交通事故による怪我で腕を切断することになったら、その後の生活に大きな影響が及びます。
日常生活が一変し、通学や仕事、これまで続けてきた趣味を楽しむことができなくなることにもなるでしょう。
腕を失った事実は変えられないですが、加害者には相応の慰謝料を支払ってもらいたいと考えます。
今回は交通事故で腕を切断することになったときの後遺障害等級や慰謝料の金額について、具体的な流れなども一緒に解説します。
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交通事故で腕切断となった場合の後遺障害等級
交通事故によって腕を切断する事態となると、今まで通りの生活は送れなくなります。
身体の一部を失うことで受ける身体的ダメージは大きく、精神的にも大きな苦痛を強いられることになるでしょう。
交通事故で腕切断となった場合、事故後に障害が残ったということで後遺障害等級の認定を受けることができます。
腕切断の状況によって認められる等級が変わり、等級によって慰謝料の額にも差が出てくるため、正しい後遺障害等級の認定を受けられるようにしたいです。
腕切断による後遺障害等級について、詳しく解説します。
1級 両腕を肘関節以上で切断
交通事故により両腕を肘関節より上で切断した際、後遺障害等級は1級3号に認定されることになります。
正式には、認定基準が以下のように定められています。
- 1級3号・・・両上肢をひじ関節以上で失ったもの
両上肢をひじ関節以上で失ったとは、以下のような状況を指しています。
- 肩関節において、肩甲骨と上腕部を切断した
- 肘関節において、上腕骨と尺骨を切断した
- 肩関節と肘関節の間において、腕を切断した
上肢のなかでもどの部位を切断したのか、また両上肢を切断することになったといったときに、後遺障害等級は1級3号に認定されます。
2級 両腕を手関節以上で切断
交通事故による腕切断は、状況が様々です。
両腕を手関節より上で切断しなければならないということもあります。
その場合、認定される後遺障害等級は2級3号となります。
- 2級3号・・・両上肢を手関節以上で失ったもの
両上肢を手関節以上で失ったとは、次のいずれかに該当する場合です。
4級 片腕を肘関節以上で切断
不慮の交通事故で、片腕を切断することになるケースもあります。
片腕を切断することになり、肘関節以上である場合、認定される後遺障害等級は4級4号です。
- 4級4号・・・1上肢をひじ関節以上で失ったもの
1級3号のときと同じく、肘関節以上で失ったというのは以下のいずれかの状態を示します。
- 肩関節において、肩甲骨と上腕部を切断した
- 肘関節において、上腕骨と尺骨を切断した
- 肩関節と肘関節の間において、腕を切断した
5級 片腕を手関節以上で切断
片腕を手関節以上で失った場合は、後遺障害等級は5級4号に認定されることになります。
- 5級4号・・・1上肢を手関節以上で失ったもの
手関節以上で失ったものというのは、2級3号のときと同じように判断していきます。
- 肘関節と手関節との間で腕を切断した
- 手関節で、尺骨と手根骨を切断した
交通事故による腕切断の際に請求できる慰謝料一覧と適正金額
交通事故による腕を切断した場合、加害者側に慰謝料を請求することができます。
どのような慰謝料を請求できるのかを確認し、併せて計算方法なども押さえておきましょう。
入通院慰謝料
怪我や治療のために入院・通院した際に請求できるのが、入通院慰謝料です。
自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のどれが適用されるかによって、請求額には違いが出てきます。
それぞれの基準について、請求できる額の相場は以下の通りです。
自賠責基準
自賠責基準では、2通りの計算方法で計算したのち小さい額の方が適用されます。
- 4,300円×実際に病院に通った日数×2
- 4,300円×治療期間
病院に通った日数や治療にかかった期間を計算式に当てはめて計算をしていきます。
任意保険基準
任意保険基準は、保険会社によって独自に金額を定めているため明確な基準はありません。
保険会社が定める金額に沿って、話し合いを進めていくことになります。
入院や通院の期間によって金額が変わってくるのが特徴です。
弁護士基準
弁護士基準は、自賠責基準や任意保険基準と比べて請求できる額が大きくなります。
客観的に見て怪我の状態が明らかかどうかを基準に、請求額を検討していくという流れです。
弁護士基準の相場は入院・通院の期間によって異なり、約30万円~350万円までと幅広くなっています。
腕切断に関する入院・通院とは別に他の症状があるかどうかによっても金額が変わるため、注意が必要です。
後遺障害慰謝料
治療を続けたものの後遺症が残ってしまったというときに請求できるものが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害申請を行なって等級の認定を受けておくと、スムーズに手続きを進めることができます。
自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準と3つの基準が設けられ、請求額の相場にも違いが出てくるのが現状です。
腕切断となった場合の後遺障害等級は、1級・2級・4級・5級のいずれかに該当するため、3つの基準それぞれの相場は次のようになっています。
等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1,100万円 | 約1,600万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 約1,300万円 | 2,370万円 |
4級 | 712万円 | 約900万円 | 1,670万円 |
5級 | 599万円 | 約750万円 | 1,400万円 |
休業損害
交通事故による腕切断となったとき、これまでのように仕事を続けることが困難です。
しばらくは治療に専念することになるでしょう。
しかし、仕事を休むとなると収入が得られなくなります。
そのようなときに減ってしまった収入分を補償してもらえるのが、休業損害です。
休業損害は、計算式を使って算出します。
1日あたりの基礎収入×休業日数=休業損害
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、交通事故で後遺症が残り、将来得られるはずであった収入が減ってしまったときに請求できるお金です。
後遺障害申請により等級の認定を受けておくことで請求できる慰謝料になります。
後遺障害逸失利益は、以下の計算式を使って金額を出していきます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数=後遺障害逸失利益
その他請求できる費用一覧
交通事故による腕切断で請求できる慰謝料についていくつか種類を挙げましたが、その他にも請求できる費用があります。
交通事故に伴い発生した費用は、書き留めておいたり書類を手元に残しておくことが大切です。
たとえば、以下のような費用を請求することができます。
- 入通院治療費
- 入院雑費
- 付添看護費
- 入通院交通費
- 診断書作成費用
- 車の修理代
- 将来必要となる義足などの費用
- 自宅のリフォーム費用
後遺障害認定を受けてから慰謝料を受け取るまでの流れ
交通事故で腕を失った場合、後遺障害等級の認定を受けて適正な金額の慰謝料を受け取るべきです。
腕の切断状況や基準によって受け取れる額が変わってくる慰謝料ですが、正しく手続きを行なうことが大事です。
ここでは、後遺障害認定を受けてから慰謝料を受け取るまでの流れについて説明します。
1 医師から症状固定である診断を受けて後遺障害診断書を作成してもらう
一定期間病院に通って治療を続けたものの、これ以上の改善が見込めないという状態は症状固定となります。
症状固定となるまでの期間は怪我の程度によって異なるため、医師と相談しながら決めていきます。
症状固定の診断を受けたら、次に医師に後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
後遺障害診断書は、保険会社から用紙を取り寄せることができます。
作成後は医師から手渡しされる他、直接保険会社に送ってもらう方法もあります。
2 後遺障害申請をする
後遺障害診断書の作成が完了したら、次に後遺障害申請に入ります。
被害者請求と事前認定という2つの方法があるため、それぞれの内容について理解しておきましょう。
被害者請求
被害者自身が自賠責保険会社へ申請する手続きが、被害者請求です。
申請の際に必要な書類があり、自身で用意しなければならないため時間と労力がかかります。
一方、自分に有利となる資料や情報を集めて申請できる点はメリットといえるでしょう。
~提出書類一覧~
- 後遺障害診断書
- 交通事故証明書
- 診療報酬明細書
- 事故発生状況報告書
- 印鑑証明書
- レントゲン写真
- 医師の意見書など
事前認定
加害者が加入する保険会社に申請の対応を任せる手続きが、事前認定です。
後遺障害診断書の提出のみで、あとは保険会社が代行してくれるので手間がかかりません。
しかし、保険会社は必要最低限の書類しか提出しないため、納得のいく後遺障害の認定を受けられるとは言い切れないのがデメリットです。
3 後遺障害等級の認定結果がわかる
申請内容が無事受理されて手続きが進められると、1ヵ月~3ヵ月ほどで後遺障害等級の認定結果が通知されます。
認定結果に納得がいかない場合は異議申し立てが可能ですが、新たに根拠となる資料を用意しなければなりません。
4 示談交渉して示談金を受け取る
後遺障害等級の認定を受けたら、示談交渉に進みます。
加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社とやり取りしていく流れが一般的です。
交渉が無事に済み、示談書を交わしたら示談金を受け取ることになります。
示談交渉で解決しなかったときは、裁判で話し合いを行ないます。
後遺障害等級や慰謝料のことは弁護士に相談するのがおすすめ
交通事故による腕切断で、今後の生活をどのように送っていけば良いかわからないとき、後遺障害等級の認定により適正な慰謝料を受け取ることがせめてもの救いになります。
しかし、後遺障害等級やどこの基準で算定するかによって、慰謝料の額が大きく変わるものです。
できるだけ多くの慰謝料を受け取りたい、腕切断という大怪我に見合った後遺障害等級を受けたいというときは、交通事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットが得られます。
最も高い弁護士基準の慰謝料を請求できる
後遺障害等級により変わってくる慰謝料の額は、自賠責保険・任意保険・弁護士の3つのうちどの基準を適用するかによっても額面が大きく異なります。
この中で最も高い額を請求できるのが、弁護士基準です。
弁護士基準では過去の裁判例を参考に、法的根拠のもと正しく判断されます。
法的根拠があるという点から、裁判で認められる可能性も高いです。
できるだけ多くの慰謝料を支払ってもらいたいと考えるときは、金額が最も高くなる弁護士基準を採用する方法が効果的です。
弁護士が示談交渉を進めてくれる
弁護士は慰謝料増額が期待できるだけでなく、煩わしく感じる示談交渉も被害者の代わりに進めてくれます。
加害者と話すのが辛い、加害者が非を認めないといったときにも、法律に詳しい弁護士が的確に対応してくれるので心強いです。
法律に基づいて示談交渉から慰謝料の金額決定までを進めてくれるため、法律的に正しく解決できることも利点といえます。
示談交渉がうまく進まない、慰謝料のことで困っているときは、弁護士に相談して最善の方法で解決してもらいましょう。
交通事故の被害者が押さえておきたいポイント
交通事故に遭った際に、被害者として押さえておきたいポイントをまとめました。
怪我の状況によっては冷静になって対応することが難しいでしょう。
しかし、大切なポイントを押さえておくことでより迅速に対応できます。
医師から正しく症状固定の診断を受ける
交通事故に遭ったら、怪我や治療のために病院に通うことになります。
治療を続けたものの改善が見られないと医師が診断したところで症状固定となり、被害者には後遺症が残ります。
ここで注意したいのが、加害者側の保険会社がこれ以上治療費を支払えないので症状固定にしてくださいと言ってきたときです。
保険会社としては少しでも支払いを減らしたいためにそのように言ってくる場合があります。
しかし、症状固定の診断は医師が行なうべきものです。
症状固定の診断がなく通院しているときは、治療の効果が表れていると思って良いでしょう。
その場合は、治療費などの領収書を必ず保管しておくようにしてください。
示談交渉を行なうときに、保険会社に請求できます。
症状固定の診断は医師が行なうものと理解して、保険会社からの発言には注意しましょう。
後遺症と後遺障害の違いを確認する
後遺症と後遺障害、どちらの交通事故の際に耳にする言葉ですが、両者の違いを理解しておくことが大切です。
それぞれの違いについて、簡単に記載します。
- 後遺症・・・症状固定後に被害者の身体に残った機能障害や運動障害などのこと。
- 後遺障害・・・後遺症に加え、損害賠償請求の対象になる状態であること。(労働能力の低下や後遺障害等級に該当するなど)
交通事故で腕を切断するということは大怪我です。
日常生活が困難になり、仕事にも大きな影響が及びます。
後遺症と後遺障害の違いを押さえて、後遺障害である場合は損害賠償請求を行なうため後遺障害等級の認定を受けるようにしましょう。
後遺障害等級は異議申し立てができる
事故後の後遺症については、すべてが後遺障害として認められるわけではありません。
本来の身体の状況よりも低い後遺障害等級が認定されてしまうこともあります。
しかし被害者の心情を鑑みれば、できる限り適正な後遺障害等級の認定を受けられるようにすべきです。
このようなときは、被害者は異議申し立てをすることができます。
異議申し立てを行なう際は、被害者自身が損保料率機構に申請しましょう。
法的、医学的な根拠のもと精査され、異議申し立てが認められます。
異議申し立てを行なうときは、異議申立書と陳述書の他、次のような書類の提出も必要です。
- 医師による後遺障害診断書
- CT画像やMRI画像
交通事故による腕切断は弁護士にご相談を!正しい後遺障害等級や慰謝料の決定が可能です
交通事故で大怪我を負うと、その後の生活がままならなくなります。
腕切断ともなると、後遺障害が残るケースがほとんどです。
腕切断の状況を踏まえて納得のいく後遺障害等級と慰謝料が決まるよう、法律のプロである弁護士に相談してみましょう。
当初よりも重い等級、慰謝料の増額などが見込めます。
自身の代わりに弁護士が示談交渉も引き受けてくれるので、安心して任せることができるでしょう。
交通事故に詳しい弁護士に尋ねて、無事に事故を解決できるようにしてください。
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