最近ニュースで耳にすることがある体罰問題、子どもへの体罰は法律で禁止されている行為であるため世間から注視されています。
平成25年度に文部科学省から発表された調査報告によると、国公私立の小学校・中学校・高校などにおいて発生した体罰の状況は、6,700件以上と多くなっています。
現実において、体罰を受けている子どもがいるという事実を示しているといえるでしょう。
では、もし子どもが学校で体罰を受けた場合、保護者はどのように対応すれば良いのでしょうか?
本記事では体罰の定義から弁護士に相談するメリットまで、詳しく解説します。
Contents
体罰とはどのような行為を指す?
体罰と聞いて、みなさんはどのような行為を思い浮かべますか?
法律で禁じられている体罰ですが、具体的な内容について確認しておきましょう。
体罰とは、殴る蹴るなど身体に危害を加える行為や肉体的苦痛を与える行為のことを指します。
体罰は、学校教育法第11条において以下のように禁止されています。
“校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めることにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。
ただし、体罰を加えることはできない。”
この法律より、教員はいかなる場合も体罰をしてはいけないと決められています。
さらに詳しく体罰の内容について見てみると、以下の通りです。
身体を侵害する行為
・授業態度について注意したが子どもが無視したため、子どもの頬をつねった
・子どもが反抗的な態度をとったため、頬を平手打ちした
・子どもの態度がなっていないことから突き飛ばして転倒させた
肉体的苦痛を与える行為
・放課後に子どもを居残りさせ、トイレに行きたいと言ったが部屋を出ることを許さなかった
・個別指導のため、子どもを長く部屋に留まらせ、部屋から出ることを許可しなかった
・課題を忘れた子どもに対して、長い時間正座をさせた
言葉の暴力
体罰には、言葉の暴力も含まれます。
状況や暴言の内容によっては不適切な指導に当てはまり、体罰と認められる場合があるため注意が必要です。
文部科学省の「運動部活動での指導のガイドライン」においても、指導する際子どもの人間性を否定するような行為・言動は許されないと記載されています。
ののしる、馬鹿にする、威嚇する、犯人扱いをするなどのケースが、体罰の中に含まれる言葉の暴力に該当する可能性があるのです。
ケースによって体罰の内容に差があるものの、文部科学省は上記のような事例を参考として挙げています。
体罰の例外について
法律にも定められている通り、体罰は禁止されている行為です。
しかし、例外もありますので、次のような行為に関しては正当防衛とみなされます。
- 子どもが教師に対して暴力をふるったため、子どもの身体をきつく押さえた
- 子どもが他の子どもを殴っていたため、子どもの肩をつかんで離した
- 全校集会のときに、集会を妨害するような行為をした子どもに対して指導しようとしたら抵抗をつづけたため、腕を引っ張って場所を移動させた
- 授業中、教室内に立たせた
- 学校の当番を多く割り当てた
- 練習に遅れた子どもに対して試合に出さずに見学させた
体罰について弁護士に相談するメリット
学校の対応に納得がいかない、法律に詳しい人に直接対応してもらいたいと考えるとき、頼りになるのが弁護士です。
ここでは、体罰について弁護士に相談するメリットを見ていきましょう。
学校、教育委員会と話し合いを行なう
学校現場での体罰についてきちんと対応してもらいたいと考えるとき、弁護士に相談することで話し合いをスムーズに進めてくれます。
被害を受けた子どもの立場になり、学校などに直接対応するよう伝えることが可能です。
さらに学校の対応が不適切である場合、上位機関へ抗議文などを提出することもできます。上位機関へ抗議文などを提出することができるという点から、学校側のスピーディーな対応を期待できるようになるでしょう。
賠償金の適正な金額を算定してもらえる
体罰により被害生徒が怪我を負った場合、損害賠償請求を行なうことができます。
損害賠償請求を行なう前に確認しておくべき内容が、体罰によりどのような損害を受けたのかという点と、損害を金銭的に換算しておくことです。
損害賠償にはいくつかの項目が挙げられますが、その中に含まれる慰謝料に関しては正しい金額を算定することが難しいです。
このような流れから、弁護士に相談することで適正な賠償金の金額を算定してもらうことができます。
教師や学校側に損害賠償請求を行なう
学校現場における体罰で被害を受けた子どもが肉体的・精神的苦痛を負ったとき、学校側に損害賠償請求を行なうことができます。
弁護士を交えて学校側と話し合いを重ね損害賠償の内容について確認をしていく流れになりますが、被害生徒側が納得のいく形で解決するためには訴訟まで進む必要があるでしょう。
このように話し合いから訴訟まで進んでいくなかで、満足のいく結果で解決できるよう弁護士がサポートします。
法律や損害賠償金について詳しい弁護士のもと学校側とやりとりを重ねていくなかで、被害生徒側が安心できる結果へと導くことができるのです。
教師に追求できる体罰に関する責任
体罰根絶に向けた取り組みの徹底について、文部科学省は平成25年に通知を出しました。
体罰の未然防止として体罰の禁止・部活動指導における体罰防止の取り組みを、徹底した実態把握および早期対応、事案に応じた厳正な処分、再発の防止などに努めることなどが記載されています。
学校現場で教師から子どもに対して行なわれることのある体罰。
状況を整理しながら、弁護士を交えて解決のための話し合いを進めていくことが大事です。
弁護士に相談すると、様々な情報を集めたうえで抗議文の作成や損害賠償金の算定など幅広く対応してもらえます。
教師に追求できる「体罰に関する責任の内容について」の知識も得たうえで、体罰問題と向き合っていくことが大切です。
民事責任
体罰は民法における不法行為に該当する可能性があり、損害が生じた場合賠償する義務が発生します。
民法第709条によると、以下のように定められています。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(民法第709条)
体罰が起きた現場が公立学校か私立学校かで対応が変わってくるため、それぞれのケースについて確認しておきましょう。
公立学校の場合
公務員である教師が故意・過失によって違法に他人に損害を加えた場合、国または公共団体に直接損害賠償責任が発生します。
体罰を行なった教師本人に対して、損害賠償の請求を行なうことはできません。
私立学校の場合
教師は公務員ではないため、体罰の事実が確認された場合は教師本人に対して損害賠償請求を行なうことが可能です。
体罰に関する損害賠償請求を行なう流れとしては、示談で学校や教師と話し合う、裁判で学校や教師を訴えるといった方法があります。
最初は示談で解決を図り、解決に至らなかった場合裁判へ移るといった流れで損害賠償請求を進めていきます。
行政責任
体罰問題における行政責任では、体罰を行なった教師の行為が違法であると判断をして、任命権者が教師に対して懲戒処分を行なうことができます。
懲戒処分は内容によりその重さが異なり、次のように定められています。
体罰の行政責任 | 詳細 |
---|---|
免職 | 公務員としての職を失わせる |
停職 | 公務員としての身分を保持しつつ、一定期間職務に従事させない |
減給 | 公務員としての俸給の支給額を減額する |
戒告 | 対象となる公務員に対して、戒める内容の申し渡しを行なう |
刑事責任
最後に解説するのが、刑事責任です。
体罰によって子どもが怪我などを負った場合、教師の行なった行為が犯罪行為に該当する可能性があります。
刑法の中の暴行罪や傷害罪にあたるため、刑事責任を負う必要が出てくることが考えられるのです。
暴行罪と傷害罪についての刑法に関して、詳しくは以下をご覧ください。
体罰の刑事責任 | 詳細 |
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刑法第208条(暴行) | 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 |
刑法第204条(傷害) | 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 |
体罰を受けたときは弁護士に相談してスムーズな解決を
体罰は、被害を受けた子どもにとって精神的・身体的に大きな苦痛を伴います。
体罰の定義や教師に追求できる体罰の責任を確認したうえで、弁護士に相談するメリットを押さえてみましょう。
法律に詳しく、体罰に関する問題に向き合ったことのある弁護士であれば、被害を受けた子どもとその家族をケアしつつベストな解決法へと導いてくれます。
体罰のことで悩んでいる、誰に相談したら良いかわからないとお悩みの場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
学校の体罰に関するトラブルのことなら大阪の弁護士「西横堀総合法律事務所」へご相談を
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