「美術の時間に生徒がキャラクターの絵を描いているけれど、著作権の侵害にならないかな?」
「運動会で流行りの曲をテーマにダンスをしたけれど、著作権者に許可を得る必要があったのだろうか?」
学校現場に立っているなかで、このような疑問を持った方はいらっしゃいませんか?
学校では、授業などの際に様々な資料を活用することで、より質の高い授業を行なうことができます。
参考になる著作物も多く、授業で利用したいとい感じる本やビデオ、テレビ番組などもあることでしょう。
ここで問題となるのが、著作権です。
学校では、著作権侵害に該当する行為にならないよう、日ごろから教員が意識しつつ資料を整えることが大切です。
今回は、学校での著作権侵害について、法律や権利の内容、具体的なシーンに合わせて寄せられた質問などにお答えしていきます。
Contents
- 知的財産権について
- 著作権侵害になるケース
- 著作権法違反にならないケース
- 学校での著作物の扱いにおいて違反となりやすい具体例
- 学校現場のなかで授業に該当しないケース
- 学校で著作物を使用することに関するQ&A
- Q1 学校現場で生徒に配布する資料や試験問題などに市販の書籍などをコピーしても問題ないでしょうか?
- Q2 試験問題に小説を使おうと思うのですが、コピーして配布しても大丈夫でしょうか?
- Q3 教員が自身の勉強のために雑誌の一部をコピーするのはOK?
- Q4 調べ学習を行なうため、生徒が漫画をコピーするのは大丈夫?
- Q5 美術の授業のとき、生徒が既存キャラクターを描くのはOK?
- Q6 運動会や体育祭、文化祭などでアーティストの音楽は使っても良い?
- Q7 教員が授業で使うためにテレビ番組を録画し、授業で流すのは良い?
- Q8 文化祭の劇で人気アーティストの曲に合わせて踊っている動画を学校のホームページにアップしても良い?
- Q9 オンライン授業で教科書を画面に映すのは問題ありませんか?
- 学校現場における著作物の活用はポイントを押さえながら使用することが大切
- 学校現場での著作権侵害に関するトラブルのことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
知的財産権について
学校での著作権侵害について見ていく際には、先に知的財産権についての知識を得ておく必要があります。
ここでは知的財産権とは何なのか、どのような種類があるのかを解説します。
知的財産権制度とは
人によって生み出された創作物やアイディアなどには財産的な価値を持つものがあるとしており、そのようなものを知的財産と呼びます。
その知的財産の成果について、一定期間の独占権を与えるというものが知的財産権制度です。
知的財産権にはいくつか種類があるため、次の項目でご紹介します。
知的財産権の種類
知的財産権は10を超える権利の集合体です。
そのなかから耳にすることが多い権利について見ていきましょう。
特許権
発明を保護するものであり、物の発明、方法の発明、物の生産方法の発明の3種類があります。
出願から20年間保護され、特許庁に出願手続きを行なうことで得ることができる権利です。
商標権
自身が取り扱うサービスと他人が取り扱うサービスとを区別するための文字やマークを保護する権利です。
保護期間は登録から10年となっており、特許庁に出願手続きを行ないます。
著作権
知的財産権のなかには、著作権も含まれます。
芸術や音楽、文芸などの範囲において作者によって表現された著作物を保護する権利になり、創作時から著作者の死後70年までを保護期間としています。
意匠権
意匠権とは物のデザインに対して与えられる権利となります。
意匠権を獲得することで、意匠権者はそのデザインを独占することが可能です。
アプリのアイコンや服のデザイン、イラストなど私たちにとって身近なデザインに与えられている権利が意匠権です。
意匠権の有効期間は、特許出願の日から25年間となっています。
著作権侵害になるケース
学校現場では著作物を参考にしたい、授業に利用したいというときに著作権の問題で悩まされることがあります。
では、どのようなケースにおいて著作権侵害になるのでしょうか?
著作物を無断使用する
著作権侵害は、著作物を無断でコピーして利用することにより発生します。
すでにこの世に存在する書籍やデザインなどを複製して様々な場で活用することは、著作権侵害に該当するため注意が必要です。
一方、頭に思い浮かんだアイディアやまだ表現されていないものに関しては、著作物の対象になりません。
著作権で保護されるようになった状態になって初めて著作物になり、権利が発生してくるのです。
著作権が保護期間内である
著作権には、保護期間があります。
期間は創作者の死後70年まで著作物の権利が保護されるようになっています。
保護期間内である著作物に対しては著作権があるため、むやみに利用することは避けると安心です。
依拠性が認められる
すでに世の中にあるものとそっくりである、真似をして作られているとわかる場合、依拠性が認められるとして著作権侵害にあたります。
既存のデザインの一部を変更した、明らかに何を参考にしているのかがわかる、というときは著作権侵害に該当するため気を付けましょう。
類似性が認められる
すでにある著作物とどれぐらい似ているかによって、著作権侵害に該当するかどうか変わってきます。
本質的な特徴が似ているということであれば、他の人の作品を買って利用することになるため違法です。
明らかに違う作品である、一般的な表現であるというときは著作権侵害にはなりません。
著作物を利用する権利を有していない
著作権者ではない人が、著作物をコピーするなどの行為を行なった場合は著作権侵害になります。
一方、著作権者に正しく許可を取れば著作物の利用が可能です。
作品の許可なしに利用することはNGですが、確認をして許可を取ることができれば著作権侵害にはなりません。
著作権法違反にならないケース
知的財産権の一つに含まれる著作権については、書籍などの著作物が用いられる現場や状況によって違反になるかどうかが分かれます。
学校現場においては、体育祭のときに人気アーティストの歌を使ってダンスをしても良いか、配布するプリントに既存のキャラクターを載せても良いのかなど、ふとしたときに著作権侵害に当たらないかどうかを懸念する教員は多いでしょう。
そこで、著作権法違反には該当しないケースについて見ていきましょう。
学校の授業で利用する
学校の授業で使うために教員や児童、生徒が著作物をコピーすることは著作権侵害に該当せず、著作権者に許可を取る必要はありません。
学校などの教育機関では、その公共性から例外的に著作権者の了解(許諾)を得ずとも一定の範囲内であれば自由に利用することができるとしています。
しかし、著作権法第35条第二項では、公衆送信を行なう場合は教育機関を設置する者が相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならないとしています。
公衆送信とはインターネットなどを通して著作物を送信するという意味になり、学校の授業で使う際に利用することは可能であるものの、相当額の補償金を支払う必要が出てくるのです。
試験問題に利用する
著作権法第36条では、著作物について、入学試験や定期試験などで使用する際許可を取る必要はないとしています。
ただし、著作物の種類や用途などにより著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。
非営利・無料で演奏や演劇を行なう
音楽の演奏や劇の上演などは、営利目的でなく、観衆から料金を受け取らない場合に限り、著作権者の許可を得る必要はありません。
著作権法第38条に、音楽や劇の上演に関する著作権について記載されています。
個人的に利用する
著作物を個人的に利用する場合は、著作権法違反にはなりません。
家族のなかだけで使う、自分のためにコピーするなどの行為は著作権侵害にはならないため、著作権者に許可を取る必要はありません。
学校での著作物の扱いにおいて違反となりやすい具体例
学校での著作物の扱いにおいて違反となりやすい例を知っておくことも重要です。
以下のようなケースにおいて著作権侵害となる恐れがあるため押さえておきましょう。
市販の学習ドリルや書籍などをコピーして授業で配布する
市販の問題集などをコピーして授業で配ることは、著作権者の利益を害することになります。
市販の問題集などは、本来、個人売買を目的として販売されているものだからです。
学校行事にゲストを呼んで報酬を支払う
行事にゲストを呼んだり音楽を利用する場合においては、営利目的でない場合は著作物の利用が可能ですが、報酬が発生する際は事前に手続きを踏んだ上で利用しなければなりません。
個人または学校のホームページや広報誌などに他人の著作物を利用する
個人的なホームページや学校のホームページなどに著作物を掲載することは、事前に著作権者への確認が必要となります。
著作物をどこに掲載するか、何に利用するのか、という目的に応じて利用が可能なのか判断する必要があるのです。
生徒が創作したもの
学校で扱う著作物というと、外部からの情報を学校現場で活用するというイメージが大きいでしょう。
しかし、生徒が創作した作品や作文などにおいての取り扱いにも注意が必要となります。
作文を文集に掲載する、また作品を校内に展示するなどの場合、生徒が著作権を有しているため、生徒本人に承諾を得る必要があるのです。
教員が無断で掲載することは禁じられているため気を付けましょう。
学校現場のなかで授業に該当しないケース
学校現場でも授業に該当しない場面があります。
授業に該当しない場面がどのような場合かを理解しておくことで、著作権侵害を防ぐことができます。
たとえば、次のようなケースは授業に該当しないので著作物の扱いには気を付けましょう。
- 学校説明会
- オープンキャンパスでの模擬授業
- 教職員会議
- サークル活動
- 教職員を対象としたセミナー
- 保護者会
- 自主的なボランティア活動
- PTAや自治会主催の講演会など
一見授業との線引きが難しく、著作物を扱ってしまいそうになる場合もあるため、上記のような場面においては著作物の活用を控えると安心です。
著作物を参考にしたい、活用したいというときは、どのようなシーンで利用するのかをよく考え、著作権侵害にならないか事前に確認しておきましょう。
学校で著作物を使用することに関するQ&A
学校現場で著作物を使用するケースは、授業や試験などに活用しても良いとされていることが多いです。
しかし、学校現場で働いている教員にとっては、実際のシーンに合わせて著作権侵害に当たらないかを確認しておきたいと思うでしょう。
そこでここでは、学校で著作物を使用することに関するQ&Aについてまとめました。
Q1 学校現場で生徒に配布する資料や試験問題などに市販の書籍などをコピーしても問題ないでしょうか?
市販の書籍などにも著作物に該当することから、作者には著作権が発生します。
なので書籍などをコピーすることは、著作権法上複製権の侵害に該当します。
複製を行なう際は、著作権者から利用の許可を得るか、そうでない場合は著作権法上に規定された条件を満たす必要があります。
そのうえで生徒に書籍などをコピーしたものを配布することは、一定の条件を満たす場合に限り可能です。
著作権者に許可を得られなかった場合でも使用が許される一定の条件とは、以下のような場面に該当します。
使用許可条件 | 詳細 |
---|---|
学校その他の教育機関(営利を目的に設置されているものは除く) | 幼稚園、小学校、中学校、高校、短期大学、大学、養護学校、看護学校など |
教育を担任する者および授業を受ける者の使用 | 教員免許の有無は問わず、現実に授業を担当する者を指します。授業を受ける者、または授業参観に訪れた者は著作物をコピーしたものを配布することはできません。 |
授業の過程における使用に供することを目的とするとき | 授業の目的ということであれば、部活動や学校行事などにおいても利用が可能です。 |
必要と認められる限度による | 授業を受ける人数に合わせてのみ、複製が認められます。授業を受ける者への配布を目的としていない場合は、原則として一部に限られます。 |
公表された著作物を複製することができる | 公表されている著作物に関しては複製が可能、未公表の著作物の場合は複製ができません。 |
Q2 試験問題に小説を使おうと思うのですが、コピーして配布しても大丈夫でしょうか?
一定の条件を満たす場合において、可能です。
試験問題が入試問題なのか、それとも定期テストなのかによって状況が異なってくるため、それぞれのケースにおいて見てみましょう。
入試問題の場合
一定の条件を満たす場合は使用可能で、著作権者から直接利用の許可を得ている場合は問題ありません。
一方、入試問題に関しては、こちらも著作権法上の一定の条件を満たす場合は許可されています。
ただし許可を得る際に問題が外部に漏洩する可能性が出てくるため、取り扱いには注意が必要です。
学校の定期テストの場合
入学試験や模擬テストなどに該当しない定期テストの場合、コピーして使用することはできません。
一方、授業の一環として考えることができるため、活用することは可能です。
ただし、市販の問題集をコピーして利用することは、著作権者の利益を不当に害する行為となるため認められていません。
Q3 教員が自身の勉強のために雑誌の一部をコピーするのはOK?
自身の授業に生かせそうなページを見つけた、授業の参考にするためコピーしたいという場合、OKとなっています。
著作物の私的利用に該当することから、著作権者の許可を得る必要はありません。
Q4 調べ学習を行なうため、生徒が漫画をコピーするのは大丈夫?
答えは、基本的にはOKとなっています。
教員だけでなく、児童や生徒も授業に利用するために著作物をコピーすることができます。
Q5 美術の授業のとき、生徒が既存キャラクターを描くのはOK?
生徒がとあるキャラクターの絵を描いていた、このようなケースにおいても基本的にはOKとなっています。
授業に使用するためであれば著作権者の許可を得なくても使用が可能です。
Q6 運動会や体育祭、文化祭などでアーティストの音楽は使っても良い?
運動会や体育祭などの競技では、そのとき人気の曲を流すことでより盛り上がります。
ダンスなどの出し物のときにも、流行りの曲を使って踊りたいという声が上がることでしょう。
このような場合も、基本的にはOKです。
営利目的ではなく無料で音楽を流すのであれば、問題ないとされています。
Q7 教員が授業で使うためにテレビ番組を録画し、授業で流すのは良い?
基本的には、OKとなっています。
授業で利用するための複製に該当するため、著作権者に許可を得ることなく使用が可能です。
生徒に録画したものを見せることは無料の上映になるので、この場合においても著作権者に許可を得る必要はありません。
Q8 文化祭の劇で人気アーティストの曲に合わせて踊っている動画を学校のホームページにアップしても良い?
このケースにおいては、NGとなっています。
楽曲を含んだ動画のアップロードは著作物の複製にあたり、授業で利用することを目的としていない複製であると判断されるため、著作権者からの許可が必要となります。
Q9 オンライン授業で教科書を画面に映すのは問題ありませんか?
授業で利用することが目的である場合は、必要と認められる限度(授業内容に合わせて必要であると判断できるもの)において、許可を得なくても利用ができます。
学校現場における著作物の活用はポイントを押さえながら使用することが大切
学校の授業や試験などにおいて、著作物を利用したいというケースが出てくることがあります。
教員にとっては著作権侵害に該当するのではと不安に感じるため、どのようなシーンで何のために使うのかを明確にする必要があります。
基本的には授業や試験などで使っても良いとされる著作物ですが、著作権侵害にあたる行為を理解し、安心して活用できるようにしましょう。
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