児童虐待への対応は「疑わしくは保護」という姿勢で臨むことが求められています。なぜなら、児童虐待は、家庭という外部の目に触れないところで行われるのが一般だからです。児童虐待防止法も、通告対象者を「虐待を受けたと思われる児童」と規定しているのはそのためです。
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児童虐待への法的対応
児童虐待への法的対応として、民事的な対応と刑事的な対応があります。
民事的対応
民事的な対応から説明していきます。
親は子どもに対して親権をもちます。親権は、懲戒権(民法822条)など、親権者の権利でもあり、子どもの監護や教育を行う義務でもあります(民法820条)。児童虐待にあたるケースは、親権あるいは懲戒権の濫用、いわばやりすぎだというケースです。
児童虐待防止法では、「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。」(同法14条)と規定しています。また、改正により令和2年4月1日から施行される児童虐待防止法には、「児童のしつけに際して、体罰を加えることその他・・監護及び教育に必要な 範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならないこと」が明記されます。
児童虐待をした親権者は、親権の制限を受ける可能性があります。親権の喪失(民法834条)のほか親権を一定期間停止されることもあります(民法834条の2)。また、児童虐待自体が子どもへの不法行為として、損害賠償請求を受けることもあります(民法709条)。
刑事的対応
次に刑事的な対応を説明します。
刑事事件では「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」という原則があります。「疑わしきは保護を」とする行政対応とは大きくことなります。
したがって、行政上、児童虐待とされるケースも、刑事上、それが罪にあたらない場合、刑事的な対応がとられない場合もあります。
刑事的な対応がとられた場合には、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(204条)など各種刑事上の規定が適用されます(児童虐待防止法14条2項)。