保育園を運営していると、園内において職員同士、子どもと職員の間でパワハラやマタハラなどのハラスメントが起きることがあります。
ハラスメントは被害者に大きな苦痛を与えると同時に、園側にも人材不足などのマイナスの影響をもたらす為、経営者としては見過ごすわけにはいきません。
ここでは、保育園で起こり得るハラスメントの種類から対処法、ハラスメント防止策などについて詳しく解説します。
保育園で起こる可能性のあるハラスメントについて知り、未然に防ぐための対策も実施していきましょう。
Contents
保育園の現場で起こり得るハラスメントとは
ハラスメントにはいくつか種類がありますが、保育園において起こるリスクが高いのがパワーハラスメントとマタニティハラスメントです。
それぞれの特徴や定義について、以下で説明します。
パワーハラスメント
厚生労働省によると、以下の要素をすべて満たすものをパワーハラスメントと定義づけています。
対象となるのは、正規職員だけではありません。
契約社員や非正規職員など、保育園が雇用するすべての職員が含まれます。
- 優越的な関係に基づいて行われる行為
- 業務の適正な範囲を超えて行なわれること
- 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
職務上地位が上位の者からの行為や、同僚や部下からの集団による行為、業務から大きく逸脱した行為などがパワーハラスメントとなります。
暴力や暴言、厳しい叱責などもパワーハラスメントに該当し、行き過ぎた指導や発言には注意が必要です。
もう少し詳しく、保育園におけるパワーハラスメントの具体例を見ていきましょう。
- ミスを繰り返す職員に体罰を与えた
- 暴言を吐いたり、怒鳴る
- 子どもや保護者などの前で罵倒する
- 特定の職員に対して意図的に会議などから外す
- 自身の業務の上に、他の職員の業務も割り当てられる
- 経験がある保育士に対し、掃除だけさせる
- プライベートを執拗に詮索する
意図的に行なわれるパワーハラスメントもあれば、良かれと思ってした行為がパワーハラスメントに該当する場合もあります。
そして、退職者や保護者からの発言がきっかけで問題が見えてくることもあります。
保育園としては優秀な人材を失うことで、通っていた子どもの退園が増える恐れがあるだけでなく、人材確保に苦しむことにもなるため、ハラスメントには敏感になっておきたいです。
パワーハラスメントに該当する行為や言動をよく把握し、保育士との接し方には気を付けなければなりません。
マタニティハラスメント
ハラスメントのなかには、マタニティハラスメントと呼ばれるものがあります。
出産や育児といった子育てに関して、差別的な言動をする行為がマタニティハラスメントです。
制度に則って産休を取得したのに、産休を取るような人材は不要だなどと言われたケースは、マタニティハラスメントといえます。
保育園の現場で起こるハラスメントへの対策
ここでは、保育園で起こり得るハラスメントに対してどのように対処していけば良いかという対処法について解説します。
パワーハラスメントへの対策
保育園の現場では、管理職と保育士との間に年齢の開きがあるケースが多いです。
園長などの言葉のかけ方が、保育士にとってはパワハラだと受け止められることがあるのです。
保育園の中で起きている小さなわだかまりが人材の流出にもつながる場合があるので、パワハラには早急に対応すべきです。
具体的には、以下のような方法をとり、パワハラに向き合っていきましょう。
パワーハラスメントの周知徹底と教育
上記で触れた通り、パワハラについては厚生労働省でも定義づけられています。
厚生労働省による職場の嫌がらせ問題に関する円卓会議においても、パワハラ対策に取り組んでいくことが重要とであると考えられています。
ここから、以下に記載する対策を実践すべきです。
対パワハラへの対策 | 具体的な内容 |
---|---|
保育所トップのメッセージ | 職場のパワハラは断じて許さないことを明確にし、方針を伝えていきます。保育所内で、パワハラに対する意識を共有できます。 |
ルールを定める | 就業規則などが記載された文書に、パワハラについての規定も設けます。文章にしてパワハラに関する取り組みをまとめておくと、パワハラ行為を行なうとどのような処罰が下されるかも明確化できます。 |
実態の把握 | 園長や保育士にアンケートを実施し、パワハラの有無や意識を調査します。ここから、パワハラの実態がわかり、今後の方針についても検討していけるでしょう。 |
教育の徹底 | 定期的に管理職向け・保育士向けの研修を行ないます。研修の内容には、トップのメッセージやルールの説明などを含めると良いでしょう。 |
周知する | 上記の取り組みや相談窓口について保育所全体が把握できるよう、周知を徹底していくことが重要です。 |
マタニティハラスメントへの対処法
続いて、マタニティハラスメントへの対処法について見ていきます。
保育所内でのマタニティハラスメントを防ぐため、次のような対策を取っていきましょう。
マタニティハラスメント防止措置の整備
保育所内のマタニティハラスメントを防ぐためには、以下の措置を行なって整備していくことが大切です。
対マタハラへの対策 | 具体的な内容 |
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事業主の方針を明確化及びその周知 | マタハラが起きてはならないという方針を明確化するために就業規則の規定などに追記し周知しましょう。マタハラに該当する内容や育児休業制度の利用ができるなどしてマタハラに対する取り組みを認知してもらう必要があります。 |
適切に対応するために必要な体制を整備 | 相談窓口を設けて、マタハラの事実や該当するかどうかなどについて相談できる体制を整えます。 |
マタハラに関する迅速かつ適切な対応 | マタハラの相談があったときは、事実関係を迅速・正確に調べ、被害者に対して配慮の措置を行ないましょう。行為者に対しても、どのような措置をとるか考えていきます。 |
マタハラの原因や背景となる要因を解消 | 業務体制を整備するなどして、マタハラの原因となる要因を解消していきます。 |
マタニティハラスメントも防止規定の整備
マタハラ行為を行なった者については、厳正に対処すべきです。
対処の内容などがわかるよう、就業規則などの文書に規定し、周知啓発を行ないましょう。
たとえば、以下のような内容を盛り込んで就業規則を整備すると、マタハラの防止につながります。
- 部下の妊娠や出産などに関する制度を利用する際に、解雇や不利益な扱いをしてはならない
- 部下や同僚が妊娠や出産などに関する制度を利用した場合に嫌がらせをしてはならない
ハラスメント加害者への対処法
保育園でのパワハラやマタハラは、日ごろから対策を行ない未然に防ぐことが一番大事ですが、すでにハラスメントが発生している場合もあるでしょう。
では、保育園でハラスメントが起きた場合、加害者への対処はどのようにすべきなのでしょうか?
ハラスメント加害者への対処について考えていきます。
事実関係の調査
はじめに、事実関係の調査を行ないましょう。
被害を訴えてきた者、または加害者などから、プライバシーに配慮した上で事情を聴き取っていきます。
先入観を持たず、中立的な立場で構成に調査を行なうことが大切です。
このとき、被害者がどのような解決を望んでいるかも確認しておきましょう。
ハラスメントの事実確認
事実関係の調査によってハラスメントの事実が確認された場合、その後の対処について考えていくことになります。
懲戒処分や再発防止研修の実施などが挙げられるでしょう。
ここで当事者の主張が食い違うなど、保育所内での解決が難しい場合は、第三者機関に相談することが有効です。
紛争調整委員会によるあっせんなどの紛争処理システムの利用を検討すると良いでしょう。
加害者への対応
加害者に対する懲戒処分を検討する際は、就業規則を確認の上で適切に行なう必要があります。
その際に、加害者に対して十分に弁明の機会を与えるなど、慎重に手続きを進めましょう。
また、被害者の意向も踏まえ、加害者から被害者への謝罪の場を設けることを検討してください。
保育所内でのパワハラは使用者責任や使用者自身の不法行為責任などから、損害賠償義務を負うことがあります。
加害者だけでなく、保育所にも責任が生じる場合があることを念頭に置いておきましょう。
顧問弁護士がいればハラスメントが起きたときも安心
保育園のハラスメントは、職員や子どもの精神的苦痛に対して適切に対応しなければなりません。
それは同時に、園の経営にも大きな影響が及ぶでしょう。
保育園内での解決が難しい場合、第三者機関に相談する方法があると説明しました。
このとき、頼りになるのが顧問弁護士です。
顧問弁護士がついていれば、ハラスメントが起きたときも速やかに相談できます。
安全管理体制の構築支援
保育園では、子どもの安全を確保することが最も重要な課題です。
子どもたちが怪我などすることなく安全に過ごせるよう、保育士は常に注視しておかなければなりません。
顧問弁護士がいれば、相談しながら安全管理委員会を設置し、関係者全員と向き合っていけます。
子どもが安全に過ごせる保育園として、保護者からの信頼も得られるでしょう。
個人情報漏洩リスクの管理
保育園では多くの子どもの個人情報を扱っているので、管理の仕方には注意しなければなりません。
個人情報の漏洩については連絡帳の取り違えなど、日常の中にリスクが潜んでいます。
このような個人情報に関しても、顧問弁護士が管理方法やマニュアルの作成などを手伝ってくれるので心強いです。
個人情報が漏洩しないよう、日々の業務の取り組み方についてのアドバイスをもらうことができます。
人事労務関係の整備
職員が次々に転職してしまうと、園の経営が難しくなります。
園の職員の離職率が高いと感じるときは、職員が働きやすい環境を作っていく必要があります。
ハラスメントが起きていないか、休暇が取りやすい環境であるかなどを顧問弁護士と一緒に相談しながら決めていきましょう。
長時間労働ではないか、残業代の未払いが発生していないかといった人事労務関連の整備も任せられます。
保育園でのハラスメントは防止と正しく対処することが重要
保育園でのハラスメントの対処法や防止法、顧問弁護士の重要性などについて解説しました。
ハラスメントが発生すると、園は職員や子どもを失うこととなります。
そのような事態を起こさないで済むよう、ハラスメントへの対策・防止はしっかり行なっていきましょう。
顧問弁護士は、ハラスメントに関するトラブルや相談にも快く対応してくれます。
保育園の経営を円滑に行なっていけるよう、顧問弁護士との契約を検討してみてください。
保育園で起こるハラスメントのことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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