「後遺障害診断書ってどうやって準備をしたら良いの?」
「正しい後遺障害等級の認定を受けるための後遺障害診断書の書き方を知りたい」
交通事故で後遺症が残ったときに知っておきたい後遺障害診断書のもらい方や書き方などについて詳しく解説します。
後遺障害診断書は医師に作成してもらう書類であり、その内容によって後遺障害等級の認定にも大きく関係してくるものです。
書類の入手方法や書き方、ポイントなどを押さえておきたいという人にもおすすめの内容となっています。
自身の後遺症に沿った後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級の認定の際に役立ててみてください。
Contents
後遺障害診断書について
後遺障害診断書とは、どのような診断書なのでしょうか?
なぜ必要なのか、作成するタイミングや費用などについての情報についても以下で確認しておきましょう。
後遺障害診断書とは?
後遺障害診断書とは、病院で治療を続けたけれど完治せず後遺症として残ってしまった症状について書かれた診断書です。
後遺症の部位や症状などについて詳しく記載されます。
自賠責保険における後遺障害等級認定では原則書面審査となっているので、診断書の中に記載がない事項については審査の対象になりません。
このことから、後遺障害診断書に記載される内容は審査においてとても重要なものになるということです。
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後遺障害診断書が作成できるものは医師のみ
後遺障害診断書は、医師法(第19条第2項、第22条)により医師のみが作成できる書類です。
そのため、整骨院の柔道整復師では作成することができません。
後遺症で悩んでいるときは、病院に定期的に通うようにしましょう。
後遺障害診断書が必要な理由
後遺障害診断書は、後遺障害等級の認定審査を受ける際に必要となる書類です。
どの等級に認定されるかによって後遺障害慰謝料や逸失利益の額が変わってくるので、納得のいく等級を受けられるようにするためにも、後遺障害診断書の存在は重要となります。
通常の診断書とは異なるので、後遺症が残ったと診断された段階で医師に相談して作成してもらうことになります。
後遺障害診断書に記載する項目
後遺障害診断書は、決まった書式のものをダウンロードして医師に書いてもらうため、病院によって異なるということはありません。
様々な項目があるため、間違いのないように慎重に記入していくことが大切です。
ここでは、後遺障害診断書にどのような項目があるのか、内容をご紹介します。
記入項目 | 内容 |
---|---|
被害者の基本情報 | 被害者の氏名、住所、生年月日、職業など |
受傷日時 | 交通事故に遭った日時 |
症状固定日 | 症状固定と診断された日 |
病院への入通院期間 | 後遺障害診断書を作成してもらう医師が在籍する病院に入通院した期間 |
傷病名 | 症状固定のときに残っている傷病名 |
既存障害 | 交通事故に遭う前から有していた障害 |
自覚症状 | 被害者が症状固定のときに抱えている症状 |
他覚症状及び検査結果 | 症状固定のときに残っている他覚症状及び各種検査の結果 |
障害内容の今後の見通し | 今後症状が悪化または改善していくかの見通し |
作成のタイミング
後遺障害診断書は、作成のタイミングについても事前に確認しておくことでスムーズに手続きを進めることができます。
先述した通り、医師に症状固定と診断されたときが、後遺障害診断書を作成するタイミングです。
症状固定とは、症状が残っているけれどこれ以上治療を続けても改善が見られない状態のことを指します。
作成のタイミングにはどのような後遺症が残っているかによって違いがありますが、たとえばむち打ちの場合、事故後3~6ヵ月程度治療を受けた後症状固定となるケースが多いです。
後遺障害診断書の作成にかかる費用
後遺障害診断書を作成してもらうためには費用が発生します。
病院によって作成にかかる費用が異なりますが、一般的には5,000円~10,000円程度です。
中には20,000円以上の作成料がかかる病院もあるので、事前によく確認しておきましょう。
後遺障害診断書の作成にかかる費用は、はじめに被害者が支払っておきます。
その後後遺障害等級が認定されたら、示談のときに診断書の作成にかかった費用を相手方に請求できます。
一方、後遺障害等級が認定されなかった場合は相手方に支払ってもらえず、被害者の自己負担となるのです。
後遺障害診断書は、作成するにもそれなりの費用がかかることを念頭に置き、状況によっては被害者自身が全額負担する場合もある点を理解しておきましょう。
後遺障害診断書を作成してもらえないケース
交通事故による後遺症が残った場合でも、中には後遺障害診断書を作成してもらえないケースがあるので確認しておきましょう。
以下のような場合、後遺障害診断書を作成してもらえないことがあります。
1回しか病院に行っていない
交通事故後の治療を整骨院メインで受けており、事故直後の1回しか病院に行っていない場合、医師としては後遺障害診断書を作成することが難しいです。
1回の診察だけではその後の経過がわからないので、後遺障害診断書の作成を断られることがあります。
整骨院メインで治療を受ける場合でも、定期的に病院で診察を受け経過を診てもらっておくと良いでしょう。
転院して間もない
交通事故に遭った後の治療では、転院する場合も出てきます。
一定期間治療を続けてきた後に転院するときは、転院先の医師に後遺障害診断書を作成してもらえないことがあるのです。
転院してきた関係で症状の経過を十分診察できていないという理由から、作成を断られることがあります。
治療の関係で転院した場合は、初診病院での担当医師に後遺障害診断書の作成を依頼するか、初診病院での治療記録を取り寄せて転院先で後遺障害診断書の作成を依頼してみてください。
症状固定に至っていない
後遺障害診断書は、作成するタイミングのところで説明した通り、症状固定となった時点で初めて作成できる書類です。
そのため、医師の判断により症状固定となっていない段階では、後遺障害診断書を作成してもらえない場合が多いです。
医師が症状固定と判断するまで、治療を続ける必要があります。
健康保険で治療を受けている場合
健康保険を使って治療を受けている場合は、自賠責保険会社への診断書は作成できないと言われることがあります。
健康保険を使った治療については自賠責保険会社に提出する後遺障害診断書を作成してはいけないと考えている医師が一定数いることも事実です。
一方、交通事故後の治療において、健康保険を使って通院することが禁止されているわけではありません。
そのため、健康保険を使って治療を受けていても後遺障害診断書を作成してもらうことはできるのです。
医師に指摘された際は、健康保険を使って治療を受けていても診断書を作成してもらえると確認したことを伝え、丁寧にお願いしてみましょう。
後遺障害診断書のもらい方から提出までの流れ
後遺障害診断書は、後遺症が残った後の生活を少しでも安心して送れるよう、ぜひ医師に正しく作成してもらいたいものです。
無事に診断書が完成すれば、後に後遺症に応じた適正な後遺障害等級の認定を受けることができます。
ここでは後遺障害診断書のもらい方から提出するまでの流れについて、順を追って解説します。
症状固定後に書式を入手する
事故後に治療を続けてきて症状固定と診断されたら、後遺障害診断書の作成に取り掛かります。
後遺障害診断書には決まった書式があり、病院によっては書式を用意してある場合もあるでしょう。
多くの場合、自賠責保険会社から取り寄せるか、インターネット上でダウンロードするなどして書式を入手する形になります。
入手する方法別に、以下のポイントも押さえておいてください。
自賠責保険会社から取り寄せる方法
どこの自賠責保険会社に請求しても書式は同じで、保険会社に請求することで送付してもらうことができます。
インターネットでダウンロードする方法
インターネット上で検索をしてデータをダウンロードし、A3サイズの紙に印刷しておきましょう。
医師に後遺障害診断書の作成を依頼する
後遺障害診断書の書式を手に入れたら、医師に渡して記入してもらいましょう。
診断書を作成してもらう時に自覚症状について聞かれることがあるので、正確に伝えられるようにしておくことも必要です。
後遺障害等級の認定を正しく受けるためにも、症状についてより細かく記載する必要があります。
診断書に記載されている内容がすべてなので、医師のもとで正確に作成してもらいましょう。
加害者側の保険会社に提出する
後遺障害診断書が完成したら、後遺障害等級の認定審査へと進みます。
後遺障害診断書を含む必要書類を審査期間に提出しましょう。
このとき、被害者請求と事前認定のどちらかを選んで提出を行ないます。
被害者請求とは、加害者側の自賠責保険会社を経由する方法です。
事前認定は、加害者側の任意保険会社を経由することを指します。
それぞれの違いについては、以下をご確認ください。
被害者請求 | 事前認定 | |
---|---|---|
提出先 | 加害者側の自賠責保険会社 | 加害者側の任意保険会社 |
メリット | 審査の対策がしやすい | 必要書類を準備しなくて良い |
デメリット | 必要書類を準備しなければならない | 審査の対策が不十分になりやすい |
後遺障害等級の認定を納得いく形で受けられるようにするためには、審査の対策がしやすい被害者請求による申請がおすすめです。
一方、必要書類を準備するのに時間がかかったり、後遺障害についての知識が不足している場合は満足のいく対策ができないことがあります。
そのようなときは、後遺障害等級に詳しい弁護士に相談するのも良いでしょう。
後遺障害診断書が無事完成したら確認を忘れずに
後遺障害診断書を医師に作成してもらったら、その後の確認も忘れずに行ないましょう。
医師は、必ずしも後遺障害等級認定の審査を意識して書いてくれるとは限りません。
以下に記載する項目について再度確認し、安心して後遺障害等級認定の申請ができるようにしましょう。
既存障害
後遺障害診断書の中には、既存障害の項目があります。
既存障害とは、交通事故に遭う前から被害者が抱えている障害のことです。
この部分には、交通事故により既存障害と同じ部位にさらに障害が加わった場合に記入してもらいましょう。
既存障害の程度や事故との関係性について、できるだけ詳しく書いてもらってください。
既存障害の内容が不適切であると判断されたら、後遺障害等級が正しく認定されない場合があります。
自覚症状・他覚症状
自覚症状については、先に説明した通り自身が感じている症状についてより詳しく書いてもらいましょう。
後遺症による影響が記載されていない、症状に継続性がない書き方がされている場合は、医師に訂正してもらうようにしてください。
他覚症状とは、検査を通して確認できる症状を指します。
検査内容を記入してもらえば問題ありませんが、「原因不明」や「異常なし」など検査によって後遺症の存在がわからなかったといった書き方がされている場合には訂正してもらいましょう。
検査内容
後遺障害等級の認定を受けるために必要な検査をすべて受けているかも、後遺障害診断書で確認しておきましょう。
後遺障害認定で後遺症の症状などを証明するために行なう検査は、怪我の状態を調べる検査とは異なることがあります。
後遺障害に関する検査を正確に受け、その内容を正しく書いてもらうようにしてください。
障害内容の今後の見通し
後遺障害診断書には、障害内容の今後の見通しという欄もあります。
症状固定時に残っている症状が、今後どのようになっていく可能性があるのかを書く場所です。
今後も完治しない後遺症が残ったと分かる様、医師には「症状固定」や「完治せず」といった言葉を書いてもらいましょう。
今後完治する可能性がある書き方は避けるようにしたいです。
後遺障害診断書に添付する書類
後遺障害について、より詳しく伝えるために別紙や医師の意見書を添付する場合があります。
別紙では特に書式が決められていないので、より細かく後遺障害の症状について記載することができます。
後遺症によって日常生活に大きな支障が出ていることを着実に説明できる機会です。
医師による意見書では、事故との因果関係や症状の程度、今後の見込みなどを医学的な根拠を元に書いてもらうようにしてください。
後遺障害診断書を作成するときのポイント
後遺障害診断書をより正確に作成してもらうため、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
以下の点に注目しながら、後遺障害診断書の作成に入りましょう。
自覚症状について慎重に伝える
医師に後遺障害診断書を作成してもらうとき、自覚症状について聞かれる場合があると説明しました。
この時に大事なのが、実際に感じている症状にプラスで情報を記載してもらうことです。
仕事や生活にどのような影響があるのか、自覚症状に一貫性と連続性があることがわかるように伝えていきましょう。
それぞれにおいて、どのように伝えていけば良いかの具体例を参考にしながら確認しておいてください。
仕事や生活に影響がある自覚症状だと伝える
自覚症状について医師に伝えるときは、ただどのような症状を感じるのかだけでなく、生活や仕事にどう影響が出ているかを伝えるようにしましょう。
たとえば、腰痛がひどいだけでなく、腰痛がひどくて仕事で重たい物を持つことができないといったように、より詳しい情報を添えることがポイントです。
自覚症状は、本人にしかわからないものです。
検査結果や症状の程度からではどの程度の自覚症状が現れているのか、どれだけ本人が悩まされているのかを証明できません。
さらに、自覚症状については、実際に感じていないことも言えてしまうという側面があります。
自覚症状について後遺障害診断書に細かく記載してもらい、事故後の生活にどのような影響が出ているかを知ってもらう必要があるのです。
このような背景を踏まえ、自覚症状についてはより細かく日常生活などへの影響も含めて伝えるようにしてください。
自覚症状に一貫性と連続性があることがわかるよう伝える
生活や仕事にどう影響があるのかを詳しく伝えると同時に、自覚症状に一貫性と連続性があることもしっかり伝えていきましょう。
天候や時間帯などに左右されることなく、事故に遭ってからずっと同じ症状が続いていることを伝えるのがポイントです。
雨の日にだけ不調が現れる、事故直後は痛みを感じていたけれど徐々に痺れを感じるようになったなど、自覚症状に一貫性と連続性がない場合は後遺障害等級で正しく審査してもらえない可能性があります。
受傷当時と症状が違うのなら、事故による後遺症ではないのではないかと思われてしまうことがあるのです。
後遺障害診断書を書き直してもらうときは弁護士に相談しよう
一度作ってもらった後遺障害診断書を再度作成し直してもらうのは、簡単ではありません。
適正な後遺障害等級の認定を受けるために書いてもらいたいと被害者が思っても、書き直すよう言われた医師は自身の判断が間違っていると指摘されていると思う可能性があります。
そのように医師が判断すると、再度後遺障害診断書を作成してもらうのは難しいでしょう。
このような結果にならないよう、事前に弁護士に相談するのがおすすめです。
医師の判断を覆すつもりはないことを伝えた上で、後遺障害等級認定の申請を行なうために必要な検査などについて修正を依頼してくれます。
医師から後遺障害診断書を作成できないと言われたときの対処法
後遺障害診断書は、医師しか作成することができません。
しかし先述した通り、医師にお願いしても作成に応じてくれない場合があります。
後遺障害診断書を作成できないと言われた場合、どのように対処すれば良いのかも確認しておきましょう。
治療の経過がわからないからと言われたら・・・
事故後の治療において転院をしたり整骨院のみに通っていたという場合、治療の経過が把握できないという理由から医師に後遺障害診断書の作成を断られることがあります。
転院した場合は、最初に診てもらっていた病院の医師に後遺障害診断書の作成を依頼するか、初診病院での治療記録を取り寄せて転院先で新たに作成してもらうよう頼んでみましょう。
転院先で診断書を書いてもらうときは、1、2ヵ月ほど通院をしてから作成するという流れになる場合があります。
整骨院にしか通っていなかった場合は、施術証明書を取り寄せて整形外科で診察を受けるようにします。
後遺症はないと言われたら・・・
後遺症はないと医師に言われてしまったときは、後遺障害診断書を書いてもらうことができません。
しかし、後遺障害は重度のものだけでなく痛みや痺れなどが残っている状態でも認定される場合があります。
軽度であっても後遺障害として認められることがあるので、医師に後遺症がないと言われたときは今の症状をそのまま書いてもらうよう伝えてみると良いでしょう。
後遺障害診断書に詳しくないと言われたら・・・
医師が後遺障害診断書を作成した経験がないなどの場合は、作成に対して前向きになってくれないことがあります。
原則、医師は診断書の作成を拒否できませんが、中々作成してもらえないときは保険会社や弁護士に相談してみましょう。
医師が作成しやすいよう、工夫してくれるケースがあります。
後遺障害診断書の作成に弁護士が関わるメリット
後遺障害診断書の作成は医師にしかできませんが、弁護士に相談することで後遺障害等級認定のために有利に働く場合があります。
後遺障害診断書の作成に弁護士が関わるメリットを、いくつかご紹介しましょう。
後遺障害診断書の作成をサポートしてくれる
医師は、患者が訴えている症状に対して治すのが仕事であるため、後遺障害が残ったという事実を記載するのに躊躇してしまう場合があります。
さらに、医師は後遺障害等級については詳しくないため、正確に後遺障害診断書を作成してもらえないことがあります。
そのようなトラブルを回避するため、後遺障害等級に詳しい弁護士が後遺障害診断書の作成をサポートしてくれるのです。
必要な検査が実施されているか、記載されている内容が被害者の症状と一致しているかなどを確認し、後遺障害診断書の作成を手助けします。
有利な証拠を加えることができる
弁護士に後遺障害等級認定の申請をお願いすると、被害者請求という形で申請してくれます。
被害者請求で申請すると、必要書類に加えて認定の際に有利になる証拠も追加して申請できるのです。
弁護士は、認定で有利になる証拠を集めて、後遺障害申請をするときに書類を添付してくれます。
異議申し立てに対応してもらえる
後遺障害診断書を医師に作成してもらった後に後遺障害等級認定の申請をした後、どの等級にも該当しないという結果が出る場合があります。
そのような時は弁護士が異議申し立てをし、再度後遺障害の審査をしてもらうことができるのです。
異議申し立てでは、新たに証拠を集めて提出しなければならず、認定結果が不当である理由も具体的に主張しなければなりません。
法律に詳しく様々な案件に関わってきた弁護士であれば、異議申し立てのときにも大いに活躍してくれます。
後遺障害診断書は慎重かつ正確な内容を記載することが大切!困ったときは弁護士に相談しよう
後遺障害診断書は、後遺症が残ったときに作成してもらう書類です。
後遺障害等級認定の申請を行なう際に必要な書類となり、その内容次第で認定される等級に違いが出ることもあります。
より正確な内容を書いてもらい、納得のいく後遺障害等級の認定を受けられるよう、弁護士の力を借りてみましょう。
弁護士は、後遺障害診断書の内容について慎重に調べ、その後医師とやり取りもしてくれます。
後遺障害等級の認定でお悩みの際は、弁護士に相談して解決してみましょう。
交通事故による後遺障害診断書に関することなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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