「共同親権とはどのようなもの?」
「共同親権が日本で導入されるのはいつから?」
「共同親権は離婚後の子どもと親にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか」
ここでは上記のような疑問を抱いている方のために、共同親権について詳しく解説します。
単独親権との違いや共同親権が導入されるようになった背景や、共同親権を得るためのポイントについても解説しますので、親権問題でお悩みの際などに役立ててみてください。
Contents
共同親権とは?単独親権との違いについて
子どもがいる状態で離婚する場合、父母のどちらが親権を持つかを話し合うことになります。
そもそも親権とはどのようなものなのでしょうか?
親権の定義を理解した上で、共同親権と単独親権についてみていきます。
親権とは
親権とは、「未成年の子どもが社会人になるまで養育する」という親の義務です。
親権は、
- 身上監護権
- 財産管理権
この2つによって構成されており、この権利によって子どもの保護や養育、子どもの財産を管理することができます。
親権をもつ親は子どもと関わる権利を多く持てることから、離婚時の親権問題は大きな争点になるのです。
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共同親権について
共同親権とは、父母の両方ともが親権を持つという制度です。
離婚をしても父母の双方が協力し合って子どもの監護や養育を行なうことができ、子どもの住む場所や財産の管理などに関する権利が父母に平等に与えられることになります。
共同親権では、子どもの進学先や住居については父母の二人で話し合って決めることになりますが、日々の食事や習い事といった内容については同居している方の親だけで判断しても構いません。
教育方針などで父母の意見が対立したときは、家庭裁判所によってどちらの意見を取り入れるべきか判断してもらう必要があります。
その他、子どもの入院などの緊急性が高い内容については、片方の親のみの意見で決定することができます。
共同親権と単独親権との違い
共同親権は、父母の双方が子どもの親権を持ち、養育や財産の管理などを行なうことができるのに対し、単独親権は子どもの養育などに関して片方の親だけが責任を負うことになるのが特徴です。
単独親権で親権者となった親は、責任を一人で背負い子どもを育てていく必要があるため、親権者の負担が大きくなるでしょう。
これまで日本では、父母が結婚していれば原則として共同親権制、父母が離婚した場合は単独親権制となっていました。
しかし、今後法改正により、離婚後の親権について共同親権か単独親権のどちらを選択するか、父母で協議して決定することができるようになるのです。
また、父母の協議により親権を決めることが難しい場合は、裁判所が決定します。
子どもの心身に悪影響を及ぼす恐れがある場合は、単独親権にて父母のどちらが子どもの親権を持つべきか話し合うことになるのです。
裁判所が親権について判断する際は、子どもの利益のことを第一に考えて親権を決めることになります。
共同親権の導入が検討されるようになった背景
離婚後の子どもの親権というと、父母のどちらかが持つというイメージが強いです。
しかし、海外では続々と共同親権の導入が検討されており、アメリカ、フランスなどでは既に共同親権となっています。
では、なぜ日本で共同親権の導入が検討されるようになったのでしょうか?
その背景について、詳しく解説します。
養育費の未払い問題を解決するため
離婚後、単独親権にて片方の親が子どもの養育をしている場合、相手方には養育費を支払わなければなりません。
しかし現実では養育費の未払いが多く起こっており、この問題を解決するために共同親権の導入が検討されるようになりました。
ひとり親世帯の養育費受給状況は、半数近い人が協議で取り決めをしていたとしても、実際に受給している割合はその半分ほどとなっています。
毎月養育費を受け取れているひとり親世帯は少ないのが現状です。
単独親権だと親権者でない限り子どもを育てている実感がもてず、そのため養育費の支払いが滞ってしまうことが理由の一つとして考えられます。
しかし共同親権であれば、離婚しても父母の両方に子育てをする権利があるので、離れて暮らしていても責任をもって養育費を支払う可能性が高くなるでしょう。
養育費の未払い問題を解決し、子どもが金銭面で不自由なく過ごせるようにするため、共同親権の導入が検討されています。
参照:こども家庭庁 養育費
離婚後の面会交流問題を解決するため
共同親権の導入が検討されるようになった背景には、離婚後の面会交流問題を解決するためとも言えます。
ひとり親世帯の面会交流については事前に取り決めをしている割合が少なく、実際に面会交流をしている割合は半数にも到達しません。
面会交流をしていても、月に1回程度と少ない頻度になっています。
単独親権では、離婚後に親権者の許可を得ないと子どもに会えないというケースがほとんどです。
共同親権はこのような面会交流に関する問題を解決することに繋がるのです。
共同親権であれば、両親ともに親権者となるため面会交流を断ることはできません。
子どもが離れて暮らす親とも交流でき、健やかに育って行くためにも共同親権の導入が検討されるようになっているのです。
国際離婚による子どもの連れ去りに対処するため
国際離婚の場合、片方の親が子どもを連れて帰国すると、外国籍の親は子どもに会えなくなります。
このような子どもの連れ去り問題に対処するため、日本では2014年にハーグ条約を締結しました。
ハーグ条約では、16歳未満の子どもを居住地から連れ去った場合、元の居住地へ子どもを戻すことが義務付けられています。
しかし実際には、子どもと一緒に帰国した後に子どもが戻ってこないという状況が多いです。
国際離婚により片親が子どもに会えなくなる事態を防ぐためにも、共同親権の導入が考えられるようになっています。
多くの国が離婚後の共同親権を認めているため
現在の日本では共同親権がまだ認められていませんが、海外では多くの国が離婚後の共同親権を認めています。
例えば、
- アメリカ
- イタリア
- イギリス
- ドイツ
- フランス
- 中国
- ブラジル
- メキシコ
など、多くの国々で共同親権が導入されているのです。
世界中を見ても共同親権が認められていない国が少ないと言えるほど、多くの国で共同親権が認められています。
国際離婚をした際に法律の違いで争いになるのを防ぐため、共同親権の導入が検討されているとも言えます。
日本で共同親権が導入されるのはいつから?
日本では現在、共同親権はまだ導入されていません、2026年までに導入される見込みとなっています。
2024年の衆議院本会議にて共同親権に関して話し合われ、法改正案が賛成多数で可決・成立しました。
ここから2026年までに日本でも共同親権が導入される予定ですが、虐待から逃れられないなどの懸念点があるのが現状です。
共同親権に関する民法改正のポイント
2026年に向けて現在審議中の共同親権に関する民法改正には、いくつかポイントがあります。
ポイントを確認し、共同親権についての知識を深めておきましょう。
共同親権か単独親権かを選べるようになる
民法改正により、協議離婚の場合は共同親権か単独親権のどちらを選択するか話し合っておかなければなりません。
夫婦の間で協議が難しい場合は、裁判所によって判断されることになります。
また、すでに離婚が成立している状態でも、単独親権から共同親権への変更を申し立てることができるのが特徴です。
養育費について新たな制度創設や権利付与が行なわれる
改正案により、法定養育費制度が創設されました。
法定養育費制度とは、取り決めをしていなくても一定額の養育費を請求できるという制度です。
その他、養育費の支払いが滞ったときに、他の債権者よりも優先的に財産の差し押さえができる先取特権も付与されます。
ここから、養育費の未払い解消に繋げることができるでしょう。
2026年に施行後5年を目処に見直しが行なわれる
共同親権に関する改正案は、2026年に施行される見通しです。
その後、施工されてから5年が経過したときに制度の見直しを行ない、再検討することになっています。
離婚後の子どもと親にとって共同親権を導入するメリット
共同親権が導入されると、以下のようなメリットが期待できます。
離婚しても両親が子供の養育に関わることができる
共同親権が導入されると、離婚しても両親で子どもを育てていくことができます。
単独親権では親権者だけに負担がかかることになりますが、共同親権ではその点を解決することができるでしょう。
両親に親権があることから、子どもへの経済的な支援もきちんと行なうことができます。
離婚していても、子どもは両親と関わっていることが実感できるでしょう。
離れて暮らしている場合も両親に頼ることができるので、ひとり親で子どもが不安や悩みを抱えることを避けられます。
面会交流が実施されやすくなる
単独親権で実際に面会交流ができている割合は少ないとご紹介しました。
面会交流をしようとすると、親権者である親の許可を得てから行なう必要もあります。
その点共同親権なら両親ともに親権者となるため、子どもと同居している親は面会交流を断ることができません。
離れて暮らす子どもに会いたいという親の気持ちを解消してくれます。
養育費の未払いを予防できる
単独親権では、養育費の未払い問題が起こりやすく、実際に支払ってもらっていないというひとり親世帯も多いです。
最初のうちは支払ってもらっていたけれど、相手の再婚がきっかけで支払われなくなったということもよくあります。
一方共同親権が導入されると、先取特権や法定養育費制度があることで離れて暮らす親も積極的に養育費を支払ってくれるようになるというメリットがあります。
両親ともに子どもの養育に関われるようになるので、我が子のことを思い養育費をきちんと支払おうと考える親が多くなるのです。
離婚しても子どもが両親に会える可能性が高まる
両親が離婚して片方の親と一緒に暮らす子どもにとって、もう片方の親に会いたいと言うことは勇気がいるものです。
共同親権であれば、そのような悩みを抱えずに済みます。
それは離婚して別居していても、日ごろから子どもの生活に両親が密接に関わるからです。
親が離婚している場合も子どもは両親の存在を感じられるので、離れて暮らす親にも会いやすくなります。
離婚する際の親権争いを回避できる
単独親権である現在の日本では、離婚の際に両親のどちらが親権を持つかを協議しなければなりません。
この協議の際に両親が対立し、親権争いが激化する恐れがあります。
しかし共同親権が導入されれば、両親のどちらにも親権があるため争いが回避でき、離婚問題を速やかに解決できるでしょう。
父親の親権獲得が難しいという問題の解消につながる
共同親権が認められると、父親の親権獲得が難しいという問題の解消も期待できるようになります。
日本では、母親が子どもを連れ去っても、母親に生活能力がないとしても、母親に親権が与えられることが多いです。
このような状況を不公平であると主張する人は多くいます。
共同親権が認められれば「性別関係なく子どもを養育する義務がある」という考え方の定着にも繋がると言えるでしょう。
日本で昔から根付いている父親が働いて母親が家事や育児をするという考え方を、大きく変えるきっかけにもなるのです。
離婚後の子どもと親にとって共同親権を導入するデメリット
メリットが多くある共同親権ですが、デメリットについても理解しておきましょう。
共同親権には、以下のようなデメリットがあります。
元配偶者からのDVから逃げられない場合がある
共同親権では、親権を持たない親も子どもとの関わりを持ち続けることができるのが大きなメリットでした。
しかし、元配偶者からDVや虐待などを受けていた場合、関わりを避けられない点から相手から逃れられない可能性が出てきます。
家庭裁判所がDVなどの事実を認めれば単独親権となりますが、DVの内容によっては証拠が残しにくいこともあります。
このような場合は、裁判所による事実認定が難しくなり、離婚しても関わりが続くことになるのです。
離婚するに至った理由から、共同親権にすべきかどうかをじっくり考えるようにしましょう。
子どもの負担が増える恐れがある
親権者の許可なくいつでも子どもと面会できるのが共同親権のメリットですが、片親が遠方に住んでいる場合は面会の度に長距離移動をしなければなりません。
これでは、子どもにとって負担となる場合があります。
長期の休みのときであれば比較的負担は少なくて済みますが、学校のある休日に面会するのは大変でしょう。
子どもにとって負担が大きくなることがあると理解し、共同親権についてよく考えることが大切です。
両親の対立により子どもの教育方針決定に時間がかかる場合がある
共同親権では、離婚しても両親で子どもの教育方針について話し合うことができます。
しかし、両親の考えが食い違った場合、どのように判断を下すかに時間がかかる可能性があるのです。
このような環境の中では、子どもも混乱し、ストレスを抱える恐れがあります。
両親が教育方針に関して対立したとき、子どもにも大きな影響が及ぶと理解しておきましょう。
遠方への引っ越しが制限される可能性がある
共同親権の導入により、普段離れて暮らしている親と子どもが定期的に面会できるようになります。
親権者の許可なく会えることから、できるだけ頻繁に会いたい、子どもの成長を近くで感じたいと考える場合もあるでしょう。
そうなると、親同士が近くに住んでいる方が都合が良いです。
実家の近くで暮らしたい、仕事で転勤になる可能性があるといった際に、面会交流により遠方への引っ越しが制限されてしまうことがあるのです。
共同親権を得るためのポイント
共同親権の特徴やメリット・デメリットなどを理解したうえで、ここで共同親権を得るためのポイントについてまとめました。
ポイントを押さえ、子どものことを最優先に考えられるようにしましょう。
子どもを虐待しない
共同親権を得たいと考えているなら、子どもを虐待してはいけません。
子どもを虐待すると子どもに悪影響であるとみなされ、単独親権すら取得することが難しいです。
虐待には、
- 身体的虐待
- ネグレクト
- 性的虐待
- 心理的虐待
の4種類があります。
虐待であれば、どれも子どもに悪影響なのではと思うでしょう。
しかし、性的虐待以外のものに関しては軽微であれば虐待に該当しないと考えられています。
子どもを虐待しないことは当然であると同時に、虐待の内容や程度によっては虐待とみなされないケースもあることを念頭に置いておきましょう。
親権争いにならないよう配偶者を説得する
共同親権は、配偶者が同意すると父母の協議によって子どもの居住地や養育について選択できるようになっています。
一方、離婚時に親権争いが起きた場合は、離婚調停や裁判で争いが長引くことがあります。
親権争いにならないよう、配偶者を説得して共同親権を得られるようにしましょう。
配偶者にDVを行なわない
共同親権を得たいと考えているなら、子どもだけではなく配偶者に対してもDVを行なってはいけません。
DVを行なった場合、共同親権が取得できない他、慰謝料問題に発展することもあります。
自身はDVではないと思っていても、配偶者はDVだと主張することもあるでしょう。
このような場合は共同親権を得るのが困難になるため、DVをしないことも重要です。
離婚問題に強い弁護士に相談する
離婚の際の親権問題に関しては、虐待やDVの有無、配偶者の説得など様々な点を考慮しながら、親権者を決めなければなりません。
なかには専門的な判断が必要になる場合もあり、そのようなとき頼りになるのが弁護士です。
離婚問題に強い弁護士に相談すると、親身に話を聞いてくれて今後どのように動けば良いかアドバイスしてくれます。
共同親権について悩んでいるときは、離婚問題に強い弁護士を尋ねてみましょう。
専門家の視点から、親権問題を速やかに解決してくれます。
共同親権をはじめ離婚時の親権問題でお悩みなら弁護士にご相談を
共同親権について、単独親権との違いや特徴、メリット・デメリット、共同親権を得るためのポイントなどを詳しく解説しました。
今後日本でも導入される予定の共同親権ですが、子どもにとって利点が多いと言えるでしょう。
その一方で、DVや虐待がないか、面会交流に時間と労力がかからないかをよく考えることが重要です。
共同親権をはじめとした親権問題でお困りの際は、弁護士にご相談ください。
離婚や親権に詳しい弁護士が、状況をよく確認した上で的確に対応してくれます。
子どもが快適に過ごせるよう、親自身も悩みや不安を抱えずに済むよう、親権問題について慎重に考えてみましょう。
共同親権や離婚のことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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