交通事故ではときに死亡事故になることがあり、被害者の遺族は突然の訃報に大きな悲しみとショックを受けることになります。
大切な人を失った悲しみは、いつまで経っても癒えることがないでしょう。
事故で亡くなった被害者の命は、お金に換えることはできませんが、遺族ならせめて加害者から悲しみ相当の補償を得たいと考えるはずです。
ここでは死亡事故における慰謝料の相場について、損害賠償請求の流れや弁護士に相談する利点などを解説します。
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死亡事故で請求できる損害賠償金
死亡事故が発生した場合、遺族は加害者側と示談を行ない、慰謝料を請求することができます。
死亡事故で請求できる損害賠償金には、以下の4つが挙げられます。
- 治療費
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 葬儀関係費用
それぞれポイントを押さえておきましょう。
治療費
交通事故に遭い、被害者が一定期間入院や通院を行なった後に亡くなった場合は治療費を請求できます。
入院や通院の期間に応じて発生した治療費や入院費、付添費などを損害賠償金として請求することができるのです。
治療費は、1日あたり1,500円程度を目安に算出されます。
近親者が付き添った場合、付添費はどの基準かによって次のように金額が変わってきます。
算定基準 | 金額 |
---|---|
自賠責保険 | 平均1日4,200円 |
弁護士基準 | 平均1日6,500円 |
また、職業付添人による付添費は実費となります。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故で被害者が死亡した際に支払われるものです。
この死亡慰謝料には以下の2種類あります。
- 被害者本人の慰謝料
- 遺族の慰謝料
被害者本人の慰謝料
そもそも慰謝料とは、交通事故により受けた精神的苦痛に対する補償です。
死亡事故の場合も被害者には大きな精神的苦痛があったと考え、被害者本人の慰謝料請求権が認められています。
この慰謝料請求権は相続人に相続される形になるので、相続人である遺族が加害者に対して被害者本人の慰謝料を請求できます。
遺族の慰謝料
死亡慰謝料には、被害者本人の慰謝料とは別に遺族の慰謝料も含まれます。
大切な人を失った悲しみや苦痛は遺族にとって大きなショックであるため、遺族が受けた精神的苦痛に対しても支払われるのです。
事故で亡くなったのが父母や子ども、配偶者であった場合、遺族の慰謝料も請求することができます。
死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、被害者が事故で死亡していなければ将来得ていたであろう収入や利益のことを指します。
被害者の属性によって死亡慰謝料の金額が変わるところが特徴です。
会社員や主婦、子どもなどと比較すると金額に大きな幅が出てきます。
これは被害者の収入や立場、年齢などによって死亡逸失利益が計算されるためです。
死亡逸失利益については、以下の計算式を用いて決めていきます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
葬儀関係費用
死亡事故では葬儀に関する費用、例えば通夜や葬儀、火葬などにかかる費用を、損害賠償金として請求できるようになっています。
交通事故の損害賠償金はいくつか算定基準があるので、その基準によって支払われる額が変わってくる点に注意が必要です。
葬儀関係費用に関してみると、算定基準によって次のようになっています。
算定基準 | 金額 |
---|---|
自賠責基準 | 一律100万円 |
弁護士基準 | 上限150万円 |
死亡事故における慰謝料の相場
死亡事故における慰謝料は、その算定基準によって額面が異なります。
そこで、自賠責基準・弁護士基準・任意保険基準と3つの基準から慰謝料の相場を見ていきましょう。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険取扱会社が慰謝料算定の際に用いる基準です。
交通事故の被害者を最低限補償するためのものなので、3つの基準の中でももっとも低い額になります。
自賠責基準における請求対象者 | 死亡慰謝料 |
---|---|
被害者本人 | 400万円 |
請求者1人 | 550万円 |
請求者2人 | 650万円 |
請求者3人以上 | 750万円 |
被扶養者がいる場合 | 200万円 |
遺族固有の慰謝料については、請求者の人数や被害者の扶養の有無によって金額が変わります。
弁護士基準
弁護士基準とは、弁護士や裁判所が慰謝料を算定する際に用いる基準で、3つの基準の中でも最も高額になるのが一般的です。
弁護士基準における請求対象者 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱(被害者の収入を主として生計を維持していた者) | 2,800万円 |
配偶者・専業主婦、専業主夫 | 2,500万円 |
上記以外 | 2,000万円~2,500万円 |
弁護士基準では、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料との総額が相場として記載されています。
被害者の属性などによって金額が異なるのもポイントです。
弁護士基準で死亡慰謝料を請求したいと考える場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社が自賠責保険でカバーしきれない損害を支払う場合のものになります。
任意保険会社がそれぞれ独自に金額を定めており、自賠責基準に少し上乗せされた程度の額面となっていることが多いです。
詳細については非公表となっているので、必要となったときに任意保険会社に相談して詳しいことを教えてもらうことになります。
死亡事故の慰謝料が増額されるケース
死亡事故の慰謝料は、事故の状況などから増額が期待できる場合があります。
たとえば以下のような事情のとき、慰謝料の増額が考えられます。
- 故意、殺人と言えるほど悲惨な事故であった
- 複数の人が亡くなるような危険な事故であった
- 加害者によって事故の証拠が隠滅された
- 加害者が事故に関して虚偽の発言をした
- 加害者の被害者遺族に対する態度が不誠実であった
- 飲酒運転やひき逃げ、スピード違反など加害者の運転が悪質であった
- 被害者遺族への健康面や仕事面、学業面において大きな影響が出た
- 交通事故で亡くなったのが子どもであった
被害者とその遺族に大きな精神的苦痛を与えるような悪質な交通事故であった場合は、死亡慰謝料が増額されます。
事故の状況や加害者の対応をよく見ておくことが重要です。
また、事故で亡くなった者が子どもであった場合、両親やその兄弟が受ける精神的苦痛はひと際大きいと考えられ、死亡慰謝料が増額されやすいです。
その他、事故の被害者が妊婦であったとき、胎児も一緒に亡くなれば死亡慰謝料が増額されることになります。
法的には胎児に対する慰謝料が認められていないものの、妊婦本人の死亡慰謝料は増額することがあるのです。
死亡事故の慰謝料が減額されるケース
交通事故の死亡慰謝料は、増額されるケースもあればその反対に減額されるケースもあります。
ここでは、どのようなケースにおいて慰謝料が減額されることがあるのかを押さえていきます。
過失相殺
死亡事故となると加害者側が一方的に悪かったのだろうと思いがちですが、実際には加害者に全責任があるとは限りません。
交通事故における示談交渉では、被害者と加害者両方ともの過失について考える必要があります。
これを過失割合といい、その割合によって損害賠償金が算出されるようになっています。
被害者にも過失があった場合、過失割合に応じて賠償金が減額されることがあるのです。
このような過失相殺によって、被害者が死亡するような事故であっても慰謝料が減額される場合があります。
損益相殺
損益相殺とは、二重の利益を防ぐものです。
死亡事故の被害者とその遺族は、事故で損害を被った原因と同じ原因によって利益を受けることがあります。
受領済みの遺族厚生年金や休業補償給付金などは、損益相殺として加害者から支払われる賠償金のなかから控除されるのです。
たとえば、交通事故の損害の総額が500万円のとき、そのうちの50万円を保険会社から先に受け取っていた場合、この50万円が引かれることなく500万円の保険金が支払われると50万円分二重に受け取ったことになります。
500万円から50万円を差し引いた450万円が支払われるように調整を行なうのが損益相殺です。
ちなみに損益相殺では、生命保険金や生活保護法による扶助費、見舞いなどは控除されません。
死亡事故における損害賠償請求の流れ
死亡事故における慰謝料の詳細や相場について確認した次にどのように損害賠償を請求していくのか、詳しい流れをご紹介します。
損害賠償請求は、以下に挙げる流れで進んでいくことになります。
- 被害者の死亡に関する事務処理を行なう
- 加害者側と協議を行なう
- 加害者側との訴訟に移る
被害者の死亡に関する事務処理を行なう
交通事故により被害者が死亡した場合、行政には死亡届を提出するなどの事務処理が発生します。
市役所に相談して、一つずつ手続きを進めていくことになります。
行政とのやり取りに加え、被害者の葬儀やその後の法要、財産の相続処理なども行なうことになり、遺族が対応すべき事柄は数多くあるのです。
なので、加害者側との協議は四十九日法要を終えてから開始すると落ち着いて対応することができるでしょう。
加害者側と協議を行なう
加害者が任意保険に加入していた際、その保険会社から損害賠償金について提示があります。
ここで重要となるのが、提案された内容が妥当であるかどうかの判断です。
妥当な内容である場合はそのまま補償に関する処理を進めていくことになりますが、処理をした後に新たに追加の請求はできないため、内容をよく確認し、慎重に手続きを進めることが重要です。
不安を感じるときは、この段階で弁護士に相談することで力になってくれるでしょう。
また、被害者が任意保険会社に加入していない場合は、強制加入の自賠責保険から補償内容についての提示があります。
自賠責保険は最低限の補償を目的としていますが、死亡事故である場合は最大3,000万円まで賠償金が支払われます。
加害者側との訴訟に移る
被害者側の過失割合などについて被害者側との協議が順調に進められるようであれば、訴訟にはならずに解決という形になります。
もし協議が不調となったときは訴訟手続きに入りましょう。
訴訟を起こす際は、被害者の過失割合などをまとめ、これらを主張する書面を裁判所に提出していくことになります。
死亡事故の賠償金を増額するためのポイント
死亡事故が発生した後の遺族の悲しみは大きく、せめて適正な賠償金を受け取りたいと考えることでしょう。
多くの人が平均と紹介されている金額よりも増額したいと考えるものです。
そこで、死亡事故の賠償金を増額するため、遺族ができることについて解説します。
示談交渉を急がない
死亡事故における賠償金に関しては示談交渉によって決まります。
このとき、示談交渉を急がないようにしましょう。
加害者側の刑事裁判が確定する前に示談が成立すると、加害者に対する量刑が軽くなることがあるためです。
その他、示談交渉を早まったがために、任意保険基準や自賠責基準によって算出された賠償金を受け取る形になります。
弁護士基準で算出された賠償金がもっとも高額になる可能性が高いなか、任意保険基準や自賠責基準の少ない額の賠償金額になる恐れがあるので、示談交渉は慎重に進めていきましょう。
死亡事故に詳しい弁護士を見つける
死亡事故によって被害者を失った遺族としては、少しでも早く弁護士を見つけて依頼しなければと慌ててしまうことがあります。
しかし、交通事故案件の経験が少なかったり、交通事故にあまり詳しくない弁護士に依頼すると、解決までに時間がかかったり、慰謝料も適正に受け取れない場合があります。
なので、死亡事故に詳しい弁護士は少し時間をかけてでも選んでください。
死亡事故の慰謝料は相続の対象にもなることから、慰謝料の額面だけでなく相続においても協議がまとまらない可能性も起こり得るため、そのような場合でも死亡事故に強い弁護士に相談すると無事に解決することができるでしょう。
死亡事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリット
死亡事故の示談交渉は、被害者遺族にとって辛いものであると同時に適正に補償してもらいたいとも考えるものです。
納得のいく慰謝料を受け取れるようにするためには、プロに相談する方法があります。
死亡事故による損害賠償金で困っているときは、交通事故案件に詳しい弁護士に相談してみましょう。
死亡事故の示談交渉を弁護士に依頼するメリットを3つ挙げます。
弁護士基準での慰謝料請求ができる
弁護士に死亡事故の示談交渉の段階から任せれば、弁護士基準での慰謝料請求が可能です。
慰謝料を算定していくための基準には3つあると前述しましたが、その中でももっとも高額となるのがこの弁護士基準です。
遺族の悲しみや無念を晴らすため、また遺族の生活のことも考えれば適正な慰謝料を受け取ることは当然の権利です。
また、弁護士に頼れば慰謝料以外の損害賠償金も請求できる可能性があります。
交通事故に詳しい弁護士であれば様々な事例に対応してきているはずなので、しっかりとサポートしてくれるでしょう。
死亡逸失利益の増額が期待できる
死亡事故について弁護士に相談すると、死亡逸失利益の増額が期待できます。
死亡逸失利益に関して、保険会社は個別の事情を考えずに被害者の事故に遭う前年の収入を基礎収入にするなどの対応をとることがあります。
これでは死亡逸失利益に関して、適正に受け取ることができません。
しかし、弁護士が一人ひとりの事情を主張して交渉することで、正しい死亡逸失利益を認められることがあるのです。
逸失利益についても弁護士基準が適用されれば、賠償金の増額に繋がります。
加害者や保険会社との交渉で疲労しない
被害者が事故で亡くなれば、遺族は大きな精神的苦痛を受けている中で加害者と交渉を進めていかなければなりません。
しかし、そのような中でも補償の交渉では一度受け入れた場合後戻りができないので、損失額などについて慎重に判断する必要があります。
このようなときにも弁護士がいれば専門的な知識や経験をもとに適正に進めてくれます。
加害者とやり取りが精神的に辛いときも、すべて弁護士が対応してくれるので被害者側の心身の負担を大きく軽減することができます。
加害者からの見舞金と死亡慰謝料との関係について
死亡事故の被害者遺族としては、事故後に加害者と示談を進め慰謝料を含めた損害賠償金を請求することになります。
このとき、加害者が見舞金を用意している場合があります。
加害者からの見舞金は受け取っても良いのか、死亡慰謝料には関係してくるのかについて考えてみましょう。
まず、加害者からの見舞金は、受け取っても問題ありません。
しかし、加害者が見舞金として損害賠償金の一部を支払っているような場合、損害賠償金からその見舞金の金額が差し引かれることになります。
そのため、加害者からの見舞金を受け取るときは、どのような意図で支払われるものなのかを明確にしておきましょう。
見舞金を受け取ったことで、刑事裁判に発展した際に情状酌量の余地があると判断され、加害者の刑事罰が軽くなる可能性もある点を理解しておいてください。
事故で人が亡くなったという重い事実を加害者に理解してもらいたい、償ってもらいたいと考える場合は、見舞金の受け取りを拒否することも考えてみましょう。
納得のいく死亡事故の慰謝料を受け取るために弁護士が力になります
交通事故で亡くなった被害者はもう戻ってこない存在であり、遺族にとっては計り知れない悲しみでしょう。
しかし、残された遺族には被害者のことを思うため、また遺族が生活していくために慰謝料を受け取る義務があります。
詳細について確認し、不安に感じることがある場合は交通事故案件に詳しい弁護士に相談することを検討してください。
弁護士は、様々な案件に対応しているため、経験や知識が豊富です。
さらに弁護士基準で算定された慰謝料は高額になるため、遺族のこれからの不安などを少しでも取り除くことができるでしょう。
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