「人身事故により今までの生活が一変してしまった」
「示談交渉を正しく進めて納得のいく示談金を受け取りたい」
「示談の流れや示談金について詳しく知りたい」
人はいつ誰がどのような事故に遭うかわかりません。
人身事故については、怪我の状態により今まで通りの生活が送れなくなってしまうことがあります。
そのようなとき、少しでも日常生活を落ち着いて過ごせるよう受け取っておきたいものが示談金です。
今回は人身事故の示談交渉から示談金について、相場やポイント、注意点などを詳しくご紹介します。
Contents
人身事故の定義について
まず「人身事故とは」というところから見ていきましょう。
事故には、人身事故と物損事故があります。
事故の種類 | 内容 |
---|---|
人身事故 | 人の身体や生命に損害が発生した事故。危険運転致死罪や過失運転致死傷罪などが挙げられ、自動車運転免許の違反点数も加算される |
物損事故 | 物が傷ついたり壊れたりして損害が発生したが、人の死傷がなかった事故 |
人身事故と物損事故とは刑事罰に違いがあるのが特徴です。
さらに、人身事故においては自賠責保険が適用され、事故の被害者を救うために設けられています。
人身事故の示談交渉・示談金とは?
交通事故などの人身事故においては、示談交渉を行ない示談金について決める必要があります。
事故の状況や被害者の怪我の状態などに応じて適切に進めなければなりません。
ここでは人身事故における示談交渉とはどのようなものなのか、また示談金について説明します。
人身事故における示談交渉とは
人身事故の示談交渉とは、加害者と被害者との間で話し合いを行なった上で問題を解決する方法です。
裁判などではなく、事故の当事者同士で解決するという意味になります。
加害者と被害者との間で、主に次の内容を話し合って決めることになります。
当事者同士で決めるべき内容 | 詳細 |
---|---|
過失割合 | 加害者と被害者、それぞれのどれくらいの責任があるかを割合にして示したもの。過失割合の配分により、受け取れる示談金の額が前後する。 |
示談金の額面と内訳 | 事故で生じた損害に対する賠償金を示談交渉で決められることから「示談金」と呼ぶ。 |
当事者間が合意できればいくらの示談金でも良いとされているなか、決め方や相場を知っておくことで人身事故の内容に応じた金額を受け取ることができます。
示談金の決定だけでなく支払い方法や支払い期日などについても相談し、お互いが合意できれば示談は成立です。
示談交渉の相手は誰?
示談交渉は人身事故の加害者と直接行なう、というイメージを持っている人が多いでしょう。
しかし実際は、加害者が加入している任意保険会社と行なうケースがほとんどとなっています。
加害者が任意保険に加入していない場合は、被害者本人と交渉することになります。
被害者側も、自身が加入する任意保険会社に示談交渉を代行としてもらうことができるので、加害者と話し合いをするのが辛いといった場合は相談することが可能です。
ただし、被害者に過失がない人身事故の場合は、被害者自身で示談交渉を進めていくことになります。
任意保険会社が示談交渉できるのは、加入者損害賠償責任が生じている場合のみとなるためです。
示談の内容や示談金の内訳などと合わせて、交渉の相手が誰になるのかということも知っておきましょう。
人身事故の示談金について
まず示談金とは、交通事故などの人身事故で生じた損害に対して支払われる賠償金のことです。
示談は和解契約のことであり、示談交渉によって決められることから示談金と呼ばれ、慰謝料や治療費、休業損害などが含まれます。
人身事故で受け取れる示談金は、事故の状況などに応じて額面が変わってきます。
上記に記載した過失割合と示談金の額面について話し合いを進め、双方が納得できたときに示談金の詳細が決まるという流れです。
示談金については双方で衝突も起こり得るため、法律に基づいて決めていくのが理想的です。
人身事故で示談交渉をしないとどうなるのか
人身事故で示談交渉をしないままでいると、様々なデメリットが生じます。
デメリットを理解してから示談交渉に進むようにしましょう。
示談金を受け取ることができない
示談交渉をせずに人身事故の処理をしようとすると、示談金を受け取ることができません。
事故の状況によっては、治療費や車両の修理費などが発生します。
示談金がないとなると、治療費や修理費をすべて自身で負担しなければなりません。
怪我の状態により通院する期間が長くなり、治療費がかさむこともあるでしょう。
休職しなければならない場合は、収入が滞り生活にも困る恐れがあります。
以上の理由からまとまったお金を自身で用意しなければならないので負担が大きいです。
時効を過ぎると示談金を請求できなくなる
示談交渉というと面倒に感じたり、事故の被害者にとっては相手と話したくないと感じることもあるでしょう。
しかし交通事故などの人身事故に関する損害賠償請求権には時効があります。
時効を過ぎると示談金を請求できなくなるので、事故後は速やかに示談交渉に進み示談金までを決定することが大事です。
人身事故の示談の流れ
人身事故が発生した場合、その後の示談はどのように進んでいくのでしょうか?
実際の示談の流れを記載していくので、参考にしてください。
事故発生
事故が発生したら、速やかに警察に連絡をします。
病院での治療
人身事故に遭ったら早めに病院に行き治療を受けましょう。
医師の指示を守り、通院も続けるようにします。
完治、症状固定
怪我が完治または症状固定となったら、治療は終了となります。
後遺障害等級認定
怪我が完治せず症状固定となった場合は、後遺障害等級の申請を行なうことができます。
後遺障害等級が認定されるためには、怪我と事故の因果関係を証明する必要があります。
示談交渉
通院が終了した時点や後遺障害等級の結果が出た時点で、相手との示談交渉がスタートします。
示談成立
当事者同士の間で示談の内容に合意ができたら、示談書に署名をして示談が成立となります。
一度示談書に署名・捺印すると示談の撤回や再交渉などができないため、注意しましょう。
示談不成立
相手方が示談内容に同意できないとなると示談不成立になり、裁判で争うことになります。
示談金の支払い
相手方から、示談金が支払われます。
人身事故における示談金の内訳と相場
人身事故で示談交渉を進め示談金を決定していくなかで、どのようなものが示談金に含まれるのかを知っておくことが重要です。
示談金の内訳や相場について、以下をご覧ください。
示談金の内訳
示談金には、次のようなお金が含まれます。
損害賠償金
損害賠償金は、示談金と同じ意味になります。
ただし、示談だけでなく裁判などで決まった金額も含まれるのがポイントです。
慰謝料
交通事故などの人身事故で精神的苦痛を負ったとするときに支払われるのが、慰謝料です。
示談金の一部に含まれるのが、慰謝料ともいえます。
慰謝料も含めて、示談金には様々なものがあるため、以下をご確認ください。
示談金に含まれる費用 | 内容 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、通院交通費、入院雑費、診断書発行費など |
入通院慰謝料 | 治療費、通院交通費、入院雑費、診断書発行費など |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への補償 |
死亡慰謝料 | 被害者が死亡した精神的苦痛への補償 |
後遺障害逸失利益 | 後遺障害が残らなければ得られていたはずである収入や利益 |
死亡逸失利益 | 被害者が死亡しなければ得られていたはずの収入や利益 |
休業損害 | 事故の怪我により仕事を休んだ際の減収分 |
その他、葬儀費用や車の修理費、家の改造費など
示談金の相場
示談金は、請求する項目や過失割合によって額面が変わるため、相場は設けられていません。
一方、示談金の中に含まれる慰謝料に関しては、入通院期間などを参考に算出されるため相場が決まっています。
さらに、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のどれによって算定されるかにより、慰謝料の金額が大きく変わってきます。
3つのうち、最も高額となるのが弁護士基準です。
過去の裁判例をもとに作られている基準になり、弁護士のみ請求することができます。
相手方の保険会社が提示してくる慰謝料は、基本的には任意保険基準です。
弁護士基準で請求できれば増額が期待できるので、人身事故などにおける示談では弁護士に相談すると有利になります。
ここでは、上記で紹介した示談金の内容に沿って、一般的な目安額を記載しましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料には、付添看護費や入院雑費などが含まれます。
項目ごとに、いくらくらいの費用を補償してもらえるのか見てみましょう。
- 付添看護費・・・近親者が介護する場合は入院1日につき6,522円、通院の場合は1日3,300円
- 入院雑費・・・1日あたり1,500円
その他、器具・装具の購入費や診断書費用などが入通院慰謝料の中に含まれています。
後遺障害逸失利益
人身事故によって後遺障害が残ったとき、後遺障害逸失利益を請求できます。
身体に障害が残り、以前のように働けなくなったことにより、将来得ることができなくなった収入を算出して金額を決めるのが後遺障害逸失利益です。
後遺障害逸失利益は、以下の算定式を使って算出していきます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数=後遺障害逸失利益
死亡逸失利益
生きていれば本来得られていたはずだった収入を計算したものが、死亡逸失利益です。
死亡逸失利益も算定式があるため、確認しておきましょう。
年収×就労可能年数に対するライプニッツ係数×(1‐生活費控除率)=死亡逸失利益
休業損害
怪我により仕事を休業することになったら、休業損害を請求できます。
休業損害は、次の算定式で算出されます。
3ヵ月の給与額の合計額÷90日×休業日数=休業損害額
家事も労働と認められるので、専業主婦の人が人身事故に遭った場合も休業損害を受け取ることができます。
葬儀費用
人身事故により被害者が死亡した場合、葬儀費用を請求できます。
葬儀以外の仏壇購入費や墓石を建てる際の費用などは、状況に応じて判断されます。
支払ってもらえる葬儀費用は、保険会社などによって金額が変わるため以下を参考にしてください。
- 自賠責保険・・・60万円
- 自賠責保険を超える場合・・・100万円以内
- 裁判で認められる金額・・・150万円以内
軽傷の場合に示談金は受け取れる?
人身事故による怪我が軽傷である場合であっても、示談金の請求は可能です。
ただし、怪我の程度や症状によって示談金が変わってきます。
特に慰謝料や逸失利益は怪我の程度が金額に反映されるので、受け取れる示談金の額面が変動します。
怪我がない場合は慰謝料を請求することができません。
人身事故の示談金を適切に受け取るためのポイント
人身事故は事故の被害状況により怪我の程度も変わるため、その後の生活にも大きな影響が及びます。
被害者の状況に合った示談金を受け取れるよう、いくつかのポイントを確認しておきましょう。
物損事故ではなく人身事故として示談を進める
人身事故の他に、物損事故があります。
人身事故は人の死傷が生じた事故のことを、物損事故は人の死傷がない事故のことを指し、両者の違いは大きいです。
実際の事故の現場では、被害者が怪我をしているにもかかわらず、加害者側が物損事故として届け出るようにと言ってくることがあります。
人身事故なのに物損事故として処理された場合のデメリットとしては以下の点が挙げられます。
治療費や慰謝料を受け取れない可能性がある
物損事故として届出されると、書面上では人に被害が出ていないということになります。
ここから、治療費や慰謝料などの費用を受け取れなくなる可能性が高いです。
怪我を負い病院に通っているのに物損事故扱いにされたとなると、事故での怪我により必要となった治療費などをすべて自身で支払わなければなりません。
事故後の生活を少しでも保障してもらえるよう、怪我を負っている場合は人身事故であることを強く主張しましょう。
過失割合の決定が大きく左右される
物損事故として届出されることで、事故に関してまとめた書類が簡素なものになります。
事故状況を証明する書類が少なくなることから、加害者が主張する誤った事故状況に関して反論しにくくなってしまうためです。
その結果、過失割合にも大きな影響が及び、受け取れる示談金の額面にも違いが生じてきます。
人身に被害が生じている事故であるならば、物損事故として届出が行なわれた後も速やかに診断書を持って警察に提出し、人身事故に切り替えてもらうようにしてください。
弁護士に相談する
人身事故における示談では、いざ示談となると加害者が内容に対して納得できないと反論してくることがあります。
そのようなとき、頼りになるのが弁護士です。
交通事故をはじめとした人身事故に強い弁護士は多く、法律や過去の裁判例に基づいて適切に示談金の交渉を進めてくれます。
怪我の程度や精神的苦痛などにより、大きな影響を受けているのは被害者です。
被害者が納得できる賠償金を受け取れるよう、弁護士が全力で示談交渉を引き受けてくれます。
加害者側とうまく示談を進められるかわからない、賠償金に応じてくれそうにないという場合は相談しましょう。
示談金に関する注意点
人身事故で被害の状況に合った示談金を受け取れるよう、次の注意点も念頭に置いておきましょう。
請求の可否で争いが起きることがある
示談金の請求に関して争いが起きる場合があるため注意が必要です。
具体的にどのような点で揉めるのか、いくつか例をご紹介します。
介護費用の請求において日額や期間で揉めることが多い
後遺障害等級が認められて示談交渉を進めるとなると、将来の介護費用も示談金の中に含まれます。
しかし加害者側から、将来本当に介護が必要なのか、示談の段階で費用を断定するのは難しいという点から介護費用を少なくしようと交渉してくることがあるのです。
交渉がうまくいかなかった場合、最悪介護費用を全く受け取れないことがあります。
示談成立後の追加請求や示談のやり直しは原則難しいので、介護費用でトラブルになることが多いのです。
学生に影響しやすい費目で揉めることがある
交通事故にあった被害者が学生であるとき、学生という立場が影響して示談金で揉めることがあります。
学生であっても休業損害と逸失利益は受け取ることができます。
交通事故によりアルバイトができなくなった、事故の影響で留年・内定取り消しとなったという場合、休業損害の請求が可能です。
逸失利益については年齢や学歴が影響するため、学生という立場を踏まえて計算式に基づき逸失利益を計算し算出します。
その他、学生が交通事故に遭うことで休学や留年などを強いられた場合、余分に必要になった学費や教材代、休学による学習の遅れを取り戻すための塾費用、入通院や通学に付き添った両親への補償などを請求することができます。
そうなると学生であるために発生する費目について加害者が納得せず、争いになることがあるのです。
相場より高くなるケースがある
示談金が相場より高くなるケースがあり、それに対して加害者が了承しないという場合もあります。
たとえば以下のような場合、示談金が相場より高くなりやすいです。
- 生死が危ぶまれる状態が続いた
- 麻酔無しの手術などで大きな苦痛を受けた
- 繰り返し手術を受けた
算定表をもとに、示談金の中の入通院慰謝料が増額されることがあります。
加害者の態度が悪いときも、示談金の増額が見込めます。
示談のやり直しはできない
一度示談が成立すると、その後の撤回ややり直しは基本的にはできません。
示談後に後遺障害が発症した際は示談金を請求できることがありますが、事故との因果関係を証明する必要があるので難しいといえます。
示談は加害者と被害者の双方が合意した内容を記載し、両者の署名・捺印により示談成立となります。
一度示談書の取り交わしが行なわれたら、内容の変更や追加請求ができません。
示談のやり直しはできないと考え、示談交渉や示談書の作成を行ないましょう。
できるだけ早く示談交渉に入る
人身事故の示談は、できるだけ早く交渉に入るようにしましょう。
急ぐあまり慌ててはいけないものの、消滅時効により権利が消滅したり、証拠が散逸することがあるためです。
多くの証拠が残っている事故現場ですが、時間の経過とともに風化してしまいます。
正しく過失割合をすることが困難になる恐れもあるので、証拠を押さえたらできるだけ早く示談交渉に入りたいです。
消滅時効の制度により一定期間権利を行使しない場合権利消滅を主張できなくなるため、早めの示談交渉が重要です。
加害者が保険に加入していない場合は賠償金に上限がある
加害者が保険に加入していない場合、受け取れる賠償金には上限があります。
加害者の保険状況に合わせて、請求の流れや補償してもらえる金額について確認しておきましょう。
加害者が任意保険に未加入であるとき
加害者が任意保険に加入していない場合、被害者自身で加害者の自賠責保険に直接賠償金を請求することができます。
被害者請求と呼ぶ方法になり、加害者の自賠責保険から請求を取り寄せた後に必要書類と一緒に提出することで請求できる仕組みです。
加害者の自賠責保険については交通事故証明書に記載されているため、被害者自身で動くことができます。
しかし、自賠責保険からの賠償金には上限があり、傷害による損害は120万円までしか補償されません。
請求できる額面には限りがあるため、自賠責保険に賠償金を求める際は知っておきましょう。
加害者が任意保険・自賠責保険の両方に未加入であるとき
加害者が、任意保険だけでなく自賠責保険にも加入していないことがあります。
そのようなケースにおいては、加害者本人に対して賠償金の支払いを請求することになります。
加害者に直接連絡をしてやり取りをしたり、内容証明郵便を送って状況を確認するといった方法で賠償金の請求が可能です。
加害者が賠償金の支払いに応じないときは、裁判を起こして裁判所から支払うよう命じてもらうことになります。
示談金は示談成立後すぐに受け取れるとは限らない
事故後の示談が無事成立した後、すぐに示談金が受け取れるとは限りません。
保険会社によって異なるものの、示談金が支払われるまでに数週間から1ヵ月ほどかかることがあります。
少しでも早く示談金を受け取りたい場合は、自賠責保険に仮渡金を請求する、または自身が加入している任意保険の特約を利用するといった方法を検討してみましょう。
任意保険の特約を利用するときは、自身の過失割合を踏まえて特約が適用できるかどうかを考えなければなりません。
人身事故の示談交渉は弁護士にお任せを!適正な示談金を算出して交渉を行ないます
人身事故に遭った場合は、事故の証拠を確実に残した状態で速やかに示談交渉に入るべきです。
被害者としては加害者に然るべき責任を取ってもらいたいところですが、加害者が非を認めず、示談が成立しないこともあります。
そのようなときは、示談交渉を効率よく進めてくれる弁護士に相談してみましょう。
事故の状況や被害者の怪我の状態などから適正な示談金を算出して、交渉も代わりに行ないます。
示談について不安がある、疑問を感じているというときは、いつでも弁護士にご相談ください。
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