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学校の連絡網が無くなった理由とは?生徒の個人情報を第三者に提供するリスク

連絡網

昭和世代にはあった学校の連絡網、現代の学校現場では見かけることがなくなりました。

これには個人情報の保護が大きく関係しており、容易に作って配布することができなくなったという背景があります。

今回は学校の連絡網がなくなった理由や現代において問題視されている点、個人情報の取り扱いについて考えていきましょう。

昭和時代の小学校にあった連絡網とは

昭和時代の小学校にあった連絡網とは

昭和時代、小学校では連絡網というものがありました。

連絡網とはクラスや学年などのグループで共有したい情報がある際に、個人の電話番号を用いて情報を伝達するという連絡手段であり、そのグループ全員の個人の電話番号が書かれた一覧のことを指します。

学校によっては平成になっても使用していたところがあり、学校からの連絡がある際に使われていました。

しかし、現代においては学校現場で連絡網が使われることはなくなりました。

多くの場合、クラスの担任の先生が下校後の子供たちや保護者と連絡をとりたいときの手段でした。

昭和の頃は個人情報保護という概念が希薄でそれほど浸透しておらず、電話番号や住所などが記載された連絡網は普通に家庭に配布されていました。

緊急時のときにも活用できるという点から、ほとんどの学校において連絡網がありました。

その後昭和から平成、令和へと時代をまたいできたなかで、家庭同士の関係が希薄になり、連絡網の存在が徐々に姿を消してきたのです。

連絡網を配布することは何故現代では問題があるのか?

連絡網を配布する教師

学校からの連絡事項などを伝える際に便利に思われる連絡網ですが、なぜ現代ではなくなってしまったのでしょうか?

現代において、連絡網にどのような問題があるのか確認しておきましょう。

個人情報のため第三者への個人データ提供に当たる

連絡網には、電話番号や住所などの個人情報が記載されています。

個人情報保護法において、個人データを第三者への提供に関する規定が設けられました。

連絡網は個人情報が記載されていることから、配布行為は第三者への個人データの提供に該当し、事前に本人の同意を得ておかなければなりません。

本人の同意を得なければならないと同時に、個人情報を取り扱う者は記録をとっておく必要があります。

記録をとっておく必要があるという点に関しては、個人情報保護法の中にも記載されています。

(個人情報保護法25条1項、同規則13条1項1号・2号)

本人の同意とは生徒本人の同意のこと?

個人データを第三者へ提供する際には本人の同意が必要となると述べましたが、学校現場の連絡網では生徒が本人に該当するのかという疑問が生じてきます。

未成年者であっても同意を得ることができるのか、親の同意は不要なのかといった点が懸念されるでしょう。

個人データの第三者への提供に関して同意を得る相手が未成年者である場合、十分な判断能力をもっていないときに限り親権者の同意を得る必要が出てきます。

未成年者のなかでも、年齢が低いほど個人情報の取り扱いについては自身で判断することが難しいです。

そのような場合においては、親権者の同意を得ることになります。

中学生や高校生などと自身で判断する能力を有している生徒から同意を得た場合でも、念のため親権者の同意も得ておくと安心でしょう。

また、同じクラスに在籍する生徒であっても第三者に該当するため念頭に置いておく必要があります。

個人データを提供しようとする個人情報取扱事業者以外が第三者に該当し、同じクラスの生徒は当てはまるのです。

教師同士の情報提供は同意不要

教員同士の間で個人情報を提供するケースについては、学校という組織の中における情報の移動になるため第三者には当てはまらず、本人の同意を得る必要はありません。

学校内の掲示板などにおいて生徒の連絡先を掲示する場合においては、教職員以外の者が個人情報を利用することができるので提供していることに該当します。

個人情報と個人データの違いとは?

個人情報と個人データの違い

現代の個人情報保護法による影響から、学校の連絡網は見かけることがなくなりました。

また、連絡網を作りたいときは、事前に本人の同意を得る必要があります。

その際に出てくる言葉として、個人情報と個人データの2種類のキーワードが挙げられます。

では、個人情報と個人データとは何が違うのでしょうか?

結論から述べると、個人情報の中に含まれる特定のものが個人データになります。

もう少し詳しく、それぞれの違いについて確認しておきましょう。

名称内容
個人情報本人の氏名と住所、電話番号、メールアドレスなどを組み合わせた情報のことを指す
個人データ個人情報データベースなどを構成する個人情報のことを指す

個人情報データベースとは、パソコンのツールなどを使って入力・整理し、コンピューターを使って特定の個人情報を検索できるようにしたものを示しています。

パソコンを使わずに、紙面にて個人情報を五十音順に並べるなどして容易に検索することが可能な状態においても個人情報データベースに該当します。

ここから、学校で用いられてきた連絡網は個人情報データベースなどに該当し、その中に記載されている氏名と連絡先を組み合わせたものは個人データになるのです。

個人情報のうち特定のものが個人データに当たり、学校の連絡網はこの部分に該当するのです。

本人の同意があれば配布が可能

学校現場では、教員が生徒の連絡先を知っておく必要もあります。

基本的には、本人の同意があれば連絡網の配布は可能です。

生徒の年齢によっては親権者の同意を得なければなりませんが、同意を得ることで連絡網を配布することができます。

事前に本人の同意を得ておくことで配布が可能となる連絡網ですが、本人の同意を得ておく以外の方法で確認をとることはできるのでしょうか?

個人データは誰にでも開示されるものではないものの、上手に活用することで社会にとって有用となるケースがあります。

そのような場合において、個人情報保護法では一部例外を認めています。

事後的に本人の求めがあった際には提供を停止させるということを条件に、個人データを第三者に提供することを許容しているのです。

この手続きを、オプトアウト手続きといいます。

オプトアウトで第三者に個人データを提供する場合の流れ

オプトアウト手続きによって個人データを第三者に提供する場合は、以下の事項について事前に本人に伝えるか、本人が知り得る状態を整えておかなければなりません。

  1. 第三者への提供を利用目的とする
  2. 第三者に提供される個人データの項目
  3. 第三者へどのように情報を提供するのかという手段
  4. 本人の求めに応じて個人データの第三者への提供を停止する
  5. 本人の求めを受け付ける方法

オプトアウト手続きは、個人データの内容に本人の人種や社会的身分、犯罪などの情報を含む場合においては、「要配慮個人情報」に当たることから行なうことができません。

そのような内容を含む個人データが開示されることで、不当な差別や偏見などの不利益が生じる恐れがあるからです。

生徒の個人情報を第三者に伝えるべきか悩むシチュエーション

生徒の個人情報を第三者に伝えるべきか悩むシチュエーション

学校における連絡網を中心に個人情報の取り扱いについて考えてきましたが、以下のようなシチュエーションにおいては生徒の個人情報を第三者に伝えても良いものか判断が難しい場面があります。

今回は、2つのケースにおいて個人情報を第三者に伝えても良いのかどうかを考えてみましょう。

警察からの捜査関係事項照会書が届いた

在学中の生徒が事件を起こして警察の捜査を受けているときは、警察から「捜査関係事項照会書」と呼ばれるものが届くことがあります。

そのなかで学籍簿の提供を求められた場合、警察に情報を提供しても問題はないのでしょうか?

結論として、刑事訴訟法に基づき捜査関係事項照会を受けた際はきちんと回答しなければなりません。

しかし、学校側としては学籍簿の提供が本当に必要であるかを慎重に判断する必要があります。

本来、個人データの第三者への提供は、事前に本人の同意を得ておかないと行なうことができません。

一方、警察側は、刑事訴訟法197条2項にある通り、捜査の際に公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるとしています。

捜査関係事項照会を受けた者は、法令に基づく場合に当たるとして本人の同意なく個人データを提供することが許されます。

そのようななか、学校は本当に捜査に必要な情報なのかを検討した上で判断を行なわなければなりません。

捜査関係事項照会書が届いた際にはこのような流れで対応することになりますが、電話で照会を求められたときは通話の相手が本当に警察官かどうか不明なので、生徒の情報を伝えないようにしましょう。

病院からの依頼

在校生徒が怪我を負い病院に運ばれた、病院側は保護者に伝えなければならないことがあるので連絡先を教えてほしいと言っている、このようなケースにおいては学校は生徒の情報を伝えても良いのでしょうか?

生徒の個人データは、基本的には指導に関して保護者に連絡をするために必要とされています。

病院に情報を提供するのは、本来の目的と異なることから原則的には許されていません。

しかし、命や財産を守るために情報が必要なケースにおいては、本人の同意を得るのが難しい場合、同意を得ずとも病院側に個人データを提供することができます。

病院から連絡先を教えてほしいと依頼されたときは、念のため保護者に連絡をして状況を説明し、保護者から病院に伝えてもらうという方法が良いでしょう。

生徒の個人情報提供は慎重に行おう

学校からの連絡を回すために整備されていた連絡網ですが、今では個人情報の問題から用意されることがなくなりました。

どこで個人情報が漏れてしまうかわからない現代では、生徒に関する個人情報の扱いがより難しくなってきているといえます。

一方、状況によっては生徒の個人情報を提供しなければならないときもあります。

生徒の連絡先がどのような個人情報に該当するのかを理解した上で、慎重に取り扱うようにしましょう。

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この記事の監修者

大阪市の弁護士「阪倉篤史」

阪倉 篤史 弁護士

大阪市にある西横堀総合法律事務所、代表弁護士の阪倉 篤史です。
「日本一話しやすい弁護士」を目指して、日々研鑽に努めております。
学校現場での個人情報の取り扱いに関することなら、どうぞお気軽にご相談ください。