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ブラック校則は何のため?ブラック校則の定義と法的問題について弁護士が解説

ブラック校則は何のため?ブラック校則の定義と法的問題について弁護士が解説

学校の校則には様々なものがあり、髪型やスカート丈など、学校によって校則内容が決められていることでしょう。

その校則のなかにはブラック校則と呼ばれるものがあり、生徒が精神的苦痛を受けるような内容も存在します。

学校側の事情が絡んでいることが多いブラック校則、その定義や法的問題について理解を深めておきましょう。

自身の学校にはブラック校則が存在するのか、生徒の日ごろの様子やトラブルの有無などを見直す機会にもなります。

ブラック校則の定義

ブラック校則の定義

ブラック校則という言葉は、もとは生徒側から自然に生まれたものであり、明確な定義が存在しているわけではありません。

一方、国の定義に基づいてみると、以下の2点から外れていると考えられるときブラック校則に該当するといえます。

  • 教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲
  • 社会通念上合理的と認められる範囲

具体的にみると、このような内容がブラック校則になる恐れがあります。

  • 校則を設けても成績向上にはつながらない内容
  • 社会生活のなかで一般的ではないとされるルール
  • 教師個人の判断で作られ、運用されている
  • 生徒自身が精神的苦痛を訴えている

中学校や高校などにおいて決められていることが多い校則、その内容によってはブラック校則になる可能性があるので注意が必要です。

自身が勤める学校においてブラック校則が存在していないか、振り返ることが大切です。

ブラック校則ができた理由

生徒から自然に発生したブラック校則という言葉ですが、なぜそのような校則が作られるようになったのでしょうか?

ここでは、ブラック校則ができた理由や背景について考えてみます。

若者の非行行動改善

若者の非行行動改善

ブラック校則ができた理由の一つに、若者の非行行動を改善するという目的が挙げられます。

戦後学校制度が整備されていったなか、旧文部省は「生徒指導の手引き」というものを発行しました。

その当時は若者の非行行動が問題視されており、学校でどのように生徒指導を行なうべきかという点が注目されたのです。

その後、校内での暴力が問題となった年代もあり、生徒指導のなかではトラブルの芽を事前に摘むという考え方が広まっていきました。

若者の非行行動を抑えるため、国からの手引きをもって厳しい校則の下生徒を管理するという状態が定着したのです。

周辺住民へのクレーム対策

ブラック校則ができた背景には、周辺住民へのクレーム対策という面があります。

周辺の住民からのクレームには、理不尽な内容のものも多く、クレームの内容には次のような理不尽なものがあります。

  • 直接被害を受けたわけではないが、登下校中の態度が気に入らない
  • 自宅から見える授業風景において、指導の仕方が納得いかない

地域住民から受けたクレームで学校の先生が対処に追われることとなり、板挟み状態になっていることが背景にあります。

しかし、クレーム対応も学校を運営していくうえでの義務となるため、先生はブラック校則を設けて子供たちを取り締まろうという流れが生まれました。

本来子供の教育のために然るべき校則を設けるのが学校側の義務ですが、周辺住民からクレームが来てしまった場合には地域との関係性を改善するための校則を制定しなければなりません。

その結果、ブラック校則が制定されてしまうことがあるのです。

入学希望者や地域へ学校をアピールするため

ブラック校則は、学校側が入学希望者や地域に対して、規律正しい教育を徹底しているというアピールをするために設けられていることがあります。

学校側の都合が影響している部分が大きく、学校の運営都合のためにブラック校則を生徒に強いる事態が起きていると考えられます。

学校としては、入学希望者の増加や地域からの良い評判を維持したいものです。

しかし、それらを実現するため、生徒側がブラック校則で辛い思いをしている場合があるという点についても理解する必要があります。

ブラック校則の事例

ブラック校則と呼ばれるものは、常識的な校則とは内容が異なります。

生徒を傷つけてしまうようなルールが存在していることも事実であり、ブラック校則を強いるがために不適切な指導を行なってしまう場合もあります。

どのような内容がブラック校則に該当するのか、いくつか事例を見てみましょう。

 ブラック校則事例内容
髪型、髪色に関する行き過ぎた指定編み込みや三つ編みは禁止、ピン留めやヘアゴムの色を指定、黒染めの義務化、縮毛矯正やストレートパーマの禁止など
制服や下着に関するものスカート丈が厳密に決められている、下着の色を指定、靴下の色を指定、決まった色と形のカーディガンしか着用できないなど
登下校時や休み時間の行動に関するもの男女の組み合わせで登下校をしてはならない、寄り道をする場合は届出が必要、徒歩以外で登下校するのは禁止、掃除中は無言で行なうなど
生徒の持ち物やプライベートな内容に関するもの外泊や外出の禁止、アルバイトの禁止、放課後にスマートフォンを使用してはいけない、ペットボトル飲料の持ち込み禁止、制汗剤や日焼け止め、リップクリームやハンドクリームなどは持ってきてはならないなど 
生徒の健康に関するもの運動部への入部を強制する、運動中に水分を摂ることを禁止する、月経中の女子生徒に対して水泳への参加を強要するなど 

ブラック校則は法的問題になる可能性がある

ブラック校則は、法的問題になる可能性があるので学校側は慎重に対応しなければなりません。

ブラック校則は、生徒の自己決定権を不当に制限する恐れがあることから日本国憲法に定められている「幸福追求権」に触れる可能性があります。

ブラック校則によって生徒の自己決定権が制約されるとなると、合憲性が問われることになります。

国公立学校と私立学校とで校則による自己決定権の制限が異なってくるため、それぞれの場合において考えてみましょう。

国公立学校の場合

国公立学校では、校則は生徒の権利を制限するものであるとして日本国憲法が直接適用されます。

校則に必要性と合理性が認められないとき、憲法に反することとなります。

校則の目的が正当であること、校則の手段が目的と関連しており過度でないことが重要なポイントです。

このような内容に該当しない校則はブラック校則となり、違憲となります。

私立学校の場合

私立学校の校則は、日本国憲法が直接適用されることはありません。

公権力によって制定されたものではないと判断されるためです。

しかし、国民の人権を保障するという点から、公序良俗などの一般規定に日本国憲法の趣旨を含めて解釈・適用すべきであるとされています。

ここから、私立学校の場合においても、国公立学校と同じように校則に必要性と合理性の面で問題がないか確認することが必要です。

私立学校は国公立学校よりも校則の適法性に関して緩やかに考えられる傾向にあります。

ブラック校則は日本国憲法に反しているとみなされることがある

国公立学校と私立学校との校則の考え方、日本国憲法との関係性について解説しましたが、ブラック校則に関しては合理性がないものと判断される可能性があります。

目的達成につながらず、生徒側に過度な制限を課しているという点から、日本国憲法に反しているとみなされることがあるのです。

下着の色を指定する、髪の毛の色は全員黒に染めるなどのブラック校則は、合理性を欠くものです。

よって、ブラック校則は日本国憲法に違憲である、または違法と判断される可能性があります。

ブラック校則を残すリスク

ブラック校則を残すリスク

ブラック校則は、生徒の側に立って考えること、また内容によって法的問題になる場合があることを学校側はよく理解しておく必要があります。

そのうえで、ブラック校則を残すリスクについて考えてみましょう。

入学志願者が減ってしまう

ブラック校則は、子供や親同士、地域からの評判などによって入学を検討している人の耳にも入ってしまいます。

ブラック校則を残したままにしておくことでそれが悪評となり、入学志願者が減少してしまう恐れがあるのです。

時代遅れの学校である、厳しい校則のなかで生活をするのは辛いなど、生徒や保護者から敬遠されてしまうこととなります。

昨今の少子化に加えて入学志願者が減少してしまえば、学校の運営にも大きな影響が及びます。

在校生がブラック校則に対して訴訟を起こすことがある

ブラック校則が設けられている学校内で過ごす生徒は、日ごろから多くの不満や鬱憤を溜め込んでいるでしょう。

その結果、在校生がブラック校則の違憲性や違法性を主張して訴訟を起こすケースがあるため、学校側は慎重に対応することが求められます。

ブラック校則に関するトラブルが大きな問題に発展すると学校の評判も下がります。

生徒が集まらない、学校を運営していくのが困難になるといった事態に発展するリスクがあるため気を付けましょう。

ブラック校則廃止に向けて実施されている取り組み

生徒は学業に専念してもらいたい、近隣住民からの評判が良い学校を運営していきたいと考えるのは、学校側としては自然なことでしょう。

しかし、それらを実現するためにブラック校則を設けることは、生徒や保護者、学校運営にとっては逆効果となることがあります。

最近ではブラック校則を廃止するための取り組みが実施されるようになりました。

実際にどのような取り組みが行なわれているのか、ご紹介します。

弁護士会をはじめ教育委員会や文科省が動き出している

ブラック校則の廃止に向けて、地域ごとに取り組みが開始されています。

具体的には、次のような動きがみられるようになりました。

地方弁護士会による調査と意見書の提出

地方の弁護士会において、学校の校則を調査する動きがみられます。

県によっては、調査結果の内容をもとに、教育委員会などに意見書を提出しているところもあるほどです。

教育委員会による調査や通知

各地の教育委員会は、文科省からの連絡を受けて校則の見直しに関する状況調査を実施しています。

状況を調べた後通知を行ない、校則の実態について把握しようという動きが出ているのです。

文科省は生徒指導提要の改訂を検討

校則の制定をはじめ学校教育に関する指針がまとめられている生徒指導提要の改訂も、文科省によって行なわれる予定です。

校則の内容や見直しに関する部分も具体的に示されるようになっており、ブラック校則と向き合う機会となるでしょう。

生徒と学校、双方のためブラック校則の在り方について検討することが大事

生徒と学校、双方のためブラック校則の在り方について検討することが大事

ブラック校則は、生徒にとって精神的苦痛を与えると同時に、返って日ごろの行ないに悪影響を及ぼすことが考えられます。

しかし学校側としては、生徒に清く正しく学校生活を送ってもらいたいという思いがあることも理解できます。

そのようななか、ブラック校則は法的な問題に発展する可能性もある部分であり、学校側の慎重な対応が求められます。

生徒と保護者が安心して入学できる学校を目指すためにも、ブラック校則の在り方について検討してみましょう。

ブラック校則に関するトラブルのことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を

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この記事の監修者

大阪市の弁護士「阪倉篤史」

阪倉 篤史 弁護士

大阪市にある西横堀総合法律事務所、代表弁護士の阪倉 篤史です。
「日本一話しやすい弁護士」を目指して、日々研鑽に努めております。
ブラック校則に関することなら、どうぞお気軽にご相談ください。