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執行猶予をつけるにはどうしたらいい?執行猶予の条件や獲得のためのポイントを解説

執行猶予を望む男性

罪を犯すと、裁判官から実刑が言い渡されます。

懲役〇年、執行猶予〇年といったように実刑の内容は、罪の重さや反省の度合いなどによって変わるものです。

罪を犯した本人だけでなく身内の者にとっても、どのような刑罰が下されるかは重要な問題となります。

そのような中、執行猶予〇年となっている場合はすぐに社会復帰できる機会となります。

ここでは執行猶予とは何なのか、獲得するための条件やポイント、弁護士に相談するメリットなどについて解説します。

執行猶予とは?

執行猶予とは

ニュースなどで耳にする執行猶予とは、どのような内容なのでしょうか?

最初に、執行猶予の意味や定義、目的について解説します。

執行猶予の意味

執行猶予とは、刑の執行に対して一定期間猶予を与えることを示します。

刑事訴訟法第233条に規定されており、刑務所に入らなくても済むものの有罪判決となり前科がつきます。

「懲役1年 執行猶予2年」といった判決が下された場合、2年間罪を犯すことなく過ごすことができた際は懲役が取り消されるという仕組みです。

懲役の必要がなく、何もなければそのまま社会に復帰できることになりますが、前科が付くことになりますし、執行猶予の期間中に罪を犯した場合は執行猶予が取り消されます。

すでに前科があるときや罪の内容が重いと判断されるときは、執行猶予が与えられないことがあります。

執行猶予の期間中に罪を犯して有罪判決となった際は、いきなり刑罰が言い渡されることになります。

この判決内容に不服がある場合は控訴や上告ができ、再度裁判官から判決が下されるという流れです。

執行猶予の目的

以前は加害者は被害者と同じくらいの苦痛に相当する刑罰を与えるべきだという考え方が一般的でした。

その一方で、比較的軽い刑罰に対してそのような重い刑を与えると、更生して社会に復帰する機会を奪ってしまっているのではないかと考えられるようになりました。

このような背景から、有罪判決を受けた際に一定期間罪を犯すことなく過ごせたら刑の執行を免れるという執行猶予という判決が増えてきたのです。

執行猶予の条件

では、どのようなケースにおいてどれくらいの執行猶予がつくのか見てみましょう。

まず、執行猶予がつく条件には以下が挙げられます。

「3年以下の懲役若しくは禁固または50万円以下の罰金刑」

執行猶予の期間は、最長で5年とされています。

懲役刑だけでなく、禁固刑や罰金刑でも執行猶予がつくことがあります。

実際には罰金刑において執行猶予がつけられるケースはほとんどありません。

その理由には「罰金を支払いたくないから罪を犯さない」という抑制意識が働きにくいためです。

「3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金刑」を超える犯罪を起こした場合は、執行猶予がつくことなく実刑判決が下されます。

重大犯罪を起こした被告人に対して執行猶予をつけると、その期間中に新たな犯罪が起きる可能性が考えられます。

殺人罪や強盗罪といった重大な犯罪に関しては、執行猶予はつかないと思っておくと良いでしょう。

執行猶予の期間について

執行猶予の期間は最長で5年と説明しましたが、1年~5年となる場合が一般的です。

1年より短くなったり、5年を超えるようなことはありません。

相場としては本来の刑期より長くなり、懲役に対して2倍程度になることが多くなっています。

懲役1年6ヵ月の場合は、執行猶予が2~3年ということになります。

全部執行猶予と一部執行猶予

全部執行猶予を言い渡す裁判官

どのような犯罪であってもすぐに執行猶予が認められるということはありません。

被告人に前科がある場合、執行猶予がつかなくなる可能性が高くなります。

また、執行猶予には「全部の執行猶予」と「一部執行猶予」とがあるため、その違いについて理解しておくことが大切です。

全部執行猶予

全部執行猶予は、執行猶予期間を何事も起こさず無事に過ごせた場合、刑のすべてが免除されるというものです。

たとえば、懲役3年、執行猶予5年という場合は、5年間罪を犯さなければ懲役3年という刑を免れることができます。

全部執行猶予は、以下のような場合において認められることになっています。

  • 過去に禁固以上の刑に処せられていない
  • 過去に禁固以上の刑に処せられたことがあるものの、執行終了日から5年以内に禁固以上の刑に処せられていない
  • 過去に禁固以上の刑で執行猶予判決を受けたが、1年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受け、特に情状酌量すべき場合

以前に一度も刑を科されたことのない人は、執行猶予がつく可能性があります。

また、過去に刑に処せられたことはあるものの、その後5年以内に新たな刑罰を受けるような犯罪を起こしていないという状況の場合も、執行猶予がつくことがあります。

特に情状酌量すべきケースである際も執行猶予がつく場合があるため、前科の有無やその後の行ないなどに応じて執行猶予がつくかどうかは変わってくるのです。

一部執行猶予

一部執行猶予は、刑期の一部を懲役、一部を執行猶予とするケースになり、懲役刑も受けながら執行猶予も設けられるということになります。

懲役刑や禁固刑の一部のみについて執行を猶予することであり、すぐに刑務所で服役するわけではありません。

一方、猶予されなかった部分は実刑となり、刑務所で服役することになります。

全部の執行猶予とは条件が異なり、刑法第27条にて詳しく記載されています。

  • 過去に禁固以上の刑に処せられたことがない者
  • 過去に禁固以上の刑に処せられたことがあるものの、その刑の全部の執行を猶予された者
  • 過去に禁固以上の刑に処せられたことがあるものの、執行が終わった又は執行の免除を受けた日から5年以内に禁固以上の刑に処せられていない者

全部の執行猶予においては「3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金」という内容になっていますが、一部執行猶予ではこのうちの罰金刑が除外されます。

罰金刑が除外される代わりに「再度犯罪を防ぐために必要かつ相当であると認められるとき」という要件が加わっている点が特徴です。

その他、過去に禁固以上の刑に処せられたことがある場合でも、刑の全部の執行を猶予されている場合は一部執行猶予を受けることができるようになっています。

執行猶予を獲得するためにできること

執行猶予を獲得できた裁判

執行猶予が認められる条件についての条文のところでは、刑の執行を猶予することができるという書かれ方がされています。

ここから、執行猶予というものは条文にある通りの要件を満たしている場合において、必ず認められるものではありません。

執行猶予を獲得するためには、裁判官に対して執行を猶予すべきだと主張していくことが必要となってきます。

執行猶予を獲得するにあたっては、次のポイントが重要となります。

  • 全部執行猶予、一部執行猶予の要件を満たしている
  • 裁判官に執行猶予とすべきである事情を積極的に主張していくこと

上記を踏まえて、執行猶予を獲得するためにできることについて詳しく見ていきましょう。

罪を犯したことを深く反省する

執行猶予を主張していくためには、再犯の恐れがないということを裁判官が納得するような形で主張していく必要があります。

そのためには、罪を犯したことを深く反省することが必須であり、深く反省しているという様子を態度で示すことが大切となります。

犯罪においては、裁判で情状酌量という言葉を耳にすることもあります。

裁判官が罪を犯すに至った事情を憐れんで刑罰を軽くすることが情状酌量ですが、深く反省することで考慮してもらえる可能性が出てくるという点についても理解しておきましょう。

情状を考慮してもらえるようにする

執行猶予は、情状に酌むべき事情があると判断された場合につく可能性があります。

刑の重さを決定する際に考慮される情状、犯罪に関する情状(犯情)とその他の一般情状とがあるため、その内容を押さえておきましょう。

情状内容
犯罪に関する情状(犯情)犯行動機、犯行に至るまでの経緯、犯行態様、被害の結果  
一般情状被告人の年齢や性格、被害弁償や示談の有無、被告人の反省の程度、被害者の被害感情、更生の可能性、再犯の可能性

情状にも種類や内容が様々となっていますが、そのなかでも被害弁償や示談したという情状に関しては執行猶予がつく可能性が高まります。

身内に監督してもらう

執行猶予を獲得するため、仮に執行猶予判決となった際の生活について考え、見通しを伝えることも必要です。

そのためには、家族などの身内に監督されるという状況を作ることで、再び罪を犯す可能性が低くなると評価されます。

夫や妻による監督をより一層強化する、実家で生活をして監督してもらえる環境を整えるといった対策を取ることが必要となってくるでしょう。

被害者と示談する

刑の重さに関しては、被害者の処罰感情が大きく影響することがあります。

そこで被害者がいる場合には謝罪をし、その上で被害の弁償などを行ない、示談を成立させることができると執行猶予を得られる可能性が高まるでしょう。

執行猶予をつけるための情状酌量は弁護士に相談するのがおすすめ

情状酌量が得意な弁護士

裁判官に情状酌量の余地ありと判決され、執行猶予をつけてもらうためには被告人やその家族だけの力では難しいことが多いです。

執行猶予をつけてもらうためには、弁護士に相談することでより有利に事が進む場合があります。

弁護士に相談すると、どのようなメリットが得られるのか見てみましょう。

示談の交渉を依頼できる

裁判官に被告人の情状を理解して執行猶予を認めてもらうためには、被害者のことを思って真剣に向き合っているという姿勢を示すことが重要です。

その一つに被害者との示談交渉が挙げられ、示談を行ない、その結果に対して真摯に対応したという事実を裁判官に伝える必要があります。

しかし、示談交渉は個人同士のやり取りでは難しいため、そのようなときに頼りになるのが法律のプロである弁護士です。

示談の進め方や内容について相談できるのはもちろん、代理人として被害者との示談交渉も引き受けてくれます。

執行猶予を認めてもらえるよう、被害者と向き合って示談の交渉を行なっていくことで裁判官にも反省しているという思いを訴えることができるでしょう。

弁護士であれば被害者の思いもくみ取りながら示談を進めてくれるので、揉めることなく示談をしたいときに頼ることができます。

身内に監督してもらうなどの環境を整えてくれる

執行猶予を獲得するための条件には、身内に監督してもらい生活環境を整えていく、しっかりと更生していくという姿勢も重要視されます。

この環境整備に関しても、弁護士に相談して整えてもらうことができます。

誰が被告人の監督を行なうべきか、毎日の生活において具体的にどのような点に注意すれば良いのかといった点についてアドバイスしてくれるでしょう。

罪を犯してしまったけれど更生したい、家族の力を借りてまた社会に戻りたいと考えるときは弁護士の力を借りて生活環境を整えましょう。

刑事裁判において有利な情状を主張してくれる

罪を犯した際、刑事裁判にて執行猶予や懲役などの刑罰が下されます。

この刑事裁判にて有利な情状を主張し、被告人の罪を軽くする、執行猶予をつけてもらうといったサポートも弁護士に依頼することで可能となります。

被告人がなぜ罪を犯すに至ったのか、被告人の思いに寄り添って有利な情状を積極的に主張することができるのが弁護士です。

犯罪や法律に詳しい弁護士に相談することで、判決の際に執行猶予をつけてもらえる可能性も出てきます。

執行猶予が取り消されてしまう行為について

執行猶予が取り消される行為

執行猶予がついて、とりあえずは社会生活を送っているという日々のなかで、執行中の行動により執行猶予が取り消されることがあります。

では、どのような行為が執行猶予の取り消しにつながってしまうのか、順に確認していきましょう。

執行猶予が必ず取り消される条件

執行猶予には全部執行猶予と一部執行猶予とがあると説明しましたが、それぞれの場合で若干内容が異なるものの、次のような場合は執行猶予が必ず取り消されることになっているため気を付けましょう。

全部執行猶予の必要的取り消しの場合

  • 猶予の期間内に再度罪を犯し禁錮以上の刑に処せられ、刑の全部に対して執行猶予の言渡しがないとき
  • 猶予の言渡し前に犯した他の罪に対して禁固以上の刑に処せられ、刑の全部に対して執行猶予の言渡しがないとき
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられたことが発覚したとき

一部執行猶予の必要的取り消しの場合

  • 猶予の言渡し後にさらに罪を犯し、禁固以上の刑に処せられたとき
  • 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁固以上の刑に処せられたとき
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられ、刑の全部に対して執行猶予の言渡しがないとき

依存性が高いとされている薬物事件や万引きなどにおいては特に注意が必要であり、執行猶予が取り消されてしまうことがあります。

執行猶予の裁量的取り消しについて

執行猶予に関しては、以下のような場合においても取り消されてしまうことがあるため注意しましょう。

全部執行猶予の必要的取り消しの場合

  • 猶予の期間内にさらに罪を犯し、罰金に処せられたとき
  • 保護観察に認定された者が遵守すべき事項を守らず、情状が重いとき
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられ、刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき

一部執行猶予の必要的取り消しの場合

  • 猶予の言渡し前にさらに罪を犯し、罰金に処せられたとき
  • 保護観察に認定された者が遵守すべき事項を守らず、情状が重いとき

執行猶予が取り消されるとどうなる?

上記のような事情により執行猶予が取り消されてしまった場合は、次にどのようなことが起きるのでしょうか?

執行猶予が取り消された場合、判決で言い渡された刑罰がただちに執行されることとなります。

さらに執行猶予が取り消される原因となった犯罪についての刑罰も、有罪判決の刑罰に加わります。

懲役の年数が増えることもあるため、執行猶予の取り消しによって刑罰の内容が変わってくるという点も念頭に置いておきましょう。

執行猶予の獲得に関しては法律に詳しい弁護士にご相談を

刑事事件において被告人に下される判決は、罪の重さや前科の有無、情状酌量などによって内容が異なります。

執行猶予がつくことで社会に復帰できるチャンスが高まるため、執行猶予を獲得したいと考える人は多いでしょう。

執行猶予を獲得するためには、裁判官に誠実さを伝えることが必要です。

その際、法律に詳しい弁護士に依頼することで、被告人の思いを正しく裁判官に伝えることが可能です。

被告人がすぐに社会に復帰できるよう、弁護士が全力でサポートします。

執行猶予をつけたいなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を

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この記事の監修者

大阪市の弁護士「阪倉篤史」

阪倉 篤史 弁護士

大阪市にある西横堀総合法律事務所、代表弁護士の阪倉 篤史です。
「日本一話しやすい弁護士」を目指して、日々研鑽に努めております。
執行猶予に関することなら、どうぞお気軽にご相談ください。