私たちの身体には関節があり、動かせる範囲が決まっています。
しかし、交通事故による衝撃や怪我などによって、関節が思うように動かなくなってしまうことがあります。
腕や脚といった部位の関節可動域が制限されることで、日常生活にも支障が出ます。
今回は、交通事故によって生じる恐れのある可動域制限について、そして後遺障害となる場合について詳しく解説しましょう。
Contents
交通事故によって関節が動かしにくくなる可動域制限とは?
可動域制限、言葉から考えると動かせる範囲が限られてしまう、そのように捉えることができます。
この可動域制限は、交通事故のときに受けた衝撃によって起きる場合があり、後遺障害となる恐れもある症状の一つです。
さっそく、可動域制限について詳しく見ていきましょう。
可動域制限とは
可動域制限とは、交通事故などによって腕や脚の関節の動かせる範囲が限られてしまうというものです。
突然の衝撃が襲ってくる交通事故、骨が変形してしまうときもあります。
その結果、肘が曲がらない、脚を思うように動かせないといった症状が残ってしまうことがあり、これを交通事故による可動域制限といいます。
可動域制限として認められるのは、肩や腕、手首または股関節、膝、足首の関節が健常な人に比べて動かないといった状態を指しています。
手指や足指といった部位も含まれ、その程度に応じて後遺障害の等級も変わってくるのが特徴です。
さらに、可動域制限には程度があり、軽いものから重いものまでがあるのも事実です。
次の項目にて、可動域制限の程度について詳しく解説します。
可動域制限の程度について
可動域制限には程度があり、それに伴ってのちに紹介する後遺障害の認定等級も変わってきます。
可動域制限の恐れがある場合は、まずはその程度について確認することから始めましょう。
関節の用を廃した状態
可動域制限のなかでは、最も重い状態を指します。
関節が全く動かない、またはほとんど動かないといった状態になります。
その基準は、健康的な人と比べて可動域が10%以下になっている場合、または動く角度が10度以下である場合となっています。
関節として機能することが難しい、日常生活に大きな支障が出る程度が、関節の用を廃した状態です。
著しい機能障害
著しい機能障害については、腕や脚といった部位の可動域が健康的な人に比べて2分の1以下になってしまっている状態を指します。
可動域制限のなかでは最も重いものと軽いものとのちょうど中間にあたります。
機能障害
可動域制限のなかでは、最も軽い状態を指すのが機能障害です。
腕や脚などの関節の可動域が、健康的な人と比べたときに4分の3以下になっている場合を指しています。
可動域制限に関する後遺障害の等級とは
可動域制限は、交通事故によってどの程度が残ってしまうかわかりません。
後遺障害として残った際は、きちんと等級を認定してもらうことが大切です。
ここでは、可動域制限に関する後遺障害の等級について、身体の部位ごとに見ていきます。
上肢の可動域制限が後遺障害となった場合の等級
可動域制限が上肢に残った場合、後遺障害の等級はどのように認定されるのかを見てみましょう。
上肢とは、肩、腕、手首の3大関節を指しており、これらの部位にどれだけ障害が残ったかを確認し、等級を決定します。
後遺障害等級 | 上肢の可動域制限 |
---|---|
第1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの |
第5級6号 | 片方の上肢の用を全廃したもの |
第6級6号 | 片方の上肢の3大関節のうち、2関節の用を全廃したもの |
第8級6号 | 片方の上肢の3大関節のうち、1関節の用を全廃したもの |
第10級10号 | 片方の上肢の3大関節のうち、1関節の機能に著しい障害が残る |
第12級6号 | 片方の上肢の3大関節のうち、1関節の機能に障害が残る |
下肢の可動域制限が後遺障害となった場合の等級
続いて、下肢の可動域制限が後遺障害となった場合の等級について順に見ていきます。
上肢と同じように等級が分けられているのが特徴です。
また、下肢の可動域制限というとき、股関節、膝、足首の3つの関節のことを指しています。
後遺障害等級 | 下肢の可動域制限 |
---|---|
第1級6号 | 両方の下肢の用を全廃したもの |
第5級7号 | 片方の下肢の用を全廃したもの |
第6級7号 | 片方の下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの |
第8級7号 | 片方の下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの |
第10級11号 | 片方の下肢の3大関節のうち、1関節の機能に著しい障害が残る |
第12級7号 | 片方の下肢の3大関節のうち、1関節の機能に障害が残る |
手指、足指の可動域制限による後遺障害の等級
最後に、手指・足指といった部位の可動域制限による後遺障害の等級について解説します。
手指の後遺障害については、等級が3~14級に分類されています。
両手または片方の手指か、具体的にはどの指に後遺障害があるか等から等級の認定が行なわれます。
~手指の可動域制限による後遺障害の等級~
後遺障害等級 | 手指の可動域制限 |
---|---|
4級6号 | 両手の手指の用を廃したもの |
7級7号 | 片方の手指の5本中4本の用を廃したもの |
8級4号 | 片方の手指の親指を含む3本、または親指以外の4本の用を廃したもの |
9級13号 | 片方の手指の親指を含む2本、または親指以外の3本の用を廃したもの |
10級7号 | 片方の手指の親指または親指以外の2本の用を廃したもの |
12級10号 | 片方の手指の人差し指、中指、または薬指の用を廃したもの |
13級6号 | 片方の手指の小指の用を廃したもの |
14級7号 | 片方の手指の親指以外の指の関節を屈伸することができない |
~足指の可動域制限による後遺障害の等級~
後遺障害等級 | 足指の可動域制限 |
---|---|
7級 | 両足の足指の用を廃したもの |
9級 | 片方の足指の用を廃したもの |
11級 | 片方の足指の親指を含む2本以上の足指の用を廃したもの |
12級 | 片方の足指の親指または他の4本の足指の用を廃したもの |
13級 | 片方の足指の人差し指の用を廃したもの、人差し指を含む2本の足指の用を廃したもの、または中指以下の3つの足指の用を廃したもの |
14級 | 片方の足指の中指以下の1本または2本の足指の用を廃したもの |
手指と足指とで少しずつ後遺障害の等級が異なります。
細かく等級が分けられているので、万が一交通事故によって手指や足指に後遺症が残った場合は、その症状や状態について細かく把握しておきましょう。
可動域制限が後遺障害として認められるための条件
可動域制限が後遺症として残っている場合、後遺障害として認めてもらうことが重要となります。
ただ腕や脚が痛くて動かないというだけでは、後遺障害として認定されません。
そのため、可動域制限が後遺障害として認められるための条件についても理解しておきましょう。
可動域制限として後遺障害を認めてもらうためには、病院で検査を受けた結果が必要です。
レントゲンやMRIといった画像にて、関節でどんなことが起きているのか、可動域制限であるかどうかを判断しなければなりません。
可動域制限を後遺障害として認めてもらうための方法とは
可動域制限を後遺障害として認めてもらうためには、事故後の経過や医師による見解も必要となります。
ここでは、可動域制限を後遺障害として認めてもらうまでの流れについて見ていきます。
事故後きちんと病院に通い、医師の診察を受ける
交通事故に遭ったとき、まずは病院でしっかり診てもらいましょう。
痛みを感じる部位を伝えるなどして、医師の診察を受けます。
その際に、画像診断もしてもらうとより安心です。
レントゲン撮影をするケースは多く、画像を見て身体の中に異変が起きていないか確認をします。
このとき、レントゲンとあわせてMRIも撮ってもらいましょう。
可動域制限を証明する際、細かい部分を確認できるMRIの画像が必要となります。
事故後すぐに撮ってもらうことで、事故により起きている症状だと証明できるので、診察を受けるときに医師に相談をしてみてください。
症状固定まで治療を続ける
最初の診察を受けてから、治療のためにしばらくは病院に通うことになります。
定期的に医師の診察を受け、事故後の身体がどういった状態になっているかを確認しておくことが大切です。
症状固定となって初めて後遺障害と認定されるため、事故後は一定期間通院するようにしましょう。
治療が終了したら後遺障害診断書を作成してもらう
一定期間治療を続けたものの症状が改善されない、症状固定ということで治療が終了した場合は、医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。
この後遺障害診断書がないと等級の認定を請求することができないので、治療が終了する際に用意してもらいましょう。
後遺障害等級の認定を請求する
手元に後遺障害診断書が用意できたら、いよいよ後遺障害等級認定の請求を行ないます。
申請方法には、加害者の保険会社を通じて行なう事前認定と、被害者自身が行なう被害者請求とがあります。
後遺障害等級の申請については、専門知識を持った人のアドバイスを受けながら進めていくのが理想的です。
後遺障害として自身の身体に合う認定を受けるため、交通事故による後遺障害に詳しい弁護士に依頼する方法もおすすめです。
正しく認定を受け、その後の生活を保障してもらえるよう、可動域制限に関する後遺障害等級に関しても慎重に行ないましょう。
可動域制限が後遺障害と認められた場合、請求できる賠償金について
交通事故における後遺障害には、様々なものが挙げられます。
また、等級によって請求できる賠償金にも差が出てきます。
今回は、可動域制限が後遺障害として認められたときに請求できる賠償金について見ていきます。
後遺障害慰謝料
交通事故で後遺障害が残った場合、請求できる賠償金の一つに後遺障害慰謝料があります。
交通事故により怪我を負い、被害者が精神的苦痛を感じたことに対して支払われる慰謝料です。
後遺障害慰謝料については、認定される後遺障害等級によって請求できる金額が変わります。
可動域制限が後遺障害として残った場合の等級については上記で紹介しましたが、その等級によって慰謝料の金額が以下のように異なってきます。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2,800万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
※もっとも高額な弁護士基準による金額を示しています
逸失利益
後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料とは別に逸失利益と呼ばれるものも請求できます。
逸失利益とは、本来なら得られたはずの収入が交通事故による後遺障害によって得られなくなった利益のことを指しています。
等級が高くなるにつれて、逸失利益の額も大きくなるのが特徴です。
また、逸失利益を請求する際には条件があり、事故に遭う前に仕事で収入があった場合に限るという点も注意が必要です。
さらに、事故時に年齢が若かった人は高額の逸失利益を受け取ることができます。
可動域制限により働くことができなくなったという労働能力喪失率に対して、逸失利益の額も決まります。
労働能力喪失率は認定される等級によって異なるため、以下を参考にしてください。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
実際にあった可動域制限の後遺障害に関する事例
最後に、可動域制限の後遺障害に関する事例を1つご紹介します。
交通事故により大腿骨を骨折したある女性は、数年間治療を続けたものの股関節に可動域制限の後遺障害が残ってしまいました。
後遺障害の等級は12級に認定されたものの、その後弁護士が示談交渉を行ない、当初600万円ほどだった慰謝料が1,000万円程度にまで増額することができました。
入通院慰謝料や逸失利益、後遺障害慰謝料などを考えたときに増額の可能性があるとわかり交渉に入った結果、1,000万円ほどと十分な金額を受け取ることができました。
このように、交通事故により可動域制限の後遺障害が残った場合、保険会社から提示される慰謝料の金額に疑問を抱く被害者も多いです。
そのようなとき、専門的な知識を活かし正当に判断することができる弁護士に相談してみましょう。
交通事故による可動域制限、後遺障害となった場合は正しく認定を受けられるようにすることが大切
ある日突然起きる交通事故、一瞬の出来事がその後の人生を左右してしまうこともあります。
後遺障害として身体に症状が残ったままになることもあり、その一つに挙げられるのが可動域制限です。
日常生活に支障をきたす恐れもあるため、事故後の生活を保障してもらう必要があります。
そこで後遺障害等級にて正しく認定してもらえるよう、弁護士もサポートします。
事故後の生活が少しでも落ち着くように、納得できる賠償金を受け取れるようにしましょう。
当事務所の交通事故サポート
交通事故による関節可動域に関する後遺障害のことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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