退職代行とは今注目されているサービスの一つで、会社で働く従業員が退職したいというときにその業務を代行するというものです。
一般的には、自身が会社に出すことの多い退職願、最近では退職代行というサービスを利用する人も増えています。
そのため、会社側としてはどのように対応したら良いかわからないと焦ってしまうでしょう。
今回は、そんな退職代行というサービスについて、内容や会社の対応の仕方などについて詳しく解説します。
Contents
退職代行ってどんなサービス?
退職代行は、その名の通り、自分の代わりに退職に関するサービスを引き受けてくれるといった内容のものです。
退職代行には様々な内容が含まれるのも事実で、会社としてもその実態を知っておくことが必要となります。
退職代行というサービスについて
退職代行サービスは、退職したいと考えている労働者に代わって退職の旨を会社に伝える、その他退職に関する業務を引き受けるといったものです。
意思を伝えるだけでなく、会社に関連する資料や借りているものなどの返却を行なったり、代行業務の内容はケースごとによって異なります。
退職代行サービスのなかには、ただ退職に関する業務を引き受けてくれるだけではなく、残業代の未払いやパワハラなどに関する問題についても解決に導いてくれるところもあります。
今、退職代行サービスが注目を集めている理由
弁護士だけでなく、一般企業や退職代行ユニオンなども存在するようになった今、なぜこのようなサービスが注目を集めているのでしょうか?
その背景についても、詳しく見ておきましょう。
退職に関する業務は、労働者自身が行ない、会社を後にするものです。
自身の都合やタイミングで退職することができます。
そんななか退職代行サービスの利用が広まっているのは、会社に引き留められることなくすっきりと退職したいと考える人が増えているからです。
数多くの会社があるなか、会社に留まるよう強要してくるところもあります。
そのような煩わしさを感じることなく退職したい、そう考える労働者が増えていることから退職代行サービスが注目されているのです。
退職届を受理しない、いやがらせをしてくるなど、会社側に問題がある場合、退職代行サービスを利用されることが多くなっています。
退職代行を利用された場合は潜在的労働問題に着目しよう
退職代行を利用されてしまうということは、その会社に潜在的な労働問題が隠れている可能性も示しています。
一人ひとり退職の理由が異なるなか、会社に問題があって退職しづらいと思っている労働者がいるということも多いに考えられるでしょう。
その結果、退職しづらい会社=潜在的な労働問題が潜んでいると考え、会社のなかにどんな問題があったのかを追求されたり、社会問題となってしまうこともあります。
潜在的労働問題には様々なものが含まれ、残業代の未払い、過労死ラインを超える長時間労働、休日日数が少ない、パワハラ、セクハラ、不当な解雇などが挙げられます。
経営者が知らないところで、このような問題が起きている場合もあり、労働者が退職代行を利用するきっかけにもなってしまうことを理解しておきましょう。
退職代行を利用されたら、なぜ労働者は直接伝えることができなかったのか、社内に何か問題は起きていないかなどについて目を向けてみてください。
会社としては、今後退職者を増やさないためにどのような対策を取れば良いか、会社をどう変えていけば良いかを考える機会にもなります。
退職代行を利用された場合は、会社に問題がある点がオープンになってしまうこと、また今後問題が生じないために会社の在り方を考えることが大切になるのです。
退職代行から会社に連絡があった!正しい対処法とは?
退職代行から連絡があった、会社としてはどう対処したら良いものか悩んでしまうでしょう。
また、どのように対応するのが正しいかも判断が難しいです。
そこで、正しい対応方法について、順を追って確認しておきましょう。
退職代行は拒否することができる?
退職代行から連絡や書類が来た、この場合会社としては拒否することができるのでしょうか?
結論から述べると、代行業者から退職願などが来た場合、会社が拒否することはできません。
退職に関する民法も制定されており、労働者はいつでも退職の申し入れをすることができるとされています。
企業ごとに規則がある場合でも、民法が優先されます。
また、一般退職代行業者から連絡が来た際は、少し状況が変わってきます。
確かに本人からの申し出であるという裏付けが取れない場合、すぐに了承せず慎重に行動することが求められます。
退職代行自体は拒否できないものの、どんな業者が連絡をしてきたのか、労働者本人と確かに話し合いが行なわれたのかなどを探りながら対応していきましょう。
退職代行から連絡が来たら、会社はどう対応すればいい?
基本的に拒否ができない退職代行からの連絡、情報を精査しつつ、対応を取っていくことが必要です。
ここでは、退職代行からの連絡を受け取ったとき、会社側がどのように対応すればよいのかという点について詳しく見ていきます。
どこからの退職代行なのかを確認する
退職代行サービスを行なっているのは、弁護士、一般の退職代行業者、退職代行ユニオンが多いです。この3つには、以下のような違いがあります。
退職代行サービス | サービスの違い |
---|---|
弁護士 | 労働問題に詳しい弁護士が、労働者に代わって退職代行を行ないます。違反業者ではなく、労働者が安心して退職できるよう細かい手続きなどについても会社とやり取りをしていきます。 |
一般の退職代行業者 | 弁護士資格を持たない、一般の業者です。引き受けてくれる主な仕事は、労働者の代わりに会社に退職したいと伝えることです。それ以上に、会社と交渉を行なう場合には法的な問題が発生するため、対応できません。 |
退職代行ユニオン | 一般の退職代行業者同様、弁護士資格を持たない、合同労働組合の一種です。労働者が加入している合同労働組合を通して、退職の意思を会社に伝えるという流れになっています。 |
このうち、どこからの退職代行なのかを確認することから始めましょう。
弁護士以外のところから連絡があった場合は、違法業者ではないのか、どこまでの権限があるのかなどをリサーチする必要があります。
同時に、信頼できる弁護士に相談して、退職代行の連絡があったということを伝えるようにしましょう。
労働者本人の意思であることを確認する
どこからの退職代行なのかがはっきりしたら、次は労働者本人の意思によるものかどうかの確認を行ないましょう。
この確認は、委任状などを活用することでやり取りが可能です。
本当に本人からの申し出であったのかについて確認が取れない場合は、退職手続きを進められないと伝えることができます。
回答書の作成
続いて、回答書の作成に移ります。
この回答書は、できるだけ早い段階で用意すべきものとなっています。
書面にてやり取りをした記録を残しておくと、のちにトラブルが起きたときにも証拠として活用することができます。
回答書には、次のようなことを書いておくと良いでしょう。
- 退職を認めること
- 退職日の調整について
- 退職日までに行なう引継ぎの話など
- 会社に連絡してくるときの窓口について
円滑に退職の手続きを進めるため、回答書にて話し合いを行ないましょう。
労働者の雇用形態を確認する
回答書を作成してやり取りを行なうなか、労働者の雇用形態についても会社が確認する必要が出てきます。
このときポイントとなるのが、無期雇用か有期雇用かです。
無期雇用の場合は、意思表示が行なわれてから2週間後に退職することができます。
一方、有期雇用の場合は、原則として契約期間の満了までは業務に就くことが必要です。
さらに、労働者と会社の両方の合意がないと退職できないため、気を付けましょう。
労働者の雇用形態によってその後の流れが変わってくるので、早めに確認しておくと適切に対応できます。
退職日の決定、退職日までの扱いについて考える
回答書の作成、労働者の雇用形態の確認まで完了したら、次は退職日の調整や退職日までの扱いについて考えます。
退職日については、労働者の希望、会社の就業規則、民法などに基づいて決定していきます。
雇用形態の確認のところで述べた通り、正社員であれば最短2週間、契約社員であれば契約満了期間を退職日とするケースが多いです。
この期間よりも退職日を早めたいという申し出があった際には、労働者の意思であることをその都度確認しながら、書類や本人とのやり取りで話し合っていきましょう。
退職日が決まったら、次は退職日までの扱いについても考えなければなりません。
退職代行サービスを利用する場合、今までのように出勤して働けるという状況はあまり考えられないでしょう。
有給休暇や欠勤として扱う会社が多く、労働者本人とどのような扱いにするか話し合ったうえで退職日までの過ごし方についても考えていくと安心です。
退職理由の検討
退職代行を利用して退職する場合、労働者にその理由をきちんと確認しておく必要があります。
労働者側の「自分に合わない会社だった」といった内容に関して、会社側がそれ以上引き留めることはできません。
退職理由には、その他の内容が挙げられることもあるため、会社としては注意が必要です。
社員のパワハラ、残業代が支払われていない、労働環境が過酷だったなどが理由として挙がってくる場合、会社側に問題があると考えられます。
労働法において問題がないかを、会社側もきちんと確認しておくようにしましょう。
引継ぎや貸与物の返還などを行なう
労働者が会社を退職することで、業務に支障が出ることもあります。
そのため、退職するまでに業務の引継ぎを行なうようにしましょう。
労働者一人が担当している仕事があるときには、引継ぎを行なっていないと会社の顧客などにも迷惑がかかってしまいます。
引継ぎに関しては就業規則にも記載するよう決まりがあるため、労働者にしっかりと確認を行ないましょう。
引継ぎの次に、貸与物の返還なども行なう必要があります。
会社のパソコンやスマートフォン、鍵、名刺、社員証などは、きちんと返還してもらいましょう。
また、会社に労働者の私物がある場合は、その返却方法についても考えておきたいです。
郵送、本人に届けてもらうまたは取りに来てもらうなど、どの方法で整理をするか話し合いましょう。
会社としては、退職を承諾してから、できるだけ早い段階で返却してもらうもののリストを作成しておくと良いです。
メールや書面にて労働者本人に伝えることができ、スムーズに片づけが進められるでしょう。
誓約書や各種保険、証明書などの手続きを行なう
引継ぎや貸与物の返還、私物の整理などが済んだら、最後に会社にとって大切な書面に関する誓約書を用意します。
秘密保持契約書、顧客情報などを流出させないための誓約書などが挙げられます。
退職時にこれらの書類を提出しないと退職は認めないと訴えることはできないので、労働者とのやり取りを円満に進めて手続きを行なっていくのが理想です。
その他にも、健康保険や社会保険の資格喪失手続き、離職票の交付手続きなど、いくつか行なうべき手続きがあります。
必要な書類を揃えて、労働者がスムーズに退職できるようにしましょう。
退職代行サービスに対してこんな対応は控えよう
退職代行から連絡を受けたら、会社としては冷静かつ常識的に対応することが求められます。
以下に紹介するような対応は控えた方が良いので、もしものときに備えて把握しておきましょう。
辞めさせないという圧力をかける
退職代行を利用して退職を検討している労働者は、きっと会社について長い時間悩んでいたに違いありません。
そんななか、会社側が絶対にやめさせないという態度を取ると、さらに大きな問題へとなってしまいます。
パワハラであると労働問題について追及されてしまう恐れが高まるので、感情的にならず、冷静に対応するようにしましょう。
損害賠償を請求する
退職代行の際、会社がしてはならないことの一つに損害賠償の請求が挙げられます。
実際に損害を受けていると証明できない限り、一方的な思いで労働者に対して損害賠償を請求することはできません。
会社の対応一つで、悪い口コミや意見をネット上に書かれてしまうリスクもあります。
会社の信用に大きくかかわってくる部分なので、損害賠償の請求については考えないようにしましょう。
退職したいと考えている労働者に直接連絡する
退職したいと言っている労働者に対して、直接連絡をするのもNG行動となります。
直接言いにくいから退職代行を利用しているので、その本人に連絡をするのは避けるべきことです。
弁護士が退職代行の業務を引き受けている場合は、このように直接連絡を取ることはできません。
退職代行に関する問題点やトラブル
退職代行を利用して労働者が会社を退職する場合、問題点やトラブルが生じるのも事実です。
どのようなトラブルが起こりやすいのかを理解し、トラブルを未然に防げるよう会社側が行動するようにしましょう。
他の従業員の仕事が増えてしまう
退職代行を利用して労働者が会社を辞めてしまったら、他の従業員にしわ寄せが来てしまいます。
一人ひとりが負担する業務が増えて、従業員の不満にもつながってしまうので注意が必要です。
単に業務内容が増えるだけでなく、慣れない業務を任される可能性も出てくるため、従業員に大きな負担を与えてしまいます。
このようなトラブルを防ぐため、退職代行による退職の場合も引継ぎはしっかり行なっておきましょう。
会社の信頼や評判に影響が出る恐れがある
退職代行サービスによって退職した労働者がいるとわかると、会社の信頼や評判にも大きな影響が出てくるでしょう。
労働者が相談しづらい環境の会社なのか、どういった職場なのかと思われるようになります。
弁護士による退職代行なら心配はありませんが、一般の退職代行業者の場合はどこから情報が流れてしまうかわかりません。
社内でも悪い評判や噂が流れ、結果的に退職者を増やしてしまうことにもつながるので細心の注意が必要です。
人間関係のトラブルが起きることも
退職代行サービスを利用して退職しようとしている労働者がいる場合、人間関係のトラブルが起きることもあるので注意しましょう。
今まで一緒に働いてきたのに急にいなくなってしまった、無責任だと非難している社員がいる・・・など、社内での人間関係のもつれに発展してしまう恐れがあるのです。
信頼関係があって成り立っている会社のなかで、人間関係のトラブルは難しい問題です。
人間関係のトラブルが起きる可能性もあることを念頭に置き、退職代行に対して適切に対応するようにしましょう。
退職代行を利用されないよう、会社が日々できることとは
退職代行サービスを利用されてしまうと、会社としては信頼や評判に関わってくる部分もあるので焦ってしまいます。
そこで、日ごろから会社の在り方について考え、退職代行サービスを利用されないようにすることが大切です。
ここでは、日々会社が取り組めること、あるべき姿勢について考えてみます。
お互い意見を言いやすい環境づくりを心がける
退職は、できるならば代行サービスを利用されずに円満に行なってもらいたいものです。
そこで、退職代行サービスを利用することなく労働者が安心して退職できるよう、日ごろからお互いの意見が言いやすい環境を作っておきましょう。
上司と部下の間でも気軽に相談ができる、同僚同士が話す機会を設けお互いについて知っておくなど、毎日の仕事のなかで取り入れられるものを実践することが大切です。
コンプライアンス委員会を作る
退職の理由は、労働者によって異なります。
そのなかには、社内でのセクハラやパワハラ、過酷な労働環境なども含まれます。
このような理由で退職者が増えてしまわないよう、会社としてはコンプライアンス委員会を設置するのが良いでしょう。
定期的に社内の様子を知ることができ、課題や問題点についてどのように対処すべきか話し合う場を設けることができます。
労働者一人ひとりが快適に働ける職場を目指し、コンプライアンス委員会を設置するのも視野に入れてみると良いでしょう。
退職代行から連絡が来た、そんなときは弁護士へご相談ください。
退職代行から連絡が入ると、会社としては慌ててしまいます。
労働者と直接話すことが難しくなり、会社の良くない部分が明らかになってしまうといった恐れもあります。
そんなときは、人事労務に詳しい弁護士に気軽にご相談ください。
退職代行サービスに対して適切に対応し、会社が改善すべき点に対してどのように対処していけば良いかなどをアドバイスさせていただきます。
退職代行サービスを利用して退職していく労働者を増やさないよう、ともに対策について話し合いましょう。
人事労務問題のことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
- 西横堀総合法律事務所
- 〒550-0003 大阪府大阪市西区京町堀1丁目4−22 肥後橋プラザビル 10F
- 電話番号:06-4300-5725
- 営業時間:平日8:30~17:30
- URL:https://nishiyokobori-lawoffice.jp/