「交通事故により下半身不随となってしまい仕事を続けられなくなった」
「交通事故で下半身不随になった今では家族の手助けも必要になり、今後どのように生活していけば良いかわからない」
突然の交通事故により下半身不随になると、痛みだけでなく思うように身体を動かせなくなったという不自由さ、この先の自身の人生について考えることになります。
人によってはこれまで続けてきた仕事ができなくなることもあるでしょう。
家族にとってもこれまでの生活が一変し、介護をすることになる場合もあります。
このように交通事故で下半身不随の状態に陥ってしまったときは、然るべき慰謝料を受けることが重要となります。
ここでは、下半身不随により受け取れる慰謝料の相場や後遺障害等級認定について、詳しく解説します。
Contents
下半身不随とは?原因や症状について
いつ自身が被害に遭うかわからない交通事故は、どのような怪我を負うことになるかも想定できません。
擦り傷などの軽い怪我から骨折や足の切断、脊髄の損傷など、事故の状況によって怪我の状態も異なります。
今回は、事故後の日常生活に大きな支障をきたすことになる脊髄損傷による下半身不随について、そして下半身不随に関する後遺障害等級の基準や慰謝料などについて解説します。
下半身不随とは
下半身不随とは、交通事故などによる外部からの衝撃によって股関節よりも下の部分が麻痺してしまった状態を指します。
下半身不随にも種類があり、状況によって呼び方が異なります。
名称 | 状態 |
---|---|
単麻痺 | 片足が麻痺した状態 |
対麻痺 | 両足が麻痺した状態 |
下半身不随ではただ足が麻痺するだけでなく、その他の身体の機能にも影響を及ぼすことがあります。
以下に記載する、下半身不随による症状をご覧ください。
交通事故により下半身不随になる原因
下半身不随となる状況として、交通事故のどのような衝撃により不随となってしまうのでしょうか?
下半身不随になる原因について見てみましょう。
脊髄損傷
交通事故で強い衝撃を受けた場合、脳から背骨までを通っている神経組織が損傷して脊髄損傷の状態になります。
胸髄や腰髄を損傷したことにより下半身不随になるというケースが多いですが、損傷の程度によって現れる症状が異なるところも特徴です。
脊髄損傷に関しては、病院でのMRIやCT検査などで脊髄の損傷が明らかにならない場合があります。
脳損傷
交通事故で頭に強い衝撃が加わり頭蓋骨を骨折したことなどにより、脳が損傷してしまうことがあります。
脳が損傷すれば外傷性くも膜下出血や脳挫傷を引き起こすことがあり、その結果下半身に麻痺が生じて不随となることがあるのです。
下半身不随による症状
下半身不随と一言で言っても、事故の状況などにより現れる症状には人それぞれ違いがあります。
単麻痺と対麻痺の2つがあると解説しましたが、下半身不随では日常生活において以下のような症状が出てくることがあります。
- 麻痺している部分の下肢を動かすことができない、動かしにくい
- 麻痺している部分の下肢の感覚がない、鈍くなっている
- 麻痺している部分の下肢の筋力が低下している、失われている
- 下半身だけでなく腸や膀胱の機能にも影響が及ぶ
下半身不随が単麻痺であっても対麻痺であっても、日常生活に大きな支障をきたすことには変わりありません。
生活の中で欠かせない歩行が困難になる可能性があるため、自身で自由に身体を動かすことができなくなってしまうのです。
自分一人では動けないことから、家族の介護も必要となります。
外出の際の送迎だけでなく、家の中での移動の際にも家族がつきっきりで手助けしなければならなくなることもあるでしょう。
被害者だけでなく家族にとっても生活が一変することになり、今後の生活を少しでも保障してもらうためには適切な賠償金を受け取ることが必要になってきます。
下半身不随の治癒の可能性とは
下半身不随の治療は、1週間程度で症状が改善している場合は回復が期待できるでしょう。
その後、数ヵ月から1年ほどの期間をかけて完治するというケースもあります。
損傷が軽度である、被害者の年齢が若く回復が早いといった状況から、完治することもありえます。
しかし、回復するまでの期間には個人差があり、リハビリに苦痛を伴うこともあります。
治療を開始してから半年以上経過しても症状が改善しないという場合は、完全回復は難しいと考え、後遺障害等級の認定について検討を始めましょう。
交通事故で下半身不随になったときの後遺障害等級と慰謝料相場
交通事故により下半身不随となってしまった場合、適切に後遺障害等級の認定を受け、賠償金を支払ってもらうことが必要になります。
ここでは、請求できる慰謝料や賠償金の種類と後遺障害等級について詳しく見ていきます。
交通事故による下半身不随で請求できる慰謝料の種類
交通事故の衝撃や怪我により下半身不随となったとき、まずはどのような慰謝料や賠償金を請求できるのか確認しておくことが大切です。
下半身不随により請求できる慰謝料・賠償金は以下の通りです。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 器具などの購入費
- 将来の介護費
- 将来の生活にかかる雑費
- 家や車などの改造費
もう少し詳しく、それぞれの項目について内容を確認していきましょう。
入通院慰謝料
入通院の期間に応じて支払われる慰謝料です。
怪我の程度や入通院期間の長さによって慰謝料が変わります。
相場は、通院1日あたり2,000円~9,000円程度、入院1日あたり7,000円~17,000円程度となっています。
後遺障害慰謝料
自賠責保険会社や裁判所にて後遺障害等級が認められたときに支払われる慰謝料です。
どの等級に認定されるかによって慰謝料の額が異なり、相場は200万円台~2,000万円台となる場合が多いです。
後遺障害逸失利益
交通事故で下半身不随にならなければ得られたであろう本来の利益のことを指します。
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算定されます。
1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
器具などの購入費
下半身不随により車椅子が必要になったといったときに、実費分を請求可能です。
将来の介護費
下半身不随によって自身だけでの生活が難しくなり家族の介護が必要になった場合、1日につき8,000円が支払われるようになっています。
将来の生活にかかる雑費
介護用品を購入する必要が出てきた場合、実費分を請求することができます。
家や車などの改造費
下半身不随の状況にとって、自宅を大きく改造しなければならなくなったとき、車の改造が必要になったときにかかった費用を請求することができます。
下半身不随による後遺障害等級と慰謝料
請求できる慰謝料や賠償金の種類を押さえたところで、次に下半身不随による後遺障害等級について詳しく見ていきましょう。
最初に、下半身不随の状況によってどの等級に認定されるのかを見ていきます。
【合わせて読みたい記事】
麻痺の程度 | 後遺障害等級 |
---|---|
片足に高度の麻痺 | 5級2号 |
片足に中程度の麻痺 | 7級4号 |
片足に軽度の麻痺 | 9級10号 |
軽微な麻痺 | 12級13号 |
両足に高度の麻痺(中程度の麻痺であっても食事や入浴などに常に介護が必要) | 1級1号 |
両足に中程度の麻痺(食事や入浴などにおいて随時介護が必要 | 2級1号 |
両足に中程度の麻痺 | 3級3号 |
両足に軽度の麻痺 | 5級2号 |
両足に軽微な麻痺 | 12級13号 |
続いて、等級ごとの内容と慰謝料も記載していきます。
下半身不随の状態を確認の上、等級ごとの詳細を見ていきましょう。
後遺障害等級 | 概要 |
---|---|
第1級1号 | 神経や精神に著しい障害が残り、常に介護が必要となる |
第2級1号 | 神経や精神に著しい障害が残り、随時介護が必要となる |
第3級3号 | 神経や精神に著しい障害が残り、終身仕事に就くことができない |
第5級2号 | 神経や精神に著しい障害が残り、特に軽易な仕事以外に就くことができない |
第7級4号 | 神経や精神に障害が残り、軽易な仕事以外に就くことができない |
第9級10号 | 神経や精神に障害が残り、就ける仕事が相当な程度に制限される |
第12級13号 | 局部に強い神経症状を残すもの |
続いて、等級ごとに請求できる慰謝料について順にご紹介します。
慰謝料は、自賠責基準か任意保険基準、裁判基準によって額面に違いがあります。
今回は、請求できる額が最も大きくなる裁判基準にて慰謝料をまとめました。
後遺障害等級 | 慰謝料(裁判基準) |
---|---|
第1級1号 | 2,800万円 |
第2級1号 | 2,370万円 |
第3級3号 | 1,990万円 |
第5級2号 | 1,400万円 |
第7級4号 | 1,000万円 |
第9級10号 | 690万円 |
第12級13号 | 290万円 |
認められる後遺障害等級によって慰謝料が大きく異なることがわかります。
下半身不随の状態により一変してしまった生活を少しでも落ち着かせることができるよう、適切な額の慰謝料を受けられるようにすべきです。
参照:厚生省 障害等級表
下半身不随で後遺障害等級が認定されるまでの流れ
下半身不随による後遺障害等級を正しく認定してもらうためには、具体的な流れや必要書類などを確認しておくことが大切です。
後遺障害等級が認定されるまでには時間と労力がかかるものですが、正しく認定されるためには必要なこととなります。
一つずつ確認して、納得のいく後遺障害等級が認められるようにしましょう。
自賠責保険会社に被害者請求を行なう
最初に、被害者請求を行ないます。
被害者請求とは、加害者側の自賠責保険会社に対して被害者が慰謝料を請求することです。
自賠責保険会社に連絡をした後に必要書類を送ってもらうことになります。
一方、以下の書類については自身で用意しなければならないので注意しましょう。
- 交通事故証明書
- 医師の診断書
- 診療報酬明細書
- 休業損害証明書
- 源泉徴収票など収入が分かる書類
- 印鑑証明書
必要書類は自賠責保険会社に届くだけでなく、損害保険料率算出機構にも提出されます。
その結果、後遺障害の等級が確定するという流れです。
自身で記入する書類に関しては、しっかりと後遺障害による症状が伝わるよう細かく記載することが重要です。
任意保険会社に事前認定を申請する
加害者側の任意保険会社に後遺障害等級の認定を申請する、事前認定という方法もあります。
後遺障害等級認定の際に必要な書類を自身で揃えることができないときは、この方法で必要書類を手に入れることが可能です。
ただし、任意保険会社から送付される必要書類には、保険会社側の書式に合わせて記入をしなければなりません。
その結果、下半身不随であるという状態を正確に伝えられない可能性が出てくるため注意しましょう。
補足資料を添付するなどしても任意保険会社に認められないことがあるため、適正に等級を認定されないリスクがあることを覚えておきましょう。
より適正な等級を認めてもらうためには、以下でご紹介するポイントを押さえた上で対応してみてください。
後遺障害等級で適切な慰謝料を受け取るためのポイント
交通事故で下半身不随となった場合、状況に合った後遺障害等級を認められるかどうかによって、その後の生活が変わってきます。
後遺障害等級で適切な慰謝料を受け取れるよう、次の4つのポイントを押さえておきましょう。
適切な治療を受ける
交通事故で下半身不随になってしまったとき、脳や脊髄が損傷していることで片足または両足に麻痺が生じている恐れがあります。
そこで、下半身不随となった原因を特定するために、病院での適切な治療を受けるようにしましょう。
MRIやCT、レントゲンなどの検査を行ない、下半身不随の原因を突き止めることが重要です。
その後、主治医の判断のもとリハビリや投薬などの治療を始めることになります。
下半身不随による麻痺を少しでも改善していくだけでなく、適宜病院に通って治療を受けることで慰謝料の増額が期待できます。
最も高額となる弁護士基準の慰謝料に関しては通院期間をもとに算定していきます。
身体の状態を改善していくため、また慰謝料増額のためにも治療を続けるようにしましょう。
適切に後遺障害等級を認定してもらう
下半身不随による不調で病院での治療を続けていくなか、後遺障害等級を正しく認定してもらうことが重要となります。
認められる等級によって慰謝料の金額が大きく異なるので、適切な後遺障害等級を得るために行動していきたいです。
事故の状況、自身の身体の状態、医師の診断などから、後遺障害等級が決定します。
後遺障害等級に合わせて適切な金額を算定する
後遺障害等級が認定された次に、適切な慰謝料を受け取りましょう。
弁護士が関わるかどうかによって慰謝料の額が変わってくるので、適切な慰謝料を支払ってもらうためにも基準ごとの額面を把握しておきましょう。
弁護士基準かそうでないかにより、どの等級においても金額の差は大きくなります。
数百万円から1,000万円ほど差が出てくるので、より納得のいく慰謝料を受け取るためには弁護士基準での算定がおすすめです。
交通事故に詳しい弁護士に相談する
交通事故の加害者が示談で解決しようとしてくる、認定された後遺障害等級の結果に納得ができないというときは、交通事故や法律に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談するにあたって、被害者としては以下の点に注意しておくと良いです。
- できる限りの範囲で治療やリハビリを続ける
- 相手方の保険会社と慰謝料などに関する交渉を行なう
- 適切な後遺障害等級を受ける
下半身不随になってしまった被害者やその家族は、病院への通院や生活の介助などに追われる日々となります。
そのようなときに示談や後遺障害等級の認定に関して自身ですべて行なうというのは、大変な労力を伴います。
そのようなとき、弁護士であれば相手方の保険会社とやり取りを行ない、必要書類を揃えるといった対応が可能です。
被害者はリハビリや通院に専念することができ、適切な賠償金を受け取ることができるのです。
下半身不随など脊髄に損傷を負った場合に気を付けたいこと
脊髄を損傷すると、下半身不随の他日常生活に支障をきたすことや、身体の不調に悩まされることがあります。
今までのように生活ができなくなったけれど慰謝料の受け取りまでにはしばらく時間がかかる・・・ということも起こり得ます。
そのようなときは、以下の点を知ってから過ごすようにしたいです。
慰謝料を受け取れるまでは各種保険を利用する
交通事故により発生した治療費や休業損害については、原則として示談が成立して初めて支払われるものです。
一方で、症状が重く仕事ができないという場合は経済的に困窮してしまいます。
そのような場合は、各種保険を活用して生活費に充てられるようにすると良いです。
- 被害者が加入する任意保険
- 被害者が加入する労災保険
- 加害者が加入する自賠責保険
既往症の有無によって素因減額に気を付ける
素因減額とは、被害者の事情により事故の被害が拡大したとき、その程度に応じて損害賠償金を減額することです。
下半身不随であれば、事故に遭う前に脊髄の周辺に関する既往症を持っていた場合、加害者側から素因減額を主張されて減額されることがあります。
特に事故の被害者が中高年であると、事故による影響かどうか考えるとき、本来患っていた病気や症状によるものだと主張される可能性が高いので気を付けましょう。
一方で、加害者側が必要以上に素因減額を主張していることもあるので、しっかり見極めていかなければなりません。
交通事故による下半身不随の後遺障害等級でお困りの場合は弁護士にご相談ください
交通事故によりある日突然下半身不随になると、今までできていたことができなくなり、自身で身体を動かすことが困難になります。
家族の手助けが必要となり、仕事も続けられなくなる可能性が高いです。
今後どのように生活していけば良いのかわからないというときに自身の生活を助けてくれるものが慰謝料です。
弁護士に相談することで、最も高い弁護士基準の慰謝料を受け取れる可能性が高まるため、適切な後遺障害等級のもと納得のいく金額を受け取れるようにしましょう。
交通事故に詳しい弁護士であれば、必要な書類の手続きから示談など幅広く対応してくれます。
交通事故案件の実績が豊富な弁護士が真摯に対応するため、一度ご相談ください。
交通事故による下半身不随の慰謝料に関するトラブルのことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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