いつ何時誰の身に起きるかわからない交通事故、その衝撃によって身体に大きな負担がかかるケースもあります。
また、交通事故からしばらく経って、体調に異変を感じることもあるでしょう。
今回は、交通事故の後遺障害において、目に関する問題を考えていきます。
目の後遺障害とはどのようなものを指すのか、後遺障害等級や対処法、請求できる費用についても詳しく見ていきましょう。
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交通事故による目の後遺障害とは
交通事故によって、目に異常がみられるようになるときがあります。
視力だけの問題ではなく、目のトラブルによって日常生活に様々な影響を及ぼす可能性もあるため、見過ごすことはできません。
そこでまずは、交通事故による目の後遺障害にはどのようなものが含まれるのか見てみましょう。
視力に関する後遺障害
交通事故の衝撃によって視神経が傷つく、または眼球に傷を負うなどした場合、視力低下や最悪の場合失明してしまうことがあります。
視力に関しては、失明の有無やどれぐらい視力が低下したかという点に応じて後遺障害等級が認定される仕組みになっています。
視力にどのような変化が現れているかは、病院での検査にて詳しく調べてもらいます。
視力の低下は、むちうちによっても生じることがあるので、頸椎に異常がないかの診察も受けておくとより安心でしょう。
目の調整機能や眼球の運動機能に関する後遺障害
私たちの目は、見るものに合わせてピントを調整をしながら、ものをはっきり見ようとします。
目のなかでも水晶体という部位が調整機能に関わっており、交通事故による負傷でものがぼやけて見えたり、全体的な視力が低下するという症状がみられるようになります。
目がかすむといった症状が現れることもあるので、異変が起きていないかこまめに観察してみましょう。
また、眼球の運動機能にも支障をきたす場合があります。
正常な視野を保つために必要な眼球の運動機能ですが、事故による後遺症で視野が狭まってしまうこともあるのです。
視野に関する後遺障害
交通事故で目に関する神経が損傷を受けた場合、視野にも異常がみられるようになります。
症状としては、今までより視野が狭くなります。
視野が狭くなると、日々の生活において危険なことにも気づくのが遅れてしまいます。
また、今までできていたことが思うようにできないと感じるときも増えるでしょう。
視野に関する障害についても、しっかりと対処していく必要があります。
まぶたに関する後遺障害
事故の状況によっては、まぶたが欠損したり、開閉ができない、瞬きがうまくできないといった症状がみられる場合もあります。
このようなまぶたの異常も、後遺障害として考えるべきです。
目の後遺障害で起こりやすい病名一覧
交通事故で目に後遺障害が残った場合、どのような病名が挙げられるのか一覧にて記載します。
目の後遺障害 | 特徴 |
---|---|
穿孔外傷 | ガラスの破片などが目に刺さり、眼球や角膜に穴が空いてしまった状態です。穿孔外傷では、視力が著しく低下したり失明するといった後遺障害が残ることが多いです。 |
外傷性白内障 | ガラスの破片などが目に刺さったり目を強くぶつけたりすることで、水晶体に傷がついてしまった状態です。視力の低下やまぶしい光に敏感になるなどの後遺症が残ります。 |
網膜剝離 | 交通事故で目に強い衝撃が加わった際、網膜が剥がれてしまうことがあります。手術によって治療を図りますが、症状が重い場合は視力の低下や視野が狭くなるといった後遺障害が残る可能性が高いです。 |
眼球破裂 | 目や顔に強い衝撃が加わったとき、眼球が破裂してしまうことがあります。手術にて視力を取り戻せるケースもありますが、多くの場合失明または極度に視力が低下してしまいます。 |
水晶体亜脱臼 | 物が二重に見える、いわゆる複視の状態を指し、手術が必要となります。痛みがなくても緑内障の原因になる恐れがあるため、病院での治療が必要です。 |
その他、頸椎がダメージを受けることで自律神経のバランスが乱れ、目がかすんだり、疲れやすくなる、ぼやけて見えるなどの症状がみられるケースもあります。
交通事故では、むちうちになる人も多いです。
むちうちによって、目がかすんだり、頭痛がする、集中力が続かないなど日常生活に変化を感じることもあるため、気になる症状があるときは医師に相談するようにしましょう。
目に後遺障害がみられる場合の対処法
急な交通事故で目にトラブルが起きてしまった、これから先どうすれば良いのかわからない・・・と悩んでいる場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
ここでは、目に後遺障害がみられる際の対処法について解説します。
目の状態が今までと違う、そう感じるときは正しく対処して保障してもらうことが大切です。
まずは眼科を受診しよう
交通事故に遭ってから目の調子がおかしい、いわゆる後遺症なのかなと不安に感じるときは、眼科を受診しましょう。
眼科では傷の処置を行なったり、症状がひどい場合にはCT検査などで詳しく調べていきます。
なぜ目に不調が起きているのか、その原因を明らかにするためにも眼科を受診してみましょう。
なかなか改善しない場合は症状固定を決定
事故後、目の調子が悪くなってから数ヵ月間病院に通っているけれど改善されない、そのようなケースもあるでしょう。
目安として、3ヵ月~半年間症状が続く場合、医師からこれ以上治療を受けても改善が見込めないと言われることが多いです。
症状が改善されないとなったら、医師と話し合って症状固定について決めていきます。
後遺障害等級の申請を行なう
医師により症状固定と診断されたら、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
後遺障害等級の申請を行なう際に、必要となる書類です。
申請をして適正な等級を認定してもらうことで、その後慰謝料の額が大きく変わってきます。
生活を保障してもらうためにも、症状固定となった場合には後遺障害等級の申請を行ないましょう。
交通事故による目の後遺症、後遺障害等級はどうなる?
交通事故で目に大きな負担がかかると、失明や視力の低下、視野が狭くなるなど、今後の生活にかかわる後遺症が残ってしまう恐れがあります。
明らかに事故が原因で症状が改善されない場合、また日常生活に支障が出る場合は、後遺障害等級をもとに費用を支払ってもらうことが可能です。
等級によって費用が異なるため、その詳細について確認しておきましょう。
失明や視力の低下に関する後遺障害等級
失明や視力低下は、その後の人生を大きく変えてしまうことになります。
よって、等級の認定においても基準が高くなっているのが特徴です。
細かく分けられた認定基準により、後遺障害等級が決定されます。
以下に記す視力はメガネやコンタクトレンズをつけた状態での数値を指しています。
また、失明についても、明暗の判断ができない、眼球を失ったなどの基準が設けられているので参考にしてみてください。
失明や視力の低下に関する障害 | 後遺障害等級 |
---|---|
両目の失明 | 1級1号 |
片目が失明、もう片方の目は視力が0.02以下 | 2級1号 |
両目の視力が0.02以下 | 2級2号 |
片目が失明、もう片方の目は視力が0.06以下 | 3級1号 |
両目の視力が0.06以下 | 4級1号 |
片目が失明、もう片方の目は視力が0.1以下 | 5級1号 |
両目の視力が0.1以下 | 6級1号 |
片目が失明、もう片方の目は視力が0.6以下 | 7級1号 |
片目が失明、またはもう片方の目の視力が0.02以下 | 8級1号 |
両目の視力が0.6以下 | 9級1号 |
片目の視力が0.06以下 | 9級2号 |
片目の視力が0.1以下 | 10級1号 |
片目の視力が0.6以下 | 13級1号 |
視野に関する後遺障害等級
視野が狭くなると、事故後の生活にも大きな影響を及ぼすため後遺障害等級が認められます。
認定基準は、以下をご覧ください。
視野に関する障害 | 後遺障害等級 |
---|---|
両目の視野がそれぞれ半分しか見えない、見える範囲が狭くなり、視野の一部が欠けてしまう | 9級3号 |
片目の視野が半分になっている、見える範囲が狭くなり、視野の一部が欠けてしまう | 13級 |
目の調節機能や運動機能に関する後遺障害等級
ピントがうまく合わない、眼球の動く範囲が限られてしまうなどの機能異常についても、後遺障害等級が認められます。
詳しい等級は、以下のようになっています。
目の調節機能や運動機能障害 | 後遺障害等級 |
---|---|
両目の眼球に著しい調節機能または運動機能の障害がみられる | 11級1号 |
片目の眼球に著しい調節機能または運動機能の障害がみられる | 12級1号 |
正面を見たときに複視の症状がみられる | 10級2号 |
正面以外を見たときに複視の症状がみられる | 13級2号 |
まぶたの障害に関する後遺障害等級
交通事故では、目そのものだけでなくまぶたが損傷を受ける場合もあります。
まぶたの障害については、以下のように後遺障害等級の基準が定められています。
まぶたの障害 | 後遺障害等級 |
---|---|
両目のまぶたが著しく欠損している | 9級4号 |
片目のまぶたが著しく欠損している | 11級3号 |
両目のまぶたの一部に欠損がある、またはまつげがはげてしまった | 13級4号 |
片目のまぶたの一部に欠損がある、またはまつげがはげてしまった | 14級1号 |
両目のまぶたに著しい運動障害が残っている | 11級2号 |
片目のまぶたに著しい運動障害が残っている | 12級2号 |
目の後遺障害、請求できる費用について
目に後遺障害が残ると、その後の生活を保障してもらわなければ暮らしていけない場合もあります。
後遺障害等級の認定を受けるのはもちろん、その他にも請求できる費用があることを知り、少しでも安心して過ごせるようにしましょう。
さっそく、目の後遺障害に関して請求できる費用について解説します。
治療費や入通院費など
まず、病院に行って検査や治療を受けた場合の治療費、入院や通院などの際にかかった費用を請求することができます。
入院中に必要になったものを購入したというときにも、1日あたりいくらぐらいかかるかというのを目安に計算していきます。
休業損害
交通事故で目に怪我を負ったなどで仕事を休んだ場合、休んだ日数分の金額を支払ってもらうことができます。
いつから病院に行き始めたのか、治療を始めたのかなどを証明できるものは、すべて残しておきましょう。
傷害慰謝料
交通事故の怪我によって病院に行くことになったとき、傷害慰謝料と呼ばれるものも請求できます。
怪我に対する精神的苦痛に対して支払われる費用です。
入院や通院の期間に応じて金額が決まっています。
後遺障害慰謝料
目の後遺障害によって後遺障害等級が認定されたとき、支払われる費用です。
1級~14級まで細かく目に関する症状が分けられており、この等級に基づいて支払われる慰謝料も異なってきます。
参考までに、後遺障害等級の等級ごとにいくらぐらいの慰謝料が定められているのか、弁護士基準でご紹介しましょう。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
自賠責基準と比べると、弁護士基準の方が3倍前後高くなっているので自賠責基準よりも高い慰謝料を受け取ることができます。
事故後の生活を保障してもらわなければならない、この先どうしていけば良いかわからないと困っているときは、弁護士に相談すると安心です。
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後遺障害逸失利益
視力の低下や失明などは、今までしてきた仕事にも大きな影響を与えるでしょう。
普通にできていた仕事が、できなくなってしまうこともあります。
その結果、仕事をして本来得られるはずであった収入も減ってしまうでしょう。
将来減ってしまう収入について保障してもらえるのが、後遺障害逸失利益です。
具体的な金額は、後遺障害等級の等級ごとに決められています。
労働能力喪失率と呼ばれるものを定め、本来得られるはずであった収入をもとに計算されるという仕組みです。
後遺障害等級ごとに、どれぐらいの労働能力喪失率となるのか見てみましょう。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
等級により大きく労働能力喪失率が異なるので、その分支払われる逸失利益についても差が生じてきます。
きちんと逸失利益を受け取るためにも、後遺障害等級を正しく認めてもらう必要があります。
目の後遺障害に関する賠償金の事例
目に関する後遺障害にて後遺障害等級を申請し、その他の慰謝料についても無事に支払ってもらえたという事例についていくつかご紹介します。
自身の身体の状況やこれから先のことを考えたとき、不安を感じて弁護士に相談された結果、納得のいく賠償金を受け取ることができたという事例になります。
眼球の運動障害により後遺障害10級が認められた例
自動車事故で後部座席に乗っていたある男性は、搬送された病院で脳挫傷や頭蓋骨骨折、眼球運動障害、顔面骨折、右難聴・・・などと様々な診断をされました。
その後数年かけて治療を続けたものの、後遺症が多く残ってしまいました。
視神経が損傷を受けたことで眼球が正面を向けず、もう片方の目については視力も大きく低下しました。
常に眼帯が必要な生活となってしまったのです。
後遺障害等級の申請を行なったところ、眼球の運動障害については10級に該当、片目の視力低下は13級に該当しました。
そして高次脳機能障害も残っていたため、最終的に後遺障害併合8級が認められました。
さらに、被害に遭った男性は大学生であり、これから先就職して得たであろう逸失利益についても弁護士が主張し、結果的に総額7,000万円近い賠償金を受け取ることができました。
細かい診断内容をもとに適正に等級を認定してもらうことの大切さが伝わってきます。
左目失明、右目視力の低下などにより後遺障害等級1級が認められた事例
ある男性は、横断歩道をわたっているときに乗用車にはねられました。
後遺障害として左目失明、右目の視力低下、その他判断力などが労働力の低下に影響すること、骨盤変形などから様々な等級が認められました。
その後当初2級であった等級が併合1級に相当するということになり、慰謝料や逸失利益などを含め合計5,000万円ほどの賠償金が支払われました。
多くの後遺障害が残り、後遺障害等級は併合5級が認められた事例
バイクに乗っていた被害者は、加害者が運転する車の底に巻き込まれ数百メートル引きずられてしまいました。
1年以上に及ぶ入院治療に、その後通院も数ヵ月続きました。
全身に傷があり右目は失明と後遺障害が残り、症状固定となりました。
傷害ごとに等級が認められ、最終的に後遺障害併合5級の認定を受けました。
成人前の男性であったことから逸失利益も含まれ、休業損害や将来の介護費、慰謝料なども含めて、合計8,000万円ほどの賠償金が決定しました。
しばらくの間車に引きずられたことにより損害が大きくなったと考え、過失割合のほとんどが加害者側になったというのも、判決の際の重要な点となりました。
目の後遺障害は弁護士にご相談を!適正な後遺障害等級にて妥当な費用を受け取れるようにいたします
交通事故により起こりうる後遺障害には、様々な種類があります。
事故の状況や受けた損傷などによって生涯抱えることにもなるでしょう。
目に関しては日常生活に大きな支障が及ぶため、後遺障害となった場合は後遺障害等級の認定を受け、適正な賠償金を受け取るべきです。
保険会社とのやり取りで提示される金額には納得がいかないとお困りの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
1件ごとに異なる事故の概要や被害者の状況をもとに、正しく賠償金を受け取れるようサポートいたします。
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