「行政指導と行政処分って何が違うの?」
「行政処分を受けたけれど不服がある」
この記事では、上記のような疑問やお悩みを抱えている人に、行政指導と行政処分の違いから、行政処分の不服申し立てを行なう流れについて詳しく説明します。
行政手続法についても確認し、万が一行政指導や行政処分を受けたときに冷静に対応できるようにしましょう。
Contents
行政指導とは?
最初に、行政指導とはどのような意味を指すのか詳しく見ていきます。
行政指導に従わなかった場合にどうなるのか、またどのように対応すべきなのかについても確認していきましょう。
行政指導について
行政指導とは、行政機関から事業者や個人、法人などに対して行なわれる任意の協力のお願いになります。
行政目的を達成するために、勧奨や勧告、助言、指導、警告などを行なうことです。
できればこうしてもらえませんか?といった意味合いを含むお願いになるため、必ずしも従う必要はありません。
行政手続法第32条第1項においても、「行政指導はあくまで相手方の任意の協力によってのみ実現される」と定められています。
この行政指導に関しては、行政手続法において以下のように定義づけられているので確認しておきましょう。
行政手続法第2条第6号・・・行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するための特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
行政指導には3種類ある
行政指導には、3種類あります。
行政指導の内容と合わせて、種類も押さえておきましょう。
行政指導の種類 | 内容 |
---|---|
助成的行政指導 | 給付行政の一環として行われる行政指導のことであり、農業指導や経営指導などが挙げられます。 |
調整的行政指導 | 建築主と近隣住民とのトラブルの仲介など、利害の対立を調整して好ましい秩序を作るのが目的です。 |
規制的行政指導 | 物価の値上げ抑制や違法建築物是正など、公益実現の際に障害となる行為を予防・抑制するための行政指導のことを指します。 |
行政指導に従わないとどうなるのか
任意の要請である行政指導は、強制的な力が働いているわけではありません。
そのため上記で説明した通り、必ずしも従う必要はないのです。
行政指導に従わなかったからといって、不利益を被ることもありません。
しかし、不利益を受けないからといって確実に安心できるわけではないのです。
行政指導は、行政処分の前段階に当たるものなので、従わなかった後に行政処分が下されてしまう恐れがあります。
従わなくても不利益が生じない行政指導ですが、受けた場合にはその内容を把握して、正しく対応することが重要です。
行政指導への対応の仕方
基本的には任意である行政指導への対応ですが、ケースによっては対応しないことで行政処分に発展する可能性があるので気を付けてください。
さらに、会社が行政指導を受けたとなると社会的信用が低下するため経営上不利益が生じる場合もあります。
口頭で行政指導された際は、内容を明らかにした書面を請求することから始めましょう。
行政指導への対応方法として、以下の流れを参考にしてください。
書面の交付(行政手続法第35条第3項)
口頭によって行政指導を受けたときは、書面の交付を求めましょう。
行政指導の趣旨や内容などを明らかにした書面を確認することで、より詳細を把握することができます。
後に行政処分となるかもしれないリスクを考え、行政指導の内容を書面で受け取るようにしておきましょう。
行政指導の中止などを求める(行政手続法第36条の2)
行政指導は、内容を確認した後に中止や必要な措置を取ることができます。
行政指導には従わないという意思を明確にしているのにもかかわらず、何度も行政指導されるような場合は中止の措置を求めることができるのです。
行政指導において「警告」とされたら要注意
必ずしも従う必要がなく、状況によっては行政指導の中止を求めることもできるなか、「警告」の内容が発せられたときは慎重に対応しましょう。
法的な強制力がない行政指導ですが、「警告」は行政処分の一つ前の段階になります。
「警告」の次は行政処分となるので、行政指導の内容をよく確認しておくことが大事です。
行政処分とは?
行政指導の次に控えているのが、行政処分です。
行政指導は強制力を持っていませんでしたが、その指導内容によっては行政処分とされることがあるので気を付けなければいけません。
行政処分は、法律によって正しく定義されているものではありませんが、最高裁判所の判決では次のように定義づけられています。
【行政機関の行為によって「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」】
行政処分の具体的な内容について、一部例をご紹介しましょう。
行政処分の内容例 | 詳細 |
---|---|
改善命令 | 監督官庁が利用者を保護する上で問題があると判断した場合、法律に基づいて行われます。行政処分を受けた企業などは、業務改善計画を提出し、進捗状況を報告しなければなりません。 |
業務停止命令 | 一定期間、業務の一部または全部を停止する命令です。建設業や金融機関、メーカーなどで下されることがあります。 |
飲食店の営業停止処分 | 営業停止になる他、各自治体のホームページなどで処分内容や食中毒事件の概要、指導内容といったことが公表されます。 |
許可取消処分 | 産業廃棄物収集運搬業許可や産業廃棄物処分業許可の取り消しなどが挙げられます。不法投棄などにより下されることがあります。その他、介護事業における不正行為の指定取り消しや指定の効力停止といった処分も該当します。 |
運転免許証の取り消し、停止処分 | 交通事故や違反の繰り返しなどにより運転免許証が取消・停止処分になる場合があります。違反などの内容に一定の点数をつけて、過去3年間の累計点数などに応じて免許の取消が行なわれます。 |
税金の滞納処分 | 法定納期限の期日までに納付されていない税金について、徴収権者が税金にかかる債権を滞納者の意思に関わらず実行するのが、税金の滞納処分です。 |
建築確認 | 建築基準法に基づき、建築計画などが建築基準法令や建築基準関係規定に適合しているかどうかを工事の前に審査するのが、建築確認です。 |
労災認定 | 国や都道府県の認可のもと営業している建設業や派遣業などにおいては、労災事故の発生により、法令に違反したとして指示処分などを受ける場合があります。 |
その他、介護事業における不正行為の指定取り消しや指定の効力停止といった処分も該当します。
行政処分は、悪質な行為を罰するためのものです。
法律に触れそうなラインで業務を行なっている場合、まずは行政指導により指摘を受けることになります。
その後、行政指導の内容によっては行政処分へと移っていくことになるのです。
行政指導と行政処分の違いについて
行政指導と行政処分の特徴についてそれぞれ見てきましたが、ここで両者の違いについて再度確認しておきましょう。
行政指導と行政処分の大きな違いは、以下の通りです。
行政からの警告内容 | 対応 |
---|---|
行政指導 | 従うかどうかは自由 |
行政処分 | 対象の意思に関係なく、一方的に法的な措置をとることができる |
このような違いがあることから、争い方も大きく異なってきます。
行政指導については、法的な地位の変動(特定の者に対して権利義務が生じること)などはないため訴訟を起こすなどの必要がありません。
対する行政処分に関しては、不服がある場合には処分の取消訴訟を行なう流れになります。
処分の取消訴訟(行政事件訴訟法第3条第2項)では、行政処分により対象者の権利義務や法的な地位に影響が及んでしまった場合に、それを払しょくするために行なうのが目的です。
行政処分に納得できないときは不服申し立てを行なう
行政処分は、国土交通省や警察庁、金融庁などの国の機関だけでなく、都道府県知事が行なう場合もあります。
処分内容にも種類があり、入札停止や営業停止、免許のはく奪などが挙げられます。
行政処分に従わずに営業を続けた場合は、刑事罰に問われることもあるので念頭に置いておきましょう。
行政処分となると、法律に基づくものであると同時に個人や法人の権利にも大きく関わってきます。
そのため、処分内容に納得できないときは不服申し立てを行なうことが可能です。
不服申し立ての他、抗告訴訟も行なうことができます。
不服申し立ての際にできるのが審査請求
行政処分の内容に納得がいかないときは、審査請求という手続きにより不服申し立てをすることができます。
ここでは審査請求の詳細について、詳しく解説します。
審査請求とは
審査請求とは、国などから受けた行政処分に不服がある場合に申し立てができる制度となっています。
運転免許証の取消や営業許可の取消処分、労災認定や建築確認など、私たちの日常生活と関わっている部分も少なくありません。
国などから受けた行政処分については、その内容がすべて正しいとは言い切れません。
そこで、処分に納得できないときは審査請求によって適切な処分を求めていくという流れです。
審査請求ができる条件について
行政処分の内容に納得できないときに行なう審査請求ですが、以下のような条件を満たしている場合にできる行動となっています。
審査請求ができる人
行政処分を受けた当事者、申請に対する処分が行われないときには申請者、第三者による処分で権利侵害を受ける人または受けるおそれのある人。
審査請求できる期間
処分があったことを知った日の翌日から3ヵ月以内。
処分があった日の翌日から1年を過ぎると、審査請求することができない。
審査請求の際に必要なものと請求先
行政処分に対して不服申し立てである審査請求を行なう際、次のものを用意しておきましょう。
- 審査請求書(正本1通、副本1通)
- 処分庁から送られてきた処分通知書の写し
- 委任状(代理人が審査請求をする場合)
審査請求に必要な書類が揃ったら請求します。
請求先は、原則都道府県知事や市町村長、主任の大臣などです。
審査請求の具体的な流れ
審査請求に関して、どのように手続きを進めていけば良いのか、具体的な流れも確認していきます。
審査請求書を提出する
以下の項目について情報を記載した審査請求書を作成して、審査を行なう行政庁へ提出しましょう。
- 審査請求人の住所と氏名
- 審査請求を行なうにあたった処分の内容
- 審査請求にかかる処分を知った年月日
- 審査請求の趣旨や理由
- 処分庁の教示の有無とその内容
- 審査請求の年月日
審査請求書には決まった書式がないため、提出する先の行政庁が書式を定めているかを調べた上で書類を用意するようにしましょう。
書類の形式に不備がある場合、補正を求められることもあります。
審理員の指名
審査請求において、審理を行なうのが審理員です。
審理員は正しく審査請求が行われるよう、行政処分に関与していない人が指名されるようになっています。
審理手続き
選ばれた審理員は、審査請求書を処分庁に送って弁明書の提出を求めます。
審査請求人と処分庁により主張や反論、証拠の提出などが行なわれ、審理が進んでいくという流れです。
その後、審理員が無事に審理を終えられたら、審理手続きを終結します。
審理員意見書の作成・提出
審理手続きが無事に終結した後、審理員はできるだけ早く審理員意見書を作成し、事件記録と合わせて審査長に提出します。
第三者機関への諮問や答申
審査庁は、審理員意見書の提出を確認したとき、行政不服審査会などの第三者機関に諮問することが決められています。
諮問を受けた第三者機関は、細かく情報を精査し、第三者であるという立場から、結果を審査庁へ答申することになっています。
裁決
第三者機関からの答申内容を踏まえて、審査庁が審査請求の裁決を下します。
裁決には、以下の3つがあるのでチェックしておきましょう。
- 却下(審査請求が不適法である)
- 棄却(審査請求に理由がない)
- 認容(審査請求に理由がある)
不服申し立ての際に頼りになるのが弁護士
行政処分の内容に納得がいかない場合は不服申し立てを行なうことができます。
その際に法律が絡んでくるため、やはり法律に詳しい人に相談する方が安心です。
そんなとき頼りになるのが、弁護士です。
弁護士であれば、行政処分に関して以下のような対応を取ることができます。
行政処分の違法性や不当性を判断
国などから受ける行政処分とはいえ、法令の解釈が誤っていたり処分内容が不適切な場合があります。
処分の違法性や不当性については、審査請求や取消訴訟によって処分を取り消すよう申し立てることができます。
一方、行政処分の内容に違法性または不当性があるかという点は、法律に詳しい者でないと判断するのが難しいです。
そのようなとき頼りになるのが弁護士です。
法律に関する豊富な知識を持っている弁護士に相談すれば、行政処分の内容が適切であるかを正しく判断してもらうことができます。
審査請求の手続きを代行
行政処分の内容に違法性や不当性がみられる場合、審査請求に移ることができます。
審査請求については期間に制限があり、処分を知った日の翌日から3ヵ月以内と非常に短いです。
この期間内に審査請求書を作成したり、証拠を集めなければなりません。
そのようなときも、弁護士に相談すれば豊富な知識や経験をもとに迅速・適切に対応してもらうことができます。
弁護士に依頼すると、審査請求書の作成から証拠の収集、審査請求後の審査庁とのやり取りまですべて任せることができるのです。
行政処分の内容に対して自身で不服申し立てをする必要がなく、プロに任せられる点から有利に物事が進んでいくでしょう。
行政処分に対して不服がある場合は弁護士にご相談を
行政指導は強制力がないものの、行政処分を受けると個人や会社にとって大きな影響が及びます。
状況によっては、内容に納得できないと思うこともあるでしょう。
しかし、自身で行政処分の内容に対して不服申し立てをするとなると、書類の準備や証拠を揃える必要などがあり大変です。
思うように作業を進められず、不服申し立てを認めてもらえないこともあります。
一方、弁護士であれば、法律に関して豊富な知識を持ち、経験も豊富です。
行政処分の内容に不服がある、申し立てをしたいという場合は、弁護士にご相談ください。
書類の作成から証拠の収集、その後の手続きなどを代行することができます。
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