いつ起きるかわからない交通事故、そのなかでもひき逃げ事故により被害者が受ける損害はとても大きいです。
加害者の特定が難しい場合もあるので、損害賠償請求がスムーズに進められないことも想定されます。
ひき逃げ事故による被害者とその家族の思いをくみ取りながら、事故後の対処法についての知識を得ておきましょう。
Contents
ひき逃げ事故とは?発生する理由について
最初に、ひき逃げ事故とはどのような事故なのか、なぜ発生するのか、詳しく見ていきます。
ひき逃げ事故とは
交通事故のなかでも、ひき逃げ事故は近年増えています。
加害者が被害者に対して怪我や死亡などの損害を与えておきながら、被害者を守ることなくその場を去るというのがひき逃げ事故です。
交通事故が起きたとき、加害者はその場にとどまる必要があります。
被害者の救護を行ない、警察に報告する義務が道路交通法においても定められています。
道路交通法において義務が定められているものの、加害者のなかには事故後そのまま逃走する事例が増えているのです。
ひき逃げ事故においては、被害者が加害者を特定できないという点から損害賠償請求を行なうのが難しいとされています。
被害者にとって大きな損害となり、事故の状態によってはひき逃げされたことで命を落とすケースもあります。
ひき逃げ事故は事故の内容を特定することが難しく、被害者にとっては大きな損害となるのです。
ひき逃げ事故が発生する理由
ひき逃げ事故による被害者は、怪我の状況によっては命に関わる場合があります。
身体に大きな衝撃が加わり、発見されるまでに時間がかかった際には死亡する恐れもあります。
では、なぜひき逃げ事故は発生するのでしょうか?
ひき逃げ事故が発生する理由については、以下のような加害者の思いや行動による影響が大きいです。
- 加害者が恐ろしさを感じて逃げてしまう
- 罪の重さから逃れようとする
- 免許の点数が上がり、免許停止になる恐れが嫌で逃げる
- 飲酒が原因の場合、お酒の影響がなくなるまで待とうとする
- 気づかずに走り去る
加害者の運転状況や事故が起きるまでの過ごし方などによっても、ひき逃げ事故が起きる理由は様々であることがわかります。
ひき逃げ事故の検挙率
ひき逃げ事故は加害者が逃げ去ってしまうため特定するのが難しいように思われます。
そのようななかでも最近ではひき逃げ事故の検挙率が高くなっており、その数字は全体では70%、死亡事故に至っては90%にもなっています。
防犯カメラやドライブレコーダーの普及も手伝い、警察が速やかに動き、捜査を開始してくれることから検挙率も高くなっているといえます。
ひき逃げ事故は加害者が逃げてしまうから仕方ないとあきらめるのではなく、警察に通報し、事件として適切に対処することが大切なのです。
ひき逃げ事故で成立する犯罪とは
ひき逃げ事故では、その状況に応じて成立する犯罪が異なります。
どのような犯罪が成立するのか見てみましょう。
道路交通法違反
被害者の救護義務違反、危険防止措置義務違反が成立し、5年以下の懲役または50万円いかの罰金となる場合があります。
運転者の運転により起きた事故であれば、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
自動車運転処罰法違反
過失運転致死傷罪となると、7年以下の懲役もしくは禁固、または100万円いかの罰金刑が科されます。
事故の内容がより危険な危険運転致死傷罪となった場合は、傷害事故で15年以下の懲役、死亡事故で1年以上20年以下の懲役刑となります。
ひき逃げ事故の被害者がすべき事故後の対処法
ひき逃げ事故に遭った場合に被害者は何をすべきなのか、事故後の対処法について詳しく解説します。
加害者の車の情報を確認する
ひき逃げ事故に遭ったときは、まず相手方の車の確認をしましょう。
ひき逃げ事故においては、加害者が判明しているかどうかによってその後の対応が大きく変わってくるためです。
加害者情報が明確にわかっている場合は、手続きを進めて損害に対しての賠償金を支払ってもらうことができます。
一方、加害者が不明であるときは、ひき逃げした車の特徴を確認しておくことが必要です。
被害者のできる範囲で、車の色や車種、ナンバー、特徴などを覚えて書き留めておきましょう。
すぐにスマートフォンを取り出せるようであれば、車の写真を撮っておく方法も有効です。
また、ひき逃げ事故の現場近くに防犯カメラや監視カメラがある場合、カメラの管理者に連絡をして映像を見せてもらいましょう。
その後、警察が映像を細かく調べていくなかで、加害者が誰なのか特定できる可能性があります。
できる限り早く相手方の車を特定できるよう、車の情報を集めておきましょう。
目撃者の確保
たまたま事故現場にいた目撃者は被害者である自身が気づかなかったことや見えなかったことなどについて、情報を得ている可能性があります。
目撃者がいる場合は名前と連絡先を尋ねておき、事故に関して情報が必要になったときに助けてもらいましょう。
防犯カメラや監視カメラ、ドライブレコーダーの確認も有効
防犯カメラや監視カメラでも事故の状況を特定できる他、事故を起こした車の前後に走っていた車のドライブレコーダーにも事故の記録が残っているかもしれません。
事故当時、近くを走っていた車のナンバーを控えておくことも目撃者の確保になり、事故解決に近づくことができます。
動画データ所有者と連絡を取り、事故時の状況を細かく確認して陳述書を書いておくと良いでしょう。
供述内容を書面にまとめて本人に署名押印してもらうのが陳述書であり、加害者との示談や裁判の際に役立てることができます。
警察を呼ぶ
ひき逃げ事故に遭い、とっさに加害者の車の特徴を確認するところまでが完了したら、警察を呼びましょう。
交通事故証明書を発行してもらうためには、警察に報告しないといけません。
加害者に対して損害賠償や保険金の請求を行なう際に必要となるのが、交通事故証明書です。
ひき逃げ事故の状況によっては、たいした怪我ではないから・・・と感じてしまうことがあるかもしれませんが、事故の大小に関わらず必ず警察に通報するようにしましょう。
警察が来たあとは、事故現場で実況見分が行なわれます。
ひき逃げ事故では被害者のみが立ち会うこととなり、目撃者がいた場合は状況を尋ねながら進めていきます。
警察が来て実況見分が終了すると帰宅できるという流れです。
すぐに病院に向かう
ひき逃げ事故に遭った場合は、すぐに病院に行くようにします。
事故の瞬間は何が起きたか理解できず、神経は興奮状態に陥っているでしょう。
怪我をしていても痛みを感じにくくなっている場合があるので、すぐに病院に行って診てもらいましょう。
傷を負うような怪我だけでなく、後頭部への衝撃による脳の機能障害はしばらくしてから症状が現れることがあります。
その場合、事故後すぐに病院に行っておかないと、後日事故との関連性が認められず賠償を受けられなくなるケースがあるので注意しましょう。
交通事故証明書を取得する
ひき逃げ事故後は速やかに警察を呼び、交通事故証明書を発行してもらうことが大切と述べました。
事故証明書は、前述した通り、相手方の保険会社に保険金の請求を行なうときや国からの給付金(政府保障事業の補填金)を申請するときに必要となります。
交通事故証明書は、自動車安全運転センターにて郵便振替やウェブから申請することができます。
人身事故の場合は事故発生から5年間、物件事故の場合は事故発生から3年間取得することが可能です。
事故があったことを証明する大事な書類となるため、必ず用意しておきましょう。
被害届を提出する
ひき逃げ事故に遭った被害者が被害届を提出すると、捜査のきっかけとなり、加害者は後日逮捕される可能性があります。
被害届を提出することで一つの事件と認知してもらうことができ、より詳しく事故現場の捜査や聞き込みなどが行なわれるようになるのです。
その結果、証拠を多く揃えることができ、早い段階で加害者が特定できます。
ひき逃げ事故において加害者が不明であるとき被害者が利用できる保険一覧
ひき逃げ事故は、加害者が不明なまま月日が経過することがあります。
そのようなときでも、被害者が利用できる保険が存在します。
ここでは、具体的な保険の種類を紹介しますので、自身が加入している保険に該当しているものがないか確認してみましょう。
人身傷害保険
人身傷害保険とは、運転する人や家族などが事故に遭って死傷した場合に受け取ることができる保険です。
保険会社によって名称が異なるため、人身傷害補償保険や人身傷害補償特約と呼ばれることもあります。
保険内容や利用できるケースは自動車保険によって異なるものの、保険金額を上限として実損額が補償されることが一般的です。
ひき逃げ事故に遭った場合は、自身が加入している自動車保険の内容を確認して、人身傷害保険に加入しているかを調べてみましょう。
無保険車傷害保険
事故の加害者が自動車保険に加入していないときや、加入していても補償内容が十分ではないときに利用できるのが無保険車傷害保険です。
無保険車傷害保険では、ひき逃げ事故で加害者が明らかになっていないときにも適用されます。
補償の対象は、主に運転する人とその配偶者、同居の家族などの同乗者です。
無保険車傷害保険は、被害者が事故で死亡、後遺障害を負ったなどの場合にのみ受けられるようになっているため、事故による怪我では補償を受けられない点に注意しましょう。
車両保険
ひき逃げ事故で自身の車に損害が発生したとき、車両保険に加入していることで車両の損害に対して補償を受けることができます。
ただし、車両保険を利用することで次年度の保険料が上がってしまう恐れがあるので、事前に保険会社に問い合わせておきましょう。
ひき逃げの加害者が不明な場合は国の保障事業へ請求ができる
ひき逃げした相手が不明である場合は、保険会社から損害賠償を受け取ることができません。
そのようなときに受けられるのが、政府保障事業です。
加害者が不明である、また自身が自動車保険に加入していないという場合において利用できる制度です。
ここでは、政府保障事業について詳しく説明します。
政府保障事業とは
政府保障事業とは、国が実施している交通事故被害者の救済制度です。
ひき逃げ事故に関しては相手が不明であることから自賠責保険へ請求することができません。
そのような被害者のために国が用意したものが、政府保障事業です。
政府保障事業を利用することで、国から最低限の補償を受けることができます。
自賠責保険と同じ支払い基準や額面にて対応されるようになっており、相手が不明な場合のひき逃げ事故において補償が整えられているのです。
政府保障事業の補償内容について
政府保障事業は、ひき逃げ事故以外の自賠責保険から支払いが受けられないケースにおいても利用することが可能です。
では、その補償内容についてはどのような内容になっているのでしょうか。
政府保障事業は、被害者に対して最低限度の補償を行なうことになっているため、その内容も小さくなっているのが特徴です。
~補償内容一覧~
- 人身傷害事故の限度額は120万円
- 物損事故は対象外
- 後遺障害が残った場合は等級によって限度額が異なる(14級75万円~要介護の1級4,000万円まで)
- 死亡事故の場合は限度額が3,000万円
政府保障事業を利用する方法
ひき逃げ事故で加害者が不明なとき、政府保障事業を利用することで幾分かの補償を受けることができます。
そこで、利用方法についての手順も細かく確認しておきましょう。
- 近くの保険会社に行き、申請用紙一式をもらう
- 必要書類を集めて記入を行ない、保険会社の窓口に提出する
- 損害保険料率算定機構による審査の結果が保険会社に通知される
- 保険会社が審査結果を国土交通省に送る
- 国土交通省が填補額を決定し、保険会社に通知する
- 保険会社が通知を受けた金額を被害者に支払う
審査に通過できるよう、必要な書類は正確に記入しておくことが大切です。
そこで、必要書類についてどのようなものを用意しなければならないのか見てみましょう。
政府保障事業を利用する際に必要な書類
- 政府保障事業宛ての損害の填補請求書
- 請求者本人の印鑑登録証明書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 診断書
- 後遺障害診断書
- 死体検案書または死亡診断書
- 診療報酬明細書
- 通院交通費明細書
- 健康保険などの被保険者証
- 戸籍謄本
- 休業損害証明書
- 損害を証明できる書類や領収書など
- 振込依頼書
政府保障事業の利用期限について
政府保障事業の利用を検討するとき、期限が決められていることも念頭に置いておく必要があります。
平成22年を境に、政府保障事業を利用できる期間が変更となっているため以下を参考にしてみてください。
平成22年4月1日以降の事故の場合
事故内容 | 政府保障事業を利用可能期間 |
---|---|
人身傷害事故 | 交通事故の発生日から3年以内 |
人身傷害事故で後遺障害が残った | 症状固定日から3年以内 |
人身死亡事故の場合 | 死亡日から3年以内 |
平成22年3月31日までに発生した事故の場合
事故内容 | 政府保障事業を利用可能期間 |
---|---|
人身傷害事故 | 交通事故の発生日から2年以内 |
人身傷害事故で後遺障害が残った | 症状固定日から2年以内 |
人身死亡事故の場合 | 死亡日から2年以内 |
ひき逃げ事故の被害に遭ったら弁護士に任せた方が良い理由
ひき逃げ事故は、被害者の心身に大きな損害を残す可能性があります。
さらに、加害者が判明していない、適切に補償してもらうために何からすべきなのか混乱する事態も起こり得ます。
そのようなときは、少しでも早く事故を解決できるよう弁護士に任せると安心です。
ここでは、ひき逃げ事故の被害に遭ったとき弁護士に任せた方が良い理由について解説します。
調査を続けて加害者が誰であるかが判明した場合は、次のように対処しましょう。
警察署に同行して被害届や告訴状を提出してくれる
ひき逃げ事故を解決するため、加害者に罪を償ってもらうためには警察に然るべき書類を提出することが必要です。
事故により大きな損害を被ったという点を訴えるため、弁護士に同行してもらって被害届や告訴状を提出しましょう。
告訴状を受理すると、警察は捜査に取り掛かるしかありません。
被害者一人ではなく弁護士に同行してもらえるという点において、緊張することなく冷静に事故の重大さを警察に訴えることができるでしょう。
法律に詳しい弁護士に告訴状を作成してもらうことで、高い確率で受理してもらえるという点もポイントとなります。
保険会社との示談交渉を行なう
ひき逃げ事故も他の事故同様、相手方の保険会社と示談交渉を行なう流れになることがあります。
示談交渉を行なう相手方である保険会社は、日々交通事故の処理を行なっているプロです。
対して被害者はというと、交通事故で示談交渉を行なうのが初めてという人が多いでしょう。
これでは、保険会社に不利な条件を押し付けられる可能性が高いです。
そのようなとき、頼りになるのが弁護士です。
法的な知識をもって保険会社と示談交渉を行なうため、被害者にとって納得のいく話し合いを進めることができます。
損害賠償金に関しても、裁判基準となる高額な基準をもって示すことが可能です。
相手方の保険会社と示談を行なうことになった場合は、速やかに弁護士に相談するのが良いでしょう。
加害者本人と示談交渉を行なうときも弁護士に任せられる
交通事故の示談交渉は、相手が保険会社だけとは限りません。
加害者本人と被害者とが、示談交渉を行なうというケースもあります。
ひき逃げ事故を起こすような加害者であるという点からモラルに欠け、思うように話が進まない可能性が考えられます。
加害者本人との示談交渉がうまくいっていないときも、弁護士に相談することが可能です。
加害者に対して内容証明郵便で請求書を送るなどの方法を取り、加害者が話し合いに応じるよう促してくれます。
事故の状況に応じた賠償額の請求も行なうことができるため、心強いです。
加害者を刑事告訴する場合にも弁護士に相談できる
ひき逃げ事故で加害者が特定できたとき、罪を償ってもらう必要があります。
このとき被害者としては、加害者に罪の重さを受け止めてもらいたいと考えるでしょう。
交通事故では刑事告訴することができ、被害者が事故で辛い思いをしたという事実を真剣に訴えることができます。
捜査機関に申告をして、加害者の犯罪事実を明確にするためのものが刑事告訴です。
刑事告訴では、相手が不起訴になる可能性は低く、相手により重い刑罰が適用される確率が高まります。
刑事告訴は、担当検事に連絡をしたり検察審査会へ申し立てを行なうなど、手続きが必要です。
そのようなときに法律に詳しい弁護士であれば、スムーズに手続きを進めることができます。
弁護士に相談することで、実況見分調書の取り寄せや裁判への出廷、意見陳述の際の方法など全面的にサポートしてくれます。
ひき逃げ事故で被害を受けたら弁護士にご相談を
ひき逃げ事故は、重傷を負う、死亡してしまうなど、事故の状況によって大きな損害を被る可能性があります。
さらに加害者の特定が難しいという点も問題です。
被害者が事故後の生活を安心して送れるよう、弁護士への相談をはじめとした保険の利用や政府保障事業の利用を検討してみてください。
弁護士は示談交渉にも真剣に対応してくれます。
加害者と話をする自信がない、身体が辛いというときにも、弁護士は頼りになります。
ひき逃げ事故で被害を受けた際は、弁護士に相談をしてスムーズに解決できるようにしましょう。
当事務所の交通事故サポート
ひき逃げの被害者になってしまったときは大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
- 西横堀総合法律事務所
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