向車線から曲がってきた加害者が衝突した
車対バイク
交通事故は何も車同士だけではありません。
車対バイクという状況で事故が起きることもあります。
車対バイクの事故では、車同士の事故に比べてバイクよりも車側に過失が多くなりやすいです。
過失割合の具体例をいくつかご紹介します。
「10対0」の事故の場合
基本的に、車同士の事故と同じケースになります。
「9対1」の事故の場合
- 交差点で、赤信号で進入してきた車と黄色信号で進入したバイクが衝突した
- 信号のない交差点で、非優先道路から優先道路に入ってきた車と直進するバイクが衝突した
車対自転車
交通事故は車対自転車で起きることもあります。
軽車両扱いになる自転車ですが、歩行者と同じ扱いになるケースがあるなど車同士の事故に比べて自転車側の過失が少なくなるケースがあるので確認しておきましょう。
「10対0」の事故の場合
- 自転車が直進しているとき、対向車線を走っている車がセンターラインを越えてぶつかってきた
- 交差点で、青信号で横断歩道を進んでいた自転車と、赤信号で進入してきた車が衝突した
「9対1」の事故の場合
- 交差点で、黄色信号で直進していた自転車と赤信号で直進する車が衝突した
- 信号のない交差点で、広い道を進んでいた自転車と狭い道を直進していた車が衝突した
車対歩行者
最後に、車対歩行者の事故のケースにおける過失割合について具体例を見ていきます。
歩行者保護という観点から、車対歩行者の事故は車側に重い過失が認められることが多いです。
「10対0」の事故の場合
- 交差点で青信号で横断歩道を渡っていた歩行者と、赤信号で進入してきた車が衝突した
- 歩道を歩いている歩行者のところに車が突っ込んできた
「9対1」の事故の場合
- 交差点で、黄色信号で横断歩道を渡っている歩行者と赤信号で直進する車が衝突した
- 交差点で、赤信号で直進する車と赤信号で横断歩道を渡り始めて青信号に変わった歩行者に衝突した
被害者の過失割合が10対0の場合に生じる問題
交通事故の過失割合には、10対0という結果が出ることもあります。
10対0と聞くと被害者にとっては過失がないことになるため安心できるイメージがありますが、実はいくつかの問題が生じます。
過失割合が10対0であるとき、どのような問題が生じるのか押さえておきましょう。
自身の保険会社の示談代行サービスが利用できない
過失割合が10対0といったように被害者に過失がないと判断される交通事故は、基本的には自身が加入している任意保険会社の示談交渉サービスを利用することができません。
そのため、被害者自身で加害者が加入している保険会社と直接交渉することになります。
弁護士ではない者が報酬目的で示談交渉をしてはならないという法律が定められているためです。
しかし、被害者自身が示談交渉のプロである保険会社と話し合うのは簡単なことではなく、被害者にとって不利な条件で示談が成立してしまう恐れがあります。
過失割合が10対0である交通事故に関しては、被害者一人で示談交渉に挑むのではなく、弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、被害者にとって有利な過失割合の主張や立証をしてもらうことができます。
過失割合10対0でも保険会社の提示金額が低いことがある
過失割合が10対0となったとき、被害者自身が直接保険会社と示談の交渉をすることになりますが、加害者側の保険会社が低額の損害賠償金を提示してくることがあります。
過失割合が10対0である場合は過失相殺による減額がないため、保険会社は慰謝料をあえて少なく見積もるなどして、損害賠償額を低く設定しようとするのです。
被害者自身で保険会社と示談を行ない損害賠償金の増額を訴えても認められにくいという傾向があります。
過失割合に納得がいかない場合の対処法
交通事故の状況によっては過失割合の結果に納得がいかないと感じることがあります。
ここでは過失割合に納得がいかないとき、どのように対処すれば良いのか解説します。
過失割合に関する証拠を集める
過失割合の交渉では、交通事故の証拠が何よりも重要です。
事故の状況を示す証拠があれば、過失割合について有利に主張していくことができます。
過失割合に関する証拠としては、以下のようなものがあります。
- ドライブレコーダーの映像
- 防犯カメラの映像
- 事故直後に撮影した現場や車両の写真
- 目撃者の証言
- 実況見分調書
ドライブレコーダーに事故前後の状況が録画されていれば、重要な証拠として活用できます。
事故の状況をしっかりと残しておくため、事故後は速やかにDVDなどにデータを移して保存しておきましょう。
また、防犯カメラの映像も事故当時の様子を録画してくれているため証拠になります。
防犯カメラについては警察にしか開示されないことが多いため、事故現場の近くに防犯カメラが設置していることに気が付いたら早めに警察に連絡をして映像を開示してもらうようにしましょう。
その他、事故直後の現場や車の写真を細かく撮影して保存しておくことも大切です。
事故現場に目撃者がいたようであれば、名前と連絡先を尋ねておくと事故の状況について確認することができます。
弁護士に相談する
過失割合の結果に納得がいかないときは、交通事故に詳しい弁護士に相談する方法が最も有効です。
法律の専門家である弁護士が過失割合の判例をもとに適正に判断してくれます。
提示された過失割合が不適切である場合は、証拠を集めたり修正要素を考えるなどして適切な過失割合を主張してもらえます。
過失割合に納得できないときは、自身が加入している保険に弁護士特約のサービスが含まれているかを確認した上で弁護士に相談してみましょう。
どうしても納得できない場合はADR・調停・裁判を検討
過失割合に納得できない、示談交渉が難航しているというときは以下の方法を検討することができます。
ADR
交通事故紛争処理センターなどといったADR機関が仲介役となり、中立的な立場から被害者と加害者の意見調整を行ないます。
ADR登録弁護士による法律相談や和解のあっせんなど、多くのサービスを無料で受けることができます。
中立的な立場という点から、被害者に有利になるように動いてくれるわけではないため注意しましょう。
調停
過失割合について裁判で判断してもらいたいときは、簡易裁判所に調停の申し立てを行なうことが可能です。
調停では調停委員が加害者と被害者の間に入り、それぞれの主張を聞いた上で意見の調整を行ない、解決案を提示してくれます。
当事者が解決案に合意した場合、決着がついたということで調停は終わりになります。
一方、合意に至らなかったときは調停は不成立となり、過失割合について解決できなかったという結果になってしまいます。
裁判
調停で解決できなかったときの最終手段が裁判です。
裁判所が当事者の主張を聞き、証拠などをもとに判決を下します。
当事者の合意がなくても解決が可能なのが裁判ですが、ADRや調停などとは異なり時間と労力がかかるのが難点です。
弁護士に過失割合について相談するメリット
交通事故の過失割合について自身で解決するのが難しいと感じたときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することで無事解決に近づくことができます。
ここでは弁護士に過失割合について相談するメリットをご紹介するので、困ったときは弁護士を頼ることも検討してみてください。
弁護士相談の段階で厳密な過失割合算定をしてもらえる
弁護士に交通事故の過失割合について相談すると、厳密に過失割合算定をしてもらうことができます。
基本の過失割合と修正要素を合わせて算定していくのが過失割合であるなか、実際にはどのような修正要素でどれくらい過失割合を調整できるかは被害者自身で判断するのが難しいです。
そのようなとき、弁護士であれば過去の判例や事故の状況をもとに、適正に過失割合の算定が可能です。
より詳しい過失割合について知ることができ、被害者が保険会社と示談を進めていくときにも参考にできます。
保険会社側に対して効果的な交渉ができる
弁護士に交通事故の過失割合を相談することで、被害者側の過失割合を減らしたり、保険会社が提示する示談金額の増額も期待できます。
示談交渉の時点で弁護士に依頼しておけば被害者の主張が通りやすくなります。
以下のような理由から被害者の状況が有利になるため、過失割合について弁護士の利用を検討しているときは確認してみてください。
- 豊富な専門知識、これまでの示談交渉経験をもとに効果的に交渉を進めてもらえる
- 加害者側の保険会社は裁判へ発展することを恐れて態度が柔らかくなる傾向にある
- 保険会社によっては、弁護士が出てきたら示談金の大幅な増額にも対応すると決めているところがある
刑事記録の取得ができる
刑事記録の取得ができることも交通事故の過失割合を弁護士に相談するメリットといえます。
刑事記録は交通事故の状況が記録された実況見分調書であり、過失割合の判断を行なう際に必要なものです。
事故に関する客観的な事実や目撃者の証言などが記載されており、正当に過失割合を定めるときに重要なものとなります。
しかし、刑事記録は正式裁判にならなかった場合開示されないことが多いです。
事故の過失割合に関して交渉を進めていく保険会社も、すべての交通事故において刑事記録を取得していないとされています。
プライバシーにかかわる記録になるため、交通事故の当事者でないと入手することができないのです。
当事者の場合は検察庁で取得が可能となっていますが、時間と手間がかかります。
そのようなとき、弁護士に依頼して取得してもらうことで過失割合を有利に進めたい場合に参考にすることができます。
過失割合がゼロなら弁護士費用特約で費用は実質無料
過失割合がゼロの場合、被害者自身の保険会社は示談交渉を代理してはくれません。
これでは被害者が不利な状態に陥る可能性が高いですが、そのようなときに利用できるのが弁護士費用特約です。
交通事故の損害賠償請求に関して、委任した弁護士費用や法律相談料などを自身の保険会社が負担してくれる制度になっています。
示談交渉や調停などの手続きを依頼した際の着手金や報酬金などが弁護士費用特約の中に含まれており、そこから補償してもらうことができるのです。
着手金や報酬金などは1事故1名につき最大300万円まで負担してもらえるようになっています。
そのため過失割合がゼロであるときは、実質無料で弁護士に手続きなどを依頼することができるのです。
交通事故の過失割合は適正な結果になるよう弁護士に相談してみよう
交通事故の過失割合は、保険会社から提示される内容に納得がいかないときがあります。
事故の状況によって変わってくる過失割合は、基準をもとに修正要素も加えて最終的に決定されます。
被害者となったとき過失割合に納得ができない場合は、交通事故の過失割合に詳しい弁護士に相談する方法がおすすめです。
専門的な知識と事故の状況を踏まえて、適正な過失割合となるよう動いてくれます。
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